「生も死も、秩序も混沌も、全ての根源には“恐怖“がある。」
概要
カルバード共和国で急速に力をつけるマフィア、『アルマータ』のボス。元々はアルマータの若頭で若い構成員や下っ端達の信頼も篤かった。逆に人望の乏しかった先代のボスを粛正した後に組織を掌握し、30代の若さでボスの座に納まり。黒月の牽制さえ受け付けないほどに組織を巨大化させた。(ボスへの就任の下準備として当時情報屋をしていたディンゴ・ブラットに協力を仰いでおり、その後の事もあってディンゴはこの一件をずっと後悔している)
上述どおり、恐怖を持って組織を支配するスタンスでそれ故に側近は屈強な実力者達が揃っている。が、逆に一般構成員や下っ端の半グレにとってはカリスマ性がある一方で失敗すれば殺されるというある種の強迫観念で支配されており、一度暴走すれば鎮圧にも手こずるほどに抵抗してくる。
カリスマ性自体は確かに卓越しており、かつてクロスベルの裏社会を牛耳った『ルバーチェ』のマルコーニなど比較にならない程の大物。同時に黒月の統制で御法度となっていた違法薬物や人身売買にまで手を伸ばすアルマータの所業は黒月だけでなく、警察、CID、遊撃士協会は勿論、身喰らう蛇にも警戒されるほどになる。
創の軌跡の後日譚ではエレイン・オークレールに遭遇しており、彼女と一戦交えている。既にA級相当の実力を持っていた彼女さえも苦戦させるほどの実力を誇る。その際、《掃除を手伝ったお捻り》と称して救出に来た幼い兄妹共々見逃している。
正体
本名はジェラール・エルダリオン。
100年前にシーナ・ディルク主導の民主化革命で滅亡したカルバード王国の末裔、その直系である。
彼が獲物としている十字の長剣は王家に伝わる聖魔剣《アペイロン》。カルバード王家に代々伝わる古代遺物であり、恐らくアルバレア家の聖剣エルヴァースと聖剣イシュナードの比では無いかも知れない。
王家の末裔の彼が何故、マフィアにボスをしているのか。そもそもアルマータは古都オラシオンを中心に根付く反移民主義を掲げる旧貴族達をスポンサーに拡大していった。これだけならば、アルマータを通じて王国再建をするべく現在の共和国転覆を謀ろうとしている、と考える。だが、肝心のジェラールはそれに関心がある素振りを見せない。
カルバード王家は革命による王国滅亡後、暗黒時代から存在していた《D∴G教団》に保護されていた。
D∴G教団に保護されたカルバード王家は王国復興を目指し、同時に女神を否定する教団の教義に沿って狂気の実験を繰り返していた。
が、ジェラールにとってはそれら全てが退屈であった。教団の教義はもちろんのこと、親達に吹き込まれ続けていた王国復興さえもジェラールにとってはつまらなかった。
そんな乾ききったジェラールを潤したのが、11年前にあるロッジから受けた報告。魔の因子を宿した少年を確保し、因子の抽出を試みていると。
幹部だったジェラールはその報告を受け、少年を確保して拷問じみた実験によって因子の抽出に成功。文字通り、悪魔に生まれ変わったジェラールは《楽園》を始めとした結社による威力偵察を兼ねたロッジ壊滅、S級遊撃士指揮による教団殲滅作戦を悪魔的な力で生き延び、マフィアへ転向。
足場を得たジェラールは教団の残党が月光木馬團と合流して出来上がった庭園の幹部も引き入れ、現在へと至る。
全ては、大陸を、世界を恐怖で染め上げるために。
人物
一言で言えば、軌跡シリーズ史上最悪の犯罪者。エレインからも「いかれている」と称されている狂人であり、アークライド解決事務所からも凄惨な過去がある幹部達と違い、側近のメルキオル共々生理的な嫌悪感すら抱かれる。
仮にも王家を保護してくれたD∴G教団を『とことん頭のネジが外れた集団』と冷静に分析しているとおり、同じ幹部司祭と違って教団への忠誠心や御子への崇拝などは皆無。
一方で、王家の生まれ故か組織の長としての器量は確かに持ち合わせ、激情に駆られがちなヴィオーラやメルキオルを止めている。
また、現場主義を公言しているように『実験の仕込みのためにカジノのディーラーに変装する』、『不始末をしでかした下部組織を潰す』ために直々に出向く事もある。気紛れかは不明だが、下部組織を潰した際には先に来ていたエレインを『掃除のお捻り』と称して、拉致された子供たち共々見逃すという器量もある。
擁護的な意見を述べれば、『100年前に滅びた王家復興にしがみつく親達の妄執』と『女神を否定するためだけと言っても良いほどに的外れな実験ばかり行うD∴G教団』という環境で生きてきたために、乾ききっていた人生を送っていたのは確か。
恐怖以外に彼を潤してくれるものがなかったのも事実で、『ノーザンブリアに現れた塩の杭』と『クロスベル再事変の最終兵器《逆しまのバベル》』は彼にとっては恐怖を体現するものとして、申し分なかった。
しかしそれを差し引いてもその所業はシリーズ屈指の外道とも言え、バーゼル理科大学のキャラハン教授の協力により作り上げた《反応兵器》(現実だと核兵器にあたる大量破壊兵器)をクレイユ村に使用しその村の住民ごとすべて消滅させる。
その後もうひとつ所有している《反応兵器》を古都オラシオンに持ち込み街とそこに住む住民を人質にした死のゲーム【謝肉祭】を決行した。
彼の恐怖への異常なる渇望、それは恐怖こそが人を高みに上げるものであると言う妄執からくるものである。
末路
謝肉祭で最終戦でヴァンとの一騎打ちの末に命を落とすものの、それも全て計画のうちに過ぎなかった。
最終的には魔の因子の力を最大限に引き出すべく、帝国の呪いと違う形で不死者となったジェラールはアークライド解決事務所との戦いで敗北。消滅することとなり、アルマータは完全に崩壊することとなる。
だが、アルマータによって奪われたものは戻らない。そして、アルマータの崩壊による揺れ戻しはもちろん、『ジェラールが王家の末裔』にして『D∴G教団の幹部司祭』、この二つの事実が外部に漏れれば共和国内で息を潜めている『反移民主義団体』や『王国再建を望む旧貴族』がテロに走る可能性は非常に高く、D∴G教団とはまた違う方向性で頭のネジが外れた集団が現れることは明白である。
対人関係
D∴G教団ｰｰ幹部司祭として所属していた宗教団体。だが、生き延びるために祖先が寄生しただけの教団に対し、ジェラール本人は何の関心も無い。
メルキオルｰｰ側近の一人。死に魅入られたその異常性故か、ジェラールからも重宝される。
ヴァン・アークライドｰｰ当時、魔の因子を宿した少年。ヴァン自身は覚えていたが、ジェラールにとってはモルモット或いは抜け殻として歯牙にも掛けていなかった。
エレイン・オークレールｰｰギルドの若手エースとして注目し、一度だけ交戦している。何よりも、彼女の父が反移民主義団体の黒幕でアルマータのスポンサーの一人であった。最も、計画が最終段階に差し掛かった時点で既に用済みとなり、メルキオルに始末させようとした。エレインにとってはジェラールに逃げられたことが後に起こる惨劇に繋がったとして、大きな楔になる。
関連タグ
ワイスマン…シリーズの外道繋がり。やり方は違うものの同じく『人を高みにあげる』と言う妄執から数々の非道を行なったキャラクター。
ハリー・マクドゥエル…同じくマフィアのボスであり立ち位置やキャラクターが共通している。(ちなみに同じマフィアに所属する親友も中の人を始め共通した所がある)
