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9600の編集履歴

2020-01-24 22:20:07 バージョン

9600

きゅうせんろっぴゃくまたはきゅーろく

整数のひとつ。pixivでは鉄道院(後の国鉄)が設計した貨物用蒸気機関車を指すため、その解説を行う。

概要

鉄道院が1913(大正2)年より製造を開始した貨物用蒸気機関車が9600であり、実は有名な車両は2代目である。

愛称は『キューロク

 この機関車は四国を除く全国で活躍、鉄道院(のちの国鉄)の生産分だけで770両が生産された。

 なお、樺太庁鉄道向け14両、台湾総督府鉄道向け39両、北海道の炭鉱鉄道向けも含めるとそれ以上になる。製造メーカーは民間ばかりでなく、鉄道省小倉工場など鉄道省直営で製造された車両も存在した。

鉄道省向けでもD50形と並行して増備が続けられ、本州以南向けでも当初より自動連結器を装備していた車両も存在する。鉄道省向け以外の最終製造年はさらに後で昭和16年(1941年)


設計と構造

 特徴として太いボイラーと広々とした火室で、その火室を台枠上に載せる方式を採用した。そのために重心が高くなるため、動輪径が1250mmと小さくなった。結果高速運行(65km/h以上)をすると揺れが激しくなったとか(カウンターウェイトが回転分を釣り合わせているだけで、往復分を全く反映していないためである。台枠を多少狭めてでも往復分を付けられれば違っていたはずであるが)。

 また牽引力が強く、室蘭本線においては単機で2000tの運炭列車を牽引するほどであった(しかも3000t列車の引き出しにも成功しているほどである。ちなみにD50は単機で2400t、D51は試験運転で3000t牽引に成功したが、最終的に2400tに落ち着いた)。



運用

 当初は、幹線の貨物列車牽引および箱根越えの補助機関車として使われていたが、D50(9900)やD51が登場すると、亜幹線の貨物・旅客牽引に従事した。特に北海道と九州での活躍が顕著で、ともに運炭列車を牽引するのに役立った。中には炭鉱鉄道が自社発注や国鉄から払い下げを受けるほどであった。また、地方路線で高馬力が必要であるにもかかわらず路盤が弱い路線でも使用された。この種の「小型高馬力の貨物用」タイプの機関車の後継車両は国鉄もあまり力を入れなかった(一応C58などが存在するが)ため、国鉄におけるSLの運用終了まで使用されることになった。

最後の定期運用は、1976年(昭和51年)3月2日の追分機関区の入換仕業である。


国外(外地)の同型機

 また、台湾総督府鉄道所属機は800形→台湾鉄路DT580形として39両が製造され戦後も活躍したが(戦後に事故廃車になった2両分の部品を組み合わせ再生された車両もある)、その一部はなんとアメリカ製(アメリカン・ロコモティブ、以下アルコ社)まで存在しており、600形→台湾鉄路DT560形とされ14両が製造された。これは、国内各社の生産が追いつかず、やむを得ず図面をアルコ社に提供して生産したものである(アメリカ製の9600も台湾で1両保存されている)。

なお、アルコ社ではこの図面でそのまま製造したわけではなく、整備水準の低い軌道を走りやすいよう諸元は一致するアメリカ流儀の構造に改めた図を作り、製作している。(外観も若干アメリカ流儀にモデファイされている。)

そのためオリジナルでは板台枠であった主台枠は棒台枠(アメリカ形の標準は鋳鋼なのでおそらく鋳鋼棒台枠)、火格子も増大、カウンターウェイトの量も変わっているようである。「揺れが少なく、投炭が楽」という当時の乗務員の評判はそれでないと説明がつかない。一般型より評判が良かったせいか、日本型ばかりの中、完全に異端といっていい存在にもかかわらず台湾蒸機時代末期まで在籍していた。

戦時中の供出

1937~39年(昭和12~14年)にかけて、陸軍の命令で1435mm(標準軌)に改軌された同機が251両もの同型式が戦地(中国大陸)に供出され、二度と日本に戻ることはなかった

この中にはトップナンバーである9600号機も含まれており、現在は2両のみ北京の中国鉄道博物館に展示されている(標準軌仕様の現地形式KD5(KD5-373)と再狭軌化した同KD55が各1両)。

この標準軌改造には、9600のオーソドックスな板台枠構造が偶然に役に立っている。

板台枠の定義は用途にもよるが19~51mm程度(日本では標準的に25mm=1インチ)の鋼板で作った台枠に、別体の軸箱守を貼り付ける形を取るが、この軸箱守は通常、台枠体の内側に付ける。

これをバネ機構と共に左右逆に、台枠体の外側へ付けると、本体を崩さぬまま日本狭軌と標準軌の軌間差分の370mm(バックゲージ・軸箱基準)近い軸箱位置の変更が可能であった(多少まだ差分に不足があるが、別手段で埋め合わせられる程度の差であった。これは当時日本国内の標準軌改築計画が存在していたための「隠し設計」であった、とする説も存在する)逆にC51では軸箱守が台枠にはめ込む形であったためこの手法は取られず、台枠を一旦分解している。

中国へ渡った標準軌改軌組の一部は、再度狭軌化(1m軌間)されて雲南省の山奥で走っていた。ランボードは機体によっては拡軌のさい左右に継ぎ足されて広がったものもあり(改造工場でまちまち)、再度の狭軌化にさいしては、端梁を真ん中あたりで縮小分切り取る形をとったものが今保存されているKD55-579である。外形の大体はもとの日本狭軌仕様に近くなっているはずが、真正面だけ印象が違うのはこの再改造のさいの加工による。


さらに1941年(昭和16年)に除籍された4両も、追加の供出として中国に送られたと見られる。(前述の保存機の車軸に、当該機の刻印が残っている)


なお、樺太庁鉄道の国鉄編入後に内地から転出した6両が、終戦間際のソ連軍侵攻により元庁鉄の14両と共に接収され、そのまま鉄のカーテンの向こうに消えていった。なお、戦後の北海道内には数両樺太仕様に近い姿の個体が存在していたが、制海権喪失による発送流れがそのまま居座ったのではないかという説もある。(スハ32形客車にも数両、同様の発送流れが国鉄車として編入されたケースが存在している)


余談

  • 初代は9550形に蒸気過熱器を取り付けたものであり、9550形の設計上の不具合が取りきれず、すぐに9580形に改められた。この形式は主として北海道に存在し、あまり使用されることなく第二次世界大戦後間もなく廃車された。
  • 8620同様、ナンバーの付番がややこしいことでも有名で、9600号機がトップナンバー、9699号機が100号機目で、101号機目は19600号機となる。ちなみに、ラストナンバーは79669号機である。そのため、方程式は   万の位の数字×100+下二桁の数字+1=製造順  となる。このややこしいナンバー付番は18900(C51)や9900(D50)まで続くことになる。
  • 変わったところでは陸上自衛隊に所属していた車両がいた(9677号機)。1959年に国鉄で廃車後、陸上自衛隊第101建設隊(陸上自衛隊唯一の鉄道部隊)に所属していたが、所属部隊がわずか6年で解隊された後1970年に解体された。
  • 北海道で使用された車両の中には、運転台を右に改造した車両が(49615号機 49671号機 49698号機など)存在した。函館港で青函連絡船の航送車両の入れ換え作業を行う際に、線路が右に大きくカーブした有川さん橋では右運転台のほうが安全で効率的と判断されたためである。運転台とともに逆転器も右に移設され、運行中何度も操作する事を考慮して動力式となった。このうちの1両(49671号機)は栃木県真岡市に保存されている。

保存機

数が多いこともあり、全国各地に保存されている。

しかし、蒸気機関車として動態保存されたものは存在しない、圧搾空気で動かすもののみである。

静態保存としては国外でも使用されたこともあり、台湾総督府鉄道時代の機も台湾で保存されている。とりあえず代表的な機を挙げてみる。


9608号機

東京の青梅鉄道公園に静態保存されている。9号機で初期型である。初期型特有のランボードからキャブへのラインがS字型になっているのが特徴(中期型以降は乙の字型)


9633号機

34号機。京都の京都鉄道博物館(旧・梅小路蒸気機関車館)に静態保存されている


29612号機

213号機。福岡県志免町に保存されていたが放置状態に近く老朽化のため解体処分の危機になり、有志の働きかけで大分県玖珠町に譲渡された

整備復元ののち、豊後森機関庫前に移設保存。前照灯点灯可能


49671号機

472号機。長らく栃木県真岡市の公園で保存されていたものを整備し、真岡鐡道の「SLキューロク館」で展示。圧縮空気を用いて稼働することも可能。右運転台に改造され、現役時代は五稜郭機関区所属で函館港で青函連絡船の航送車両の入れ替え作業に従事していた


59634号機

535号機。北九州の九州鉄道記念館に保存。ナンバーが「ごくろうさんよ」と語呂合わせがよい


DT609

台湾総督府鉄道828→台湾鉄路。旧高雄港駅跡・打狗鐵道故事館に保存。外観は通常型


DT561

台湾総督府鉄道→台湾鉄路。いわゆるアメリカ生産型の唯一の保存個体。苗栗車站鉄道公園に保存。


関連リンク

8620

筑豊-九州での主な活躍地

夕張-北海道での主な活躍地

運炭

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