「―――ヨコセ、―――ヨコセ・・・」
概要
七体の内でも最も強大な力を持つ騎神であるが、千年もの間その姿を見せていない。また、過去の機神の姿を知る緋のローゼリアですらその存在を知らなかったという。
真実 ネタバレにつき注意
騎神はそれぞれ自我があるが、イシュメルガの場合はその思考システムが人間の悪意の影響を受け、悪意に満ちた思念体へと異常進化してしまったのである。
その結果、イシュメルガは自らが絶対の存在である『巨イナル一』に至ろうとする。その為に暗躍を続け、作中の800年前に自らを創造した一族でもある地精を《地精の長》のアストラル体黒のアルベリヒを作り出し、下僕として支配下に置いて魔女の眷属と決別させる。そして、エレボニア帝国全土に呪いをまき散らしていくと共に、自らの乗り手として目を付けたかつては『灰の騎神』ヴァリマールの乗り手であった獅子心皇帝ドライケルス・ライゼ・アルノールを操ろうと彼に長年寄生していたが、結局ドライケルスは天寿を全うしたため失敗する。
が、その後もイシュメルガはドライケルスの魂が生まれ変わる新たな人間が現れるのを待ち続け約200年後、ギリアス・オズボーンが誕生したことで、彼に目を付けるも、ドライケルスの同志で恋人でもあり、獅子戦役において『銀の騎神』アルグレオンの起動者として不死となったリアンヌ・サンドロットが陰で見守っていたために乗っ取ることはままならなかった。そして、彼が結婚して子供にも恵まれたことでリアンヌは安心し、彼の元を去って身喰らう蛇の使徒となる。
しかし、イシュメルガはその時こそを待っていたのである。
当時、平民出身の将校が力を強める事を良く思わない貴族達に呪いで干渉し、隣国のリベール王国を侵略して武功を立てる事を画策させ、そのためにサザーラント州にあるハーメル村を猟兵くずれに皆殺しにさせるように仕向ける。そして、それを察知して止めようとした当時帝国軍准将だったオズボーンの邸宅をこれまた騎士階級(貴族の最下位)としてうだつの上がらないルドルフ・アランドール(レクター・アランドールの父)が雇った猟兵崩れによって強襲させる。
おおおおおッ……!どうしてだ、アランドール!?
カーシャが、息子が何をした!?襲うなら、俺を襲えば良いだろうが!?
女神よ!!いや、悪魔でも何でも良い――――この身がどうなろうと構わないから、俺達の息子を助けてくれええっ……!!
妻は死に、息子は心臓を建材で貫かれ虫の息となったオズボーンは女神でも悪魔でもいいから息子を助けろと泣き叫ぶ中、イシュメルガという悪魔は現れた。
――――ソノ言葉ヲ待ッテイタゾ。
どらいけるすヨ、二百年待ッテイタ。今度コソ、《灰》デハナク我ガ乗リ手トナルノヲ受ケ容レルガヨイ。サスレバ幼子ノ命ハ助ケテヤロウ。
妻と息子を喪おうという状況下で、拒否の仕様が無い選択肢をイシュメルガはドライケルスの生まれ変わりであるオズボーンに突きつけた。その時にオズボーンは自身が何者かを、目の前の悪魔が幼い頃から聞こえてきた不気味な声の主で、その悪魔が全てを仕組んだことを悟りながらも愛する妻を喪い、そして今我が子をも喪わんとするオズボーンに選択の余地はなかった。
良いだろう――――この魂と肉体、貴様に呉れてやる!代わりに息子を、リィンを助けろ!!黒の騎神――――イシュメルガああああっ!!!
息子の命と引き換えに、悪魔に自らを売り渡した。
そして………その間に邪魔者を排除したことで勢いづいた貴族達に雇われた猟兵くずれにハーメル村は滅ぼされてしまう(後の時代で言うハーメルの悲劇)。イシュメルガの力で息子に自らの心臓を捧げ不死者になったオズボーンは軍に復帰した後、ハーメルを襲った猟兵くずれを皆殺しにし、それらを仕組んだルドルフ・アランドールら軍の上層部を処刑すると共に、徹底的にハーメルの一件を隠蔽した。
更に、オズボーンが起動者となって暫くした後にイシュメルガはフランツ・ラインフォルトを黒のアルベリヒとすることで完全な下僕に変え、ちょうど結社の使者として現れた告死線域に殺させることで不死者として蘇らせた。
が、イシュメルガが引き起こしたのはそれだけではなかった。『ハーメルの悲劇とそれに関連したオズボーン家の襲撃』はもちろんのこと、姿を消してからの千年の間に起きた『暗黒竜の出現』とその暗黒竜を討伐した際に発生した《緋の騎神》テスタ=ロッサの汚染、そのテスタ=ロッサを起動させた偽帝オルトロスとドライケルス帝の戦いの『獅子戦役』、『ハーメルの虐殺をきっかけに起きた百日戦役』、『ハーメルの虐殺を仕組み、オズボーン家を襲ったレクターの父・ルドルフの凶行』、『叔父の陰謀で両親と弟を喪ったクレアの悲劇』、『貴族の謀略によって起きたマキアスの姉の死』、『アルフレッド公子夫妻(ミュゼの両親)の海難事故死』、『クロウの故郷ジュライ市国のエレボニア帝国による清濁併せ持った併合』、『クロワール公爵の野望による貴族派とオズボーン率いる革新派の内戦』、『クロスベル自治州の占領』、『猟兵王の死と蘇生』、『サラの養父・バレスタイン大佐の死』、『アリサの父・フランツの失踪』、『セドリック皇太子の豹変』、『空中巡洋艦カレイジャスの爆破』、『虚無の剣として使われる運命の姉妹』『ハーメルの虐殺を生き延びた少年による皇帝暗殺未遂』そして……今起きようとしている大陸全土を巻き込んだカルバード共和国含めた千の陽炎連合国軍との戦争。
リベールやクロスベル、カルバード共和国をも巻き込んだ大小全ての惨劇がイシュメルガによって引き起こされたのである。
全ては自らが《巨イナル一》へと至り、絶対の存在=神となるために。
人間が作り出した最強の兵器は他でもない千余年にもわたる人間の悪意によってゼムリア大陸…世界を滅ぼす悪魔に変貌してしまったのである。
最期
『閃の軌跡Ⅳ』において、実父・ギリアスが乗る黒の騎神との最後の一騎打ちの末辛くも勝利するリィン。
しかし、勝利したことによってイシュメルガの持っていた力と同時にイシュメルガの悪意である呪いそのものを一身に受けヴァリマールもろとも黒の持つ呪いに蝕まれることになる。
しかしこの次元に顕現したこの時こそ、この呪い…イシュメルガを葬り去る絶好の機会であった。
ノーマルエンドではそのままリィンごと大気圏外に消えゆくことになるが、以下はトゥルーエンドでのイシュメルガの最期の顛末である。
そこに、すんでのところで黒のアルベリヒの呪縛より解放されたアリサの父・フランツ・ラインフォルトが現れ、「まだ諦めるな」と言い、さらにこの決戦の地に赴く前に出会っていた地の聖獣アルグレスより加護を授かっていた(隠しクエストを行う必要あり)のであれば、イシュメルガの呪いのみを顕現させることが可能だと伝える。
新旧Ⅶ組を始めとし、この決戦に参加している協力者全員のリンクからの念、消滅したはずの騎神の起動者であった猟兵王ルトガーや聖女にしてリィンの義母たるリアンヌ、そして父・ギリアスが精神体の身ながら助力を授け、リィンは『無想・神気合一』を放ち自身から呪い…すなわち、イシュメルガとの切り離しに成功する。
オノレエエエエエエエエエエエッ!!!
人ゴトキガ赦サヌゾオオオオオオオ!!
起動者と分離されたイシュメルガは、アルグレスの加護…『大地の檻』に封じられる状態で顕現し、この次元で滅ぼせる唯一の形態として実体化されたイシュメルガ=ローゲとなって襲い掛かるが、
馬鹿ナアアアアアアアアア……!!
認メヌ……我ハ認メヌゾオオオオッ!!
これをリィンを始めとする新旧Ⅶ組、そしてクレアとレクターも加わった協力者一同の猛攻の前にはその悪の力は勝てず、ついには黒の思念体となって次元の狭間に逃走するが、リィンは逃がすまいと根源たる虚無の剣の思念となっていたミリアムと共に追いかける。
ついに追い詰められたイシュメルガはこれまで自らの力により起こった闘争により人を導き進化させ知恵を与えた自らを「神」だとふてぶてしくも述べ、改めて自らの起動者となる事を唆すも・・・・
「―――だが悪いな。ここから先は《人》の時代だ。
お前を生み出してしまった性(さが)と向き合いながら、高みへの可能性を目指す。」
「さらばだイシュメルガ―――魂があるかわからないが、せめて女神の下へ。」
イシュメルガは概念の黒剣と化し最後の抵抗としてリィンを襲うも、ミリアムが化した虚無の剣を持つリィンの一閃により、その身体を両断されて完全に消滅。ここに千年以上にもわたる帝国の長き呪いは潰えたのであった。
イシュメルガの手下となった者、あるいは利用した者たち
黒のアルベリヒ…これもイシュメルガが創り出した精神体が正体。《地精の長》と言う自らの下僕として一族の者に代々憑依し、計画の進行を行なわせた。
銅のゲオルグ…厳密にはアルベリヒ直属の配下。
蒼のジークフリード…地精の長(アルベリヒ)の代理人。
紅のロスヴァイセ…ゲオルグの一存で配下として利用される。
ゲオルグ・ワイスマン …正確にはアランドールらに猟兵くずれを紹介すると共に、戦争の生贄としてハーメルの名をささやく事で、ハーメルの悲劇をお膳立てした。
イシュメルガによって人生或いは運命を歪められた者達
ギリアス・オズボーン リアンヌ・サンドロット ローゼリア・ミルスティン ヨシュア・ブライト 剣帝レオンハルト 特務支援課 ヴィータ・クロチルダ ルーファス・アルバレア クロウ・アームブラスト リィン・シュバルツァー アリサ・ラインフォルト マキアス・レーグニッツ フィー・クラウゼル サラ・バレスタイン エマ・ミルスティン ミリアム・オライオン アルティナ・オライオン ユウナ・クロフォード クルト・ヴァンダール ミュゼ・イーグレット アッシュ・カーバイド レクター・アランドール クレア・リーヴェルト セドリック・ライゼ・アルノール アルフィン・ライゼ・アルノール
エステル・ブライト アガット・クロスナー……ハーメルの悲劇が原因で起きた百日戦役でそれぞれ母と妹を喪った。ある意味で同じくイシュメルガの犠牲者。
いずれもが大なり小なりイシュメルガによって人生或いはその後の運命を大きく変えられた者達。だが、この中の多くがイシュメルガという人間の悪意が作り出した悪魔を止め、そして打倒するために立つのは皮肉なものである。
他の騎神達
《灰の騎神》ヴァリマール―――かつて、自らが乗り手として目を付けたドライケルスの騎神。他の騎神は全て自分の一部となる屑鉄と見下していたイシュメルガであったが、ドライケルス=オズボーンの息子が起動者の座を引き継ぎ、自らを滅ぼすこととなる。
《銀の騎神》アルグレオン―――ドライケルスの同志にして、恋人だったリアンヌ・サンドロットの騎神。《金》と並び、イシュメルガに継ぐ力を持つ騎神であるため、その力を恐れたイシュメルガは彼女がドライケルスの元を離れる機会を窺っていた。
《金の騎神》エル=プラドー―――アルグレオンと同様、イシュメルガに次ぐ力を持つ騎神。作中では敵対する心配はなかったのだが、とある時間軸では思わぬ形で立ちはだかる。
《緋の騎神》テスタ=ロッサ―――騎神の中ではアルグレオンとエル=プラドーに続く四番目の力を持つ騎神。暗黒竜の出現時にヘクトル帝が起動者となって、暗黒竜を討伐した騎神。だが、その返り血を浴びたヘクトル帝は呪いに蝕まれて命を落とし、テスタ=ロッサもイシュメルガの呪いに汚染されてしまった。後の『獅子戦役』でも呪いに操られた偽帝オルトロスが起動させている。
《蒼の騎神》オルディーネ 《紫紺の騎神》ゼクトール―――騎神の中では、この二体とヴァリマールは横並び程度で、騎神の中では下位に位置する。そのため、テスタ=ロッサやアルグレオン、ドライケルスが乗っていたヴァリマールと違い、イシュメルガは自分の部品程度にしか見做していなかった。
この様に、イシュメルガは警戒していたアルグレオンも含めて他の騎神を自分の部品や屑鉄程度にしか見做していなかった。だが、とあるきっかけで自身が復活した戦いではこれまで見下し続けた屑鉄によって優勢を覆されることとなる。
イシュメルガが仕組んだ代表的な事件
暗黒竜の出現…900年前に帝都に出現し、支配した暗黒竜ゾロ=アグルーガ。これにより、帝都は文字通りの死都と化した。時の皇帝アストリウスⅡ世は市民を連れて後の旧都セント=アークへ首都を移す。この100年後にこの戦いで七代後の皇帝ヘクトルⅠ世が《緋の騎神》テスタ=ロッサで暗黒竜を討伐するが、ヘクトル帝はその瘴気に蝕まれて命を落とし、テスタ=ロッサも汚染され、以後は封印される。また、この帝都奪還の裏で地精がイシュメルガに下僕とされ、魔女と決別させられる。この戦いの後に蒼、紫、灰、銀、金の騎神達が姿を現すようになり、同時に後の貴族となる豪族達が騎神に対抗するために魔導師達の助力を得て魔導のゴーレムつまり魔煌兵を造り出すようになる。
獅子戦役…後に偽帝と称される第四皇子オルトロスがマンフレート皇太子を暗殺し、第五皇子グンナルの軍勢を破り即位を宣言する。他にも第二皇子アルベルトと第六皇子ルキウスが即位を宣言した帝国の歴史史上最大規模とされる内戦。この内戦でオルトロスがテスタ=ロッサを起動させ、ルキウス皇子に雇われた傭兵も《紫紺の騎神》ゼクトールの起動者となる。また、一度オルトロスに敗れたグンナルはアルベルトと手を結んで魔煌兵を手に入れた。
内戦の勃発から数年後、ノルドに渡っていた第三皇子ドライケルス・ライゼ・アルノールがノルドの戦士達と共に挙兵し、後に鉄騎隊を率いる《槍の聖女》リアンヌ・サンドロットと出会って志を同じくし、内戦で苦しむ各地を解放し、人々を救う姿はルキウス皇子の心をも動かした。そして、ドライケルスも《灰の騎神》ヴァリマールの起動者となる。
が、オルトロスはテスタ=ロッサを核に《紅き終焉の魔王(エンド・オブ・ヴァーミリオン)》を顕現させてしまい、更にその支配の象徴である煌魔城までもが姿を現す。紅蓮の魔王の力でアルベルト・グンナル両皇子の連合軍は消滅し、ルキウスが擁するゼクトールも敗れる。この戦いの中、リアンヌ・サンドロットが《銀の騎神》アルグレオンを駆り、ドライケルスのヴァリマールと共にオルトロスと魔王を撃破する。この戦いでリアンヌは命を落とし、内戦を終結させたドライケルスは皇帝に即位、帝国中興の祖にして『獅子心皇帝』と称えられ、トールズ士官学院を創設する。
しかし、この裏でドライケルスはイシュメルガに目を付けられ、晩年までその怨念に苛まれることとなる。
ハーメルの悲劇と百日戦役…作中では最も有名な事例。上述どおり、権益をもう後がないところまで失った貴族達を呪いで操り、ハーメルを焼き討ちにする。そして、それによって百日戦役へと誘導した。また、ハーメルの虐殺を生き延びた子供の一人に後々の黄昏の仕込みとして、呪いの楔を打ち込んでいる。
皇帝暗殺…カルバード共和国との戦争の口実作りのためにイシュメルガがハーメルで呪いの楔を打ち込んだ少年を操った皇帝暗殺事件。目論見どおり、軍拡路線を進んでいた帝国は共和国との戦争へと向かっていく。
関連タグ
しかし、実在ではありえない以下の存在もいる。これはエリュシオンなる存在が可能性の一つとしてバグとして読み取ってしまったためである。