人間の里
にんげんのさと
概要
幻想郷において、人間が住む里。狭い幻想郷の中では『里』と言えばここを指す。
昔ながらの木造平屋が軒を連ねており、主要な店の多さもあっていつも人間で賑わっている。
妖怪存続の為に、たとえフリでも「妖怪が人間を襲う」事が重要視されている幻想郷で、人間が命の危機をあまり感じずに生活できる数少ない地である。妖怪が存在するためには人間の持つ心が必要不可欠なので、人間の種を残す意味でこの場所は存在する。その様は動物園のようだと喩えられていた。
しかし、妖怪たちが巻き起こす幻想郷規模の異変のお世話にもよくなっている。『東方心綺楼』ではついに今までの異変や天変地異から人々の間に厭世観が巻き起こるまでになったが、真相はある妖怪の異常により人妖全ての精神が意図せず変質してしまったせいであって、異常が収まると人々は徐々に元の生活に戻った。
幻想郷の人間の現状が変わらないように妖怪たちが見張っているため、人間を先導する人間や人外の為政者は居ない。また幻想郷では各種妖怪・人外の力や性格のせいで意味を成さないため法律が作られていないが、人里には最低限の規則が定められており、長老も居る。書籍『東方鈴奈庵』と『東方茨歌仙』ではよく話の舞台になる。
ゲーム本編にもたびたび戦いの舞台として登場している。『東方永夜抄』3面ステージや、『東方心綺楼』の霧雨魔理沙(昼)と秦こころ(夜)専用対戦ステージとなっている。
『東方輝針城』2面では、人里近くにある柳の生えている運河で異変の影響により赤蛮奇が暴れていたが、「こんな場所で妖怪が暴れる事は異常だ」と捉えられていた。
幻想郷には海が存在せず、東方儚月抄では岩塩も採取できないと明言されており、里の人間が
どのようにして必需品である塩を確保しているのかは不明。コミカライズではおにぎりの海苔や
おでんの昆布など、海産物が日常的に出回っている事から考えると、塩を含む海産物全般を
博麗大結界を行き来できる輸入業者が外の世界から持ち込んでいるのかもしれない。
むしろ塩の流通を管理する事で、幻想郷内の通貨の信用の担保としている可能性もある。
通貨での取引でしか塩を入手できないという事であれば、里の人間は通貨を使うしかないからだ。
人里の人間
里に住む人間は、基本的に空を飛ぶなどの特別な力を持たない普通の人間である。
たまにある日突然不思議な力に目覚める者が現れるが、幻想郷では珍しくないという。作中で言及されることは少ないが、里には妖怪退治を生業とする人間も住んでいる。
人間の意志は浮ついていて、出来たばかりの神力にすがったり、不老長寿の仙人に憧れて弟子入りするなど、一時のブームが起こりやすいがその利益の得にくさを実感して諦める流れに発展しやすく、いずれも長続きはしない。座敷わらしを捕まえて家族として飼っている者が多い。試験はほとんど無いので天神信仰は必要とされない。
里の外に出る事が特に困難ではない事は博麗神社へのブーム的な里人の参拝によって推測できる(危険ではあるらしいが)。ただ夜は妖怪の活動時間なので、里の外を夜出歩く者はまず居ない。
人間は妖怪に一番狙われる種族であり、『東方求聞口授』では第三者視点から「人間は妖怪の脅威に怯えて暮らす弱者」として扱われているが、里の安全性や妖怪と関わってる者の様子から、妖怪への敵対思想の具合はおそらく人によって千差万別だと思われる。詳しい事は語られていないので不明である。
これに関して文々。新聞(第百十七季 長月の二刷)には「謎の秘密歴史結社の実態」との題で妖怪に敵対的な人間による組織についての記事がある。この組織のリーダーへの取材では、この組織は幻想郷を人間が掌握するために妖怪を放逐することを目指す組織であり、そのために幻想郷の実態と幻想郷に住まう人間のルーツ、及びその子孫がなぜ妖怪のいる幻想郷に生活しているのかを理解するのが目下の目標であるとのことである。
その活動は苛烈で、死者が出ることもあるという。
ただ、記事によれば「私(射命丸文)を含む多くの妖怪たちはこれを相手にしていなく傍観している」(括弧部は当項目筆時に追記)とのことである。
また上白沢慧音も苦言を呈しており、記事やその後の対談で人間と妖怪の歴史観の違いを語っている(『東方文花帖』)。
書籍作品でたびたび大人数がモブとして登場する。老若男女皆基本的に着物や浴衣といった和服が標準の服装として定められている。メインキャラクターの中で数少ない人里住人の人間である稗田阿求と本居小鈴もその例に漏れず、色鮮やかだが日本の伝統装束から逸脱しない形のハイカラな和装が基本デザインである。
施設
モブの人間が経営する施設が立ち並んでいる。しかし、人間以外&人里の外で暮らす特殊な人間がほとんどを占める東方メインキャラクター達に関連した施設が多い。妖怪向けの店も数多く存在するらしい。
・霧雨魔理沙の父が営む大手道具店霧雨店
・上白沢慧音が教師を務める寺子屋
・稗田阿求の広大な屋敷
・八雲藍が油揚げを買いにくる豆腐屋
・職漁師の運松爺の家
・福の神が訪れて大繁盛した蕎麦屋
・蕎麦屋の向かいの団子屋
など多種多様な店があり、博麗霊夢や十六夜咲夜も買い出しにやってくる。茨木華扇がたびたび訪れて食べ物を買い食いしている様子も見られる。
他にも射命丸文の『文々。新聞』を取り扱っている店があったり、鈴仙・優曇華院・イナバや八意永琳が薬を売りにきたり、祭りの時はアリス・マーガトロイドが人形劇をやったり、里の外れには聖白蓮たちの住む命蓮寺があったりする。
『心綺楼』では人間の飲み屋のバルコニーに伊吹萃香と星熊勇儀の姿があったが、いくら『心綺楼』が背景にほとんどの東方既存キャラを登場させるという方針でも流石に無理矢理過ぎたのか、勇儀が地上を訪れた理由がEDの一つになっている。
上記のように人間以外の種族が訪れることも多い他、少なくとも慧音が半妖でありながら里に定住している(そして20年ほど前までは霧雨店で修行していた森近霖之助も半妖)ことから「人間の里」とはいうものの人外に排他的な地域というわけではないようだ。
だからと言って妖怪がずかずか入っていい場所でもないらしく、突然二ッ岩マミゾウが煙と共に現れた時は周囲が騒然とし、ホフゴブリン達がやってきた時は怖がられて退治依頼が出されていた事から、妖怪がいると人間たちは少なからず警戒する。それが理由だと思われるが、マミゾウは顔なじみの霊夢にも判別されない人間の姿に化けて和装で里に出入りしており、命蓮寺の雲居一輪は妖怪なので里への立ち入りを控えるようにと誰かから指示されている。
出入りが許可されている薬屋のメンツも耳を隠したり、『人間以外が関わっている事は知らないお約束』になっていたりと、妖怪の立ち入りは雑なようで結構繊細な案件となっているらしい。
赤蛮奇は人間に紛れて生活しているが彼女の衣装は洋装である。