概要
1999年から2020年3月まで販売された。ヴィッツのプラットフォームを採用した車種も多い(アクア、ラクティスなど)。それまで販売されていたスターレットの後継車種に当たり、パブリカから続くトヨタの小型車ポジションを引き継ぐ車だった。
ヴィッツと言えば何と言っても初代のインパクトが大きい。当時のコンパクトカーと言えばコストダウンに重きを置いたモデルばかりであったが、本車は作りこみの良さが高く評価され、カローラを上回る販売台数となり、衝突安全性能、走行性能、環境性能など以降のコンパクトカーの水準を大きく引き上げる立役者となった。
初代はインテリア・エクステリアともに丸みを帯びた斬新なデザインも新鮮であり、質感の良さとあいまって2020年代に至ってもさほど古さを感じさせないものである。しかし2代目・3代目とモデルチェンジを重ねるごとに内装・走りとも質感を下げ、「普通のコンパクトカー」に成り下がってしまったことは否めない。
2020年2月に(日本向け)ヤリスが登場したことでその使命を終えたものの、在庫一掃などの事情から同年3月31日まで販売は行われ、その日をもって20年ちょっとの歴史に幕が下ろされた。
ATやCVTがメインだが、グレードによってはMTも存在した。
メーターは初代と2代目はセンターメーターを採用しており、それも特徴の一つであったが、3代目「以降」はハンドル奥にある通常のメーターである(2代目は全グレードオプティトロン式で前期型が白、後期型がオレンジ色)。
なお、ヨーロッパではもとから「ヤリス」という名称で発売されているほか、オーストラリアでは、初代は「エコー」という名称で発売、2代目と3代目はヨーロッパ同様「ヤリス」として発売されていた。アメリカでは、2代目と3代目が「ヤリス」という名称で発売されていた。さらに、2代目に関しては、ヨーロッパではダイハツ・シャレードとして売られたことがあるが、これは、ダイハツがヨーロッパ市場から撤退するための準備として暫定的に製造・販売されていたもの。
ヨーロッパ向けには2012年6月からハイブリッド仕様車が存在するので、アクア(プリウスc)はヨーロッパ市場には投入されていない。だが2017年1月、そのアクアがあるはずの日本市場にもヴィッツのハイブリッド仕様車を投入してしまった。キャラクターが似ているので明らかに共食いとなってしまうのだが・・・・・・・・・。そしてその結果、日本市場は、プリウスcとヤリスハイブリッドを両方投入している、世界的に見て珍しすぎる市場となってしまった。
なお、後継車(日本向け)初代ヤリスにもハイブリッド仕様車は設定されている。
2代目の一部車種と3代目は、フォークリフトメーカーの豊田自動織機に製造してもらっていたが、この豊田自動織機はトヨタ自動車の親会社である。実はトヨタ自動車自体、豊田自動織機の自動車事業部が分社化して生まれた会社だったりする。
世代別の解説
初代(1999-2005)
丸みを帯びた可愛らしいデザインと小柄で取り回しのよいサイズ感を兼ね備えながら、高い質感と走行性能、さらに燃費まで兼ね備えていた。初期はATだったが、後にトランスミッションをCVTに変更。この時期の車では珍しい、アイドリングストップも備えていた。
泣き所は荷室の狭さ。この弱点は3代目で改善されるまでヴィッツの弱点として付きまとうことになった。
2代目(2005-2010)
プラットフォームを新調して一回り大きくなり、衝突安全性能が向上。日本仕様では3ドアの設定がなくなり、5ドアのみになった。
後期型では安全装備が強化され、シートヒーターやスマートキーを装備するなど快適装備も増やされた。ただラゲッジルームの少なさと後部座席の居住性には課題を残していた。
初めてネッツ店の専用エンブレムを装備したのもこのヴィッツ。以後、ヴェルファイアやヴォクシーなど、ネッツ店専売車種に波及している。
3代目(2010-2020)
見た目を大きく変え中性的になったが、発表時期がリーマンショック後という事情もあったのか、仕上がりに安っぽさが目立ってしまった。
プラットフォームは先代の流用だが、シートを改良して後部座席の居住性を改善したり、全長を伸ばしてラゲッジルームが狭かった先代までの弱点にも手を入れるなど、進歩が見られないわけではない。アイドリングストップからの再始動の早さも隠れた長所である。
中期型の途中からToyota Safety Sense Cを装備し安全装備を強化したり、後期型でハイブリッドを設定するなどちょくちょく手は入れられていた。
車名の由来
「ヴィッツ(Vitz)」は、英語の「Vivid」(鮮やかな)とドイツ語の「Witz」(機知)を掛け合わせた造語であるが、英語圏では女性への軽蔑表現である「Bit(s)」に聞こえてしまうため、輸出向けにはギリシャ神話の美の女神「カリス(Charites)」の単数形「Charis」からの造語から「ヤリス(Yaris)」という名前がつけられた。
その他、カナダ・オーストラリアでは「エコー(ECHO)」、中国では「Vizi」(威姿)の車名を付けていたが、のちに「ヤリスハッチバック」に変更となっている。
ホットバージョン
3代目の質感の低下に伴いチープカーの印象が拭えなくなったヴィッツではあるが、意外にも2代目まで「TRD sport M」というで常売のカスタマイズターボモデルが設定されていた事を知る人は少ない。
3代目前期型ではターボモデルが消滅した代わりに強化スポーツグレードである「G'z」がスポーツグレードのRS(RSそのものは初代途中から設定されていた。ちなみにRS以前には欧州仕様の足まわりを移植したユーロスポーツエディションが設定されていた)とは別に新設定され、更にイギリス向け3ドアモデルにターボを搭載した「GRMN」と、オーリスに搭載された1.8Lエンジン+スーパーチャージャーで武装した「GRMN2」が限定発売された。
3代目が後期型に小変更された際RSとG'zいずれも廃止された。だがトヨタがスポーツカーブランドの「GR」を立ち上げた際に、GR SPORTS "GR"、GR(いずれも1.5L自然吸気)、GRMN(1.8Lスーパーチャージャー搭載)が設定されている。
モータースポーツ
モータースポーツの敷居を下げるべく、2000年からサーキットレースのネッツカップヴィッツレースを実施している。このレースは「日本自動車連盟の競技用日本国内A級ライセンスを持っていれば、ナンバープレートのついた自家用車で参加可能」という、日本のモータースポーツ界ではあり得ないものだった。この手軽さ故に大勢の参加者がおり、全国で年間数百人規模の参戦がある。
またかつてはラリー競技のTRDヴィッツチャレンジラリーも存在したが、2011年限りで事実上廃止された。その代わりに2012年から2015年からはTRDラリーチャレンジが、2016年以降はトヨタガズーレーシング・ラリーチャレンジがそれぞれ開催されており、これらにはこのヴィッツのみのクラスも設定されている。
また、全日本ラリー選手権にも参戦し、無改造車規定で何度もクラスチャンピオンを獲得しているいるが、2017年度の選手権JN3クラスでは、「製造元」の豊田自動織機チームのヴィッツと、トヨタの実質ワークスチームであるGAZOOレーシングのヴィッツが1・2位を独占することが多かった。
2015年1月にトヨタは、2017年に18年ぶりに世界ラリー選手権(WRC)に参戦することを発表、ベースマシンとして「ヤリス」、日本でいうヴィッツを採用した。
1年半の急ピッチ開発を経て投入されたヤリスWRCは、初年度の2017年は学びを得るためのシーズンとしていたが、2勝を挙げた。2018年はさらに躍進し、3連勝を含む5勝をマーク、なんとF1参戦準備のために第1次WRCラストイヤーとなった1999年以来のマニファクチャラーズタイトルを獲得した。
関連タグ
カローラ(11代目は本車の3代目とプラットフォームを共用している)