CV:平川大輔
概要
「エレボニア帝国」に仕える貴族の一人で、その中でも最大の派閥の一角「アルバレア公爵家」の長子。文武両道を地で行く極めて優秀な人物で、ユーシスにとっては、自身に無関心な父・ヘルムートに代わって様々なことを教授してくれた尊敬すべき兄である。
人物
長い金髪を後ろで束ね、緑色の軍服と紺のマントを羽織った端正な顔立ちの青年。
皇家の皇子オリヴァルトと社交界の話題を二分する貴族派きっての貴公子で、効率的、合理的な思考に富んだ明晰な頭脳を持つ他、騎士剣を用いた宮廷剣術も弟子のユーシス含む周囲が達人と認めるほど。
さらにはトールズ士官学院の常任理事も務めており、ユーシスや主人公リィンが所属するⅦ組の特別実習のカリキュラムも担当していた。
それだけの才覚を持ちながらそれを鼻にかけることもなく、気さくに領民と接する人格者である。
しかし一方で旧来の格式や権益を重視する貴族派の中心的思想を持つため、平民上がりの宰相・オズボーンを始めとする革新派からは要注意人物として危険視されていた。
活躍
閃の軌跡Ⅱ
「帝国は貴族が平民を支配するべき」という理念を掲げる「貴族連合」の首魁クロワール・ド・カイエン公爵と共に、「参謀総長」として軍を率い、帝国全土の掌握・統治に乗り出す。
その一方、時にはカイエン公の思惑とは異なる方向にリィン達を誘導したりと不自然な行動がたびたび見られるほか、父の領土焼き討ちの蛮行にはⅦ組に裁きを委ねる一面も。
そして最終決戦となった煌魔城にて、Ⅶ組やヴィータに追い詰められたクロワール公がセドリック皇太子を人質にとったところで参上。
クロワールは助けに来てくれたかと心躍るが、ルーファスは・・・
「平民の言葉で言うところの、『寝言は寝てから言うがいい』。」
の一言の後、同行していた――たびたびⅦ組に妨害していたはずのアルティナに身柄を拘束させた。
その正体は「鉄血宰相」オズボーンの配下である「鉄血の子供たち」のひとりで、その中でもオズボーンを除いては存在することしか知らない“筆頭”――
《翡翠の城将(ルーク・オブ・ジェイド)》であった。
貴族連合に協力していたのも、オズボーンの課した“宿題”である「貴族側の勢力をなるべく穏便かつ確実に削ぐ」を果たすための表面上のものだった。
これにより、皇族への不敬及び帝国への反逆罪でクロワール公を失脚(後に無期懲役の判決が下る)させ、自らは内乱の早期解決へ尽力した功績で貴族派のトップに収まった。
内戦終了後はオズボーン主導の下、大統領の暴挙や「碧の大樹」事件で混乱状態になっていた「クロスベル自治州」を軍を率いて数日で占拠、そのままエレボニア領の特区となったクロスベル総督となった。
閃の軌跡Ⅲ
帝国の領地に帰ることなくそのままクロスベル総督として辣腕を振るい、反乱分子を取り締まるため「鳥篭作戦」を発動。クロスベルの英雄的存在である特務支援課やその関係者たちを次々とミシュラム方面へ拘束していく。
(なお、昇進のためか軍服は白を基調とした高貴さが感じられるものになっている)
終盤ではオズボーンの協力のために帝都に戻り、主君の目的の一つである世界大戦《大いなる黄昏》の発動のために、他の「鉄血の子供たち」と共にⅦ組と対峙する。
その際、ユーシスから何故、大貴族の御曹司で次期アルバレア公爵という約束された地位とクロスベル総督という権力を持ちながら、貴族と敵対関係であるオズボーンの下に就くのかと疑問をぶつけられる。
ユーシスにとってアルバレアの家格などどうでも良く、父が愚かだったのも残念ながら認めていた。しかしそれでも父であり、自分と違って二親いるにもかかわらず、生まれついての親がいないミリアムや、天涯孤独の身であるレクター、クレアと同じようにルーファスがオズボーンを『父』と崇めるのが分からなかった。
返した答えはユーシスにとってもⅦ組にとっても衝撃的なものだった。
「——簡単なことさ。私が父の実の息子ではないからだ」
「ヘルムート・アルバレア公爵のね」
なんと彼はアルバレア公爵の実子ではなく、公爵の正妻と実弟の間にできた不義の子であった。
そのためユーシスとは本来兄弟ではなく、従兄弟の間柄になる。
しかし公爵はそれを知りつつ、家の体面のために彼を実子として迎え入れ、逆に本当の実子であるユーシスを「平民の血が流れている」と言う理由だけで遠ざけてルーファスを次代公爵に選んだ。
家族の絆を、血筋さえも歪めてしまうその有り様から、彼はいつしか「貴族」そのものに疑問を抱き、深い嫌悪を感じるようになったのである。
そんな折、当時の帝国とリベール王国間の戦争「百日戦役」を解決して、平民でありながら四大名門貴族を押しのけて宰相に登りつめたオズボーンに興味を持ち、実力を図るため猟兵団を差し向けた。
ところが、あっさり返り討ちにされて依頼主に気づかれただけでなく、心に秘めた家族と貴族への葛藤まで見抜かれてしまう。
その実力、カリスマ性に惹かれ、何より自分自身を認めてくれたオズボーンを精神的な「父」と見なし、最初の「鉄血の子供」として彼に仕えることになったのである。
閃の軌跡Ⅳ
完全に新旧Ⅶ組と対立し、己の大望である「父であるオズボーンを超えることで、偽りに彩られた人生と決別し、己の存在意義を見出す」ため、本格的な行動に乗り出す。
まず、クロスベル総督の権限を活用し、エレボニアに伝わる7体の騎神の1体・金の騎神エル=プラドーの召喚の場を特定。起動者となることに成功。
次に起動者の一人として、騎神たちの力を融合させる戦いの儀式《七の相克》に参加。第三相克でリィン&灰の騎神ヴァリマールに敗れた聖女リアンヌ&銀の騎神・アルグレオンを不意打ちで倒し、銀の騎神の力のほとんどを奪い取った。
そして遂に、最後の相克の場となる「幻想機動要塞トゥアハ=デ=ダナーン」内部で、黒幕の一人である黒のアルベリヒと共にユーシスらⅦ組と対峙。
兄弟それぞれ家宝の聖剣エルヴァースとイシュナードを手にぶつかり合い、直後にリィン&ヴァリマールとクロウ&蒼の騎神オルディーネを相手に第五相克の戦いを開始する。
これで6体の騎神の力と不死者の身体を得て、偉大なる父オズボーン(&黒の騎神イシュメルガ)へ挑むことができる…と目論んでいたが、力及ばず敗北。
愕然としながら問うた己の敗因に、ユーシスから「人に、絆に頼らなかったこと」と告げられる。
虚ろな公爵家の中でも兄と慕ってくれていたユーシスにも、同じ鉄血の弟妹であったレクター、クレア、ミリアムにも、他にも周囲に仕える大勢の部下達にも頼らず、全てを己の才覚のみで押し進めていった。
それは一見完璧のようで様々な歪みが潜み、故にその場は凌げても、先の未来には決して続かない・・・
完璧な才を持つが故の孤独の道を、多くの仲間たちと支え合いながら歩んできたⅦ組に超えられたことを理解し、憑き物が落ちたかのようになった中・・・
「後は任せて休んでください、兄上」
「ですがその前に一発、殴らせてもらいます」
と弟のユーシスに鉄拳制裁を食らい眠りについた。
不義の子として「父」と自らの存在意義を求めた男は、こうして相克の舞台を降りたのであった。
イシュメルガ打倒後は、オズボーンと共に戦争に加担した罪で極刑を覚悟するレクターとクレアに、それぞれ所属する情報局と鉄道憲兵隊で後の混乱の収拾に尽力することを説き、二人の代わりに咎を引き受けて逮捕された。
創の軌跡
ところがわずか4ヶ月後に収容所から脱走し、あろうことか部下である「黒の衛士隊」を率いて再独立調印式の最中にあるクロスベルに攻め込むという暴挙に至る。
立ちふさがったロイドたち特務支援課を一蹴して街を再占領。自らをクロスベル統一国総統と名乗った。
しかし彼のあまりに唐突な行動に弟ユーシスはもちろん、Ⅶ組メンバーや同僚だった鉄血の子供たちも違和感を抱いている。
※ネタバレ注意!
ルーファスがクロスベルに現れたのと同時期に、3人目の主人公《C》が登場する。
フードの付いた燕尾服のような出で立ちで、何より目を引くのが顔に被った黒い仮面。
彼は「新生帝国解放戦線」のリーダーを名乗り、導力映像を帝国に発信して統一国への異論を表明する。
そこには最近婚約したばかりのオリヴァルト皇子とシェラザード妃の夫妻を誘拐した事、さらに帝都ヘイムダルで何らかの行動を起こす事が告げられていた。
かつて敵対した「帝国解放戦線」のリーダーと同じ名と姿の者を無視することはできず、リィン達も調査に乗り出す。
そして夜の帝都の片隅で両陣営は激突し、戦いの最中で《C》は仮面を破壊される。
その素顔は・・・
「———やれやれ、こうも早くバレてしまうとはね。」
「また成長したな、ユーシス。リィン君たちも。」
なんとクロスベルにいる筈のルーファス・アルバレアその人であった。
クロスベルにいる方とは違い、髪は短く切っている(切ったのは服役時)。
この事実と「「新総統」は自分ではない」との台詞にリィン一行は驚愕し色々問いただすも、すぐその場を去った彼から得られた情報は、皇子夫妻の誘拐についてはリィン達と会う為の餌にしただけで彼の犯行ではない事、夫妻の行方の手掛かりはノルド高原にある事、ルーファスは他にやらねばならないことがある、ということだけであった。
更に後のクレアらによる調査で、クロスベル総統である方のルーファスはこの事実が判明した時間帯、クロスベルを一歩も出ていない事が判明。同じ時間の別の場所にルーファスがいた事になり、一連の事件は新たな謎が生まれるのであった。
視点は切り替わり、ルーファス一行の乗る輸送飛行艇(操縦は武器商店ナインヴァリのジンゴ)。
ここで、ルーファスは多額のミラで雇った同行者のスウィンとナーディアに真実を語る。
彼は拘置されていた収容所が突如黒の衛士隊の襲撃を受け、その際、かつての部下であった衛士隊に救出されるどころか逆に抹殺されかけたのである。
これを返り討ちにし、彼らが自身の名を語る偽物の下に集いクロスベル再占領を図っている事と、その為にスウィンとナーディアが運んでいたトランクを狙っている事を断片的ながら知る。
そこでルーファスは自身の偽物と決着をつけ、自身の総督時代から生じたクロスベルの歪みを「鉄血の子供たち」筆頭として正す為、混乱に乗じて脱獄。
素性を隠すと同時にリィン達を一連の事件に関わらせる為、かつて彼らが敵対していた「帝国解放戦線」のリーダー《C》を名乗り、同様に仮面を着けた。
その後、黒の衛士隊からトランクの中に入っていたラピスを守り抜き、3人を仲間としたのであった。
話を終え、甲板で夜風に当たっていたルーファスは星を見に来たラピスと二人きりになる。
ラピスとの会話で彼は「人間とは何か?」という問いに至る。
その問いに返したラピスの答えは・・・
「善も悪も、出自も生い立ちも、何をしても何をしなくても、何を持っていても何を持っていなくても、その人はその人だよ」
「理由なんていらないし、誰が認めても、誰が認めなくてもそこは変わらない」
「だって、それが人間でしょう? だから、ルーファスはルーファスだよ。」
それを聞いた彼は己のこれまでを一人振り返る。
不義の子として生まれながら公爵家の体面の為に実子とされた自分。
逆に実子でありながら平民の妾腹というだけで父に関心を向けられなかった弟。
そこに自分自身の存在はなく、否定しようとしても、そうすると今度は公爵家の記号としての存在意義すらなくなってしまう矛盾。
そんな時に彼はオズボーンと出会い、オズボーンに「真の父」を見出した彼は最初の「鉄血の子供」となる。
その中で、「父」オズボーンを超えてこそ存在意義が見出せると考えた彼は、がむしゃらに突き進み、何を利用してでもどんな卑劣な手段を講じてでもそれを果たそうとしたが、結果は敗北。
敗因は弟と違い、彼には信頼し、いざという時に頼れる大切な仲間がいなかったからであった。
多くの仲間に囲まれた弟の姿に羨望を覚えたルーファス。
それは超人といっても過言ではない程の力を持つ彼が心の奥底に抱えていた偽らざる本音であり、彼もまた一人の悩み苦しむ普通の人間だったのだ。
そして、今も己の存在意義を見つけられていないルーファス。「自分は何の為に生まれ、何者として在るのか」、彼がそれを見つけられる日は来るのだろうか。
このように、「創」の3人目の主人公はルーファスだと判明。かつてのボスキャラが主人公に抜擢される展開は「空」のリシャール以来である。
ちなみに「創」の時点での彼の年齢は29または30歳であり、軌跡シリーズはおろかこれまでの英雄伝説シリーズを含めても歴代最年長の主人公となる。
なお、軌跡シリーズ主人公の中では唯一釣りをしない(代わりにスウィンとナーディアが担当)。
存在意義と過去の自分
そうして彼は、ラピスの記憶とその裏に隠された真実を求めてクロスベルを巡る。
旅路の中で、ルーファスはラピスと共に己の存在意義を見つめ直し、持ち前の知略で素早く旅路を突き進んでいく。
そして知った驚愕の真実、それはラピスの正体が、導力ネットワーク内に生まれた、未来予知にも等しい演算が可能な存在「機械知性エリュシオン」の管理人格であり、ある日突然エリュシオンが何者かに乗っ取られて自身が消去されそうになったこと、その直前に人形師ヨルグに作成を依頼し、人形に人格を転移したこと、さらにそれを『C』を名乗る人物――ルーファスに届けるよう依頼したことが明らかとなる。
ラピスが届け先にルーファスを選んだ理由は、エリュシオンを手にした黒幕に対抗するには自分を最短ルートで真実に導いてくれる人間が不可欠で、逃走する直前に行った未来演算で対策を練った際、最も適した人物が高い知性と徹底した効率重視の思考を持つ彼だった為である。
(なお、彼の観察は総督時代にオルキスタワーのメインターミナルから行っていた)
そう、計算の先に運命の出会いが待っていたのがルーファスとラピスであった。
真実を知った後は、ロイドとリィン達に連絡を取り、これらの事実を伝えた後合流。クロスベル解放作戦に参加する。
そしてついに、オルキスタワー前で待ち構えていた自身の偽者――ルーファス新総統と対峙。
ところが総統は自身が偽者であると把握しているうえで「自分の役目を引き継ぐ気はないか」とルーファスに持ち掛ける。衝撃を受けるルーファス一行。畳み掛けるように偽物は言葉を続ける。
「誰もなしえていない『ゼムリア大陸統一』という偉業を成し遂げれば『父』オズボーンを超えて自身の存在意義を手にできる」
「いずれにしろ大陸統一は「この手で」成し遂げられると確信している」
「私は君で――君は私なのだから」
その言葉に逡巡するルーファス。その時脳裏に、飛行艇の甲板でのラピスの言葉が蘇る。
そして彼の選んだ答えは――
「"私"は"私"だ。――断じて"君"とは違う。いまだあの幻想要塞以前に立ち止まり続ける君などとはな。」
ルーファス総統を――過去の自分を否定しての拒否であった。
弟から受けた鉄拳制裁、オズボーンの真実、そして不思議な仲間達との旅路で変わった彼は過去の自分を超えるべく一騎打ちに臨む。
そして剣戟の果てに……
「さらばだ――」
戦いは『本物』のルーファスの勝利に終わり、彼はルーファス総統――過去の自分に別れを告げて一閃し、過去の自分を超えて見せた。そして、ルーファス総統がこの時点でようやく、今回の事件に多々現れた機械人形であることが判明した。
だが、それすらも想定していたエリュシオンは密かに建造していた最終兵器「逆しまのバベル」を起動。巨大ビーム兵器「天の雷」による超長距離砲撃で世界各地の軍事基地を破壊し始める。
これを放置してはクロスベル再独立はおろか世界そのものの危機である。
クロスベル、帝国の両首脳部は「逆しまのバベル」を無力化する為の軍事作戦「創(はじまり)の翼」を立案。エリュシオンによる情報漏洩をギリギリまで防ぐため、ごく一部の者のみで会議が行われる中、リィン、ロイド、そしてルーファス一行は作戦準備でクロスベルを見て回る。
その際、住民や仲間たちと話しているルーファスの節々にどこか他人事のような雰囲気が漂っていた。ラピスはそれを疑問に思っていたが……
それに確かめる間もなく刻限は訪れ、作戦が開始される。クロスベル、帝国、さらには猟兵団や教会、結社までもが加わった大戦力とバベルの防衛戦力の激しい戦闘の中をかい潜り、一行はバベル内部に突入した。
独りじゃない
バベル最上階で遂に姿形が同じ黒幕と対峙する一行。
黒幕が呼び出した「存在しないはずの騎神」に、まずリィンたちⅦ組が機甲兵で対抗。
ルーファスも密かに用意していた、自分用に金色に塗装した魔煌機兵ヘルモードに乗って出撃。その際、不安そうに見つめるラピスにこう告げる。
「私は私の使命を果たすのみ。――この場は任せた。」
かつて誰にも頼らないがゆえに敗北した男は、この旅路で「他人を頼る」事ができるようになっていた。
それでも騎神の力は強大で、Ⅶ組とルーファスの機甲兵は次第に劣勢となるが、その影でラピスをはじめ電子技術に長けた者たちがエリュシオンの制御盤へ向かい、騎神とエリュシオンの切断を試みる。
寸前で気づいた黒幕がラピスたちを攻撃するが、これをルーファスが庇い、浅からぬ傷を追う。これもかつての彼からは考えられない行動であった。その間にラピスはエリュシオン切断に成功。弱体化した騎神にロイドたちが直接戦い、見事撃破した。
ところが、黒幕の悪あがきにより、「天の雷」が「人間の憎悪が最も集まる地を標的とし、大陸からすべての憎悪が消え去るまで撃ち続ける」ように設定されてしまう。それは憎悪が人間誰しもが持つ感情であるため、人間すべてが標的となったに等しかった。砲が起動して施設内部の気温が急速に上昇してゆき、たまらず一行は魔女の転移陣で一旦脱出した。
ただ一人、直前に転移陣を離れたルーファスを除いて。
動揺するラピスたちの前に、バベルからルーファスの投影映像を介した演説が始まる。その内容は、バベルへの攻撃の報復として大陸各国に天の雷による反撃を行うこと、過去に大陸中で起こった争乱の全てに自身が関与していたことを匂わせるものだった。その映像は大陸中に映され、それを見聞きした人々の恐怖、怒り、そして憎悪が霊脈を通じてルーファスに――バベルに集まっていく。
そう。ルーファスの意図は「自分が総統のフリをして、人々の憎悪が全て自身に向けられる=“天の雷の標的が自分のいるバベルになる”ように演説を行い、自身もろとも天の雷でバベルを破壊する」というものだった。
これをもって世界を救い、かつて犯した世界大戦煽動の罪を己の命で償うために・・・
クロスベルを巡る際にラピスが彼の言動に違和感を覚えたのはこれが原因である。
そして刻限となり、ラピスの悲痛な叫びも虚しく、天の雷がバベルに降り注いだ・・・
―――という映像がラピスたちの脳裏に浮かび上がった。
それはエリュシオンが見せた最後の未来演算だった。
今ならまだ間に合う。ラピスは叫んだ。「ルーファスを・・・助けて!!」
激戦で疲弊した一行は互いに顔を見合わせる。そんな中で立ち上がったのは、「その支援要請、受け取った!」特務支援課のロイドだった。そして兄を助けるためにユーシスが、奇縁に導かれるまま共に旅路を歩んだスウィンとナーディアが立ち上がり、神獣ツァイトの力でバベル内部に転移する。
その頃、バベル最奥部でルーファスは最期の刻を待っていた。
「……フフ……可笑しなものだ。結局"父"を越えられず、何事をも成せず…………最後まで空虚な人生だったというのに…………ああ………悪い気分では、ない…………」
彼はここにきても己が、他人と利害のみでしか繋がれない「孤独で空虚な存在」だと自嘲していた。
そんな時、彼の耳に聞こえたのはラピスとユーシスの声。
駆け寄ってくるロイドたちを見て驚き、ルーファスは自分を連れ戻しに来たのか、あるいはまた一発殴りに来たのかと、なおも自嘲する。
救出に来た面々が呆れ返る中、ロイドは警察手帳を突き出しながらルーファスに告げる。
「ルーファス・アルバレア公子。あなたを強制連行する」
「脱走を筆頭に諸々ありそうだが、何よりも―――――」
『最後の最後で自分自身が紡いだ"絆"を甘く見た容疑で。』
罪状を聞いたルーファスは呆然とし、そして気づく。
弟と、旅の仲間たちの優しい眼差しに・・・
彼は泣くように笑いながら呟く。
『そうか、私は…………とっくに手に入れていたのだな……』
こうしてルーファスは連行に応じ、ロイドたちと共にツァイトの力でバベルを脱出。
その1分後、「天の雷」がバベルに向けて発射。「逆しまのバベル」は崩壊・消滅した。
ここに終わり、ここに創まる
1週間後、戦闘での重傷及び火傷から生還し、聖ウルスラ病院で目を覚ましたルーファス。
目を覚ました彼に喜びのあまり抱き着くラピス。丁度そこへオリヴァルトが訪れ、彼の沙汰を告げる。
それは、「天の雷の誤射により、逆しまのバベル諸共消滅した。という形で公的記録上死亡扱いにする」と言うものだった。
元々先の世界大戦の罪を償う形で収監されており、そこへ今回の偽物の起こした事件の罪状が加わって極刑は免れなかったが、ルーファスが演説に使った映像を通じて人々がバベル消滅を目にしていたためである。
流石に大罪人の自分には虫が良すぎる話だと反論するルーファスだが、オリヴァルトはむしろ、死亡扱いとなったことで身分、家、名前までも失い、帝国で生きていけなくなったこと、罪を償う機会も同時に失ったことに後々苛まれるかもしれないと告げる。
(事実、家から二代も重度の戦争犯罪者が出たアルバレア家は非常に厳しい立場となると思われるが、その場合、死亡扱いの彼に変わり残されたユーシスが矢面に立つことは想像に難くない。そして死亡扱いの自分にはそれをどうすることもできないことも・・・)
そんなルーファスにラピスは、これから自身が始める、エリュシオンを生み出した世界を知るための旅に彼を誘う。
「わたしたちの利害は一致する――ついてこない理由なんてないでしょう?」
ラピスの最後の言葉は、トランクからラピスを見つけた際に《C》として彼女にかけた言葉と同じであった。
「そういうのも悪くないのかもしれないな」と、ルーファスも笑いながら応じるのだった。
それからしばらくして、とある草原――
ラピスが呼ばれて駆け出した先には、スウィン、ナーディア、そしてルーファスの姿が、クロスベル再独立にまつわる旅と同じ面々の姿があった。
今回の旅の果てに、自分を示すものを全て失ってしまったルーファス。だが、その代わりに彼が最も欲していた、嘘偽りのない己を見てくれる仲間との絆を、そして何があろうとなかろうと、何かの為であってもなくても、自分こそがルーファス・アルバレアと自分自身に証明し、己の存在意義の根本を掴んだ。
もう彼は存在意義を求めて迷走し、道を踏み外す事はないだろう。
欺瞞と虚無に満ちたアルバレア公爵家公子「ルーファス・アルバレア」としての人生の軌跡はここに終わり、父と慕うオズボーンの元から巣立ち、大切な仲間と共に歩む一人の只人である「ルーファス・アルバレア」としての人生の軌跡がここに創まったのだ。
――願わくば、新生帝国ピクニック隊(byナーディア)の旅路に女神の加護あれ。
黎の軌跡
ジョゼットの手を借りて共和国入りした際、ディンゴ・ブラッドにCIDの攪乱など共和国内での行動で助力を受けていた。
また、クレイユ村に四人で1ヶ月ほど滞在していた。
黎の軌跡Ⅱ
突然ラピスが只の人形になってしまい、原因を究明するためにスウィンとナーディアと別行動を取っていた。
ガーデンマスターの撃破によるラピス救出後のアラミス学藝祭の日にはラピスを通じて一連の事件を把握しており、かつて世話になった彼のためにある人物を引き合わせるとともに通信越しでアークライド解決事務所と対面した。
公式上は死亡扱いだが、CIDでは彼の生存を把握しており、最重要警戒対象としている。ヴァン、エレイン、キンケイドの三人は誰か気付いていたが、真相までは詳しく知らない模様。
ビジュアルコレクションのインタビューでは共和国政府からの警戒が厳重だったことに加えて、「各地の隠し財産が接収されて活動資金不足だった」という割と身も蓋もない事実が共和国に直接現れなかった理由の一つとして言及されている。
界の軌跡
メインキャラクターの一人として登場。
創のような《C》としての衣装ではなく、スーツにサングラスを掛けたラフな格好をしている。
上記のように豊富な資金はCIDに徹底的に搾り取られてしまったが、移動のためにレンタルしていた車を高級車にしてしまうなど貴族としての感覚が抜けてない所もある(もっともこの件もあってCIDのマークからほぼ外れることになったが)。今作ではケビンに雇われその間の資金を出すことを条件に協力することになる。
対人関係
ユーシス・アルバレア――世間的には腹違いの弟。だが、実際には従兄弟同士。身勝手な父に無視されたユーシスに、ルーファスは貴族の心得や剣術など、様々なことを教えた。そうした経緯で兄弟仲は良く、ユーシスにとっては兄であると共に実の父以上に父親であった。が、クロスベル総督就任以後疎遠になっていた二人は決別する。そして、これまでの蛮行を皮切りに遂にユーシスも兄を敵視する。互いに家宝の聖剣で激突した末に敗北し、弟から初めて殴られる。その後の事件で、ようやく普通の兄弟に戻れた。内心ではⅦ組という仲間に囲まれたユーシスを羨み、本人さえ気付かないところで彼らのような仲間を欲していた。クロスベル再事変では《C》として行動していた際に、帝都ヘイムダルで交戦し仮面を割られ正体が露呈する。その後クロスベルで再会し共闘する事となり、事件解決後改めて和解する事が出来た。
ラピス・ローゼンベルク――新生帝国解放戦線のメンバー。立場上はルーファスが付き人だが、ルーファスにとっては初めての仲間で相棒と呼べる間柄。それ故信頼関係は強固なもの。時折自由奔放っぷりを見せるが、基本的には甘やかす事が多い。
スウィン・アーベル――新生帝国解放戦線のメンバー。当初は報酬を払うという形で契約を結んだ関係であったが、短い旅路の中で信頼関係を結んでいく。皇帝との一戦で自分とナーディアの過去を知っても受け入れられた事で、事件が解決するまで行動を共にしている。事件解決後は宛のない旅に出る事になった。
ナーディア・レイン――新生帝国ピクニック隊・・・もとい新生帝国解放戦線のメンバー。スゥインと同じく報酬を支払うという契約関係を結んでいたが、当初は警戒心を抱かれていた。皇帝との一戦で自身とスゥインの過去を知られたが受け入れられた事で信頼するようになり、事件解決まで行動を共にする。現在はスゥインと同じく信頼されてはいるが、時折皮肉を言われたり毒を吐かれたりしている。それまでルーファスの隠し財産で贅沢な旅をしていた事から、サルバッドで現在の金銭事情を明かされた際には頭を抱えて絶叫してしまった。
新生帝国解放戦線――上記の三人と目的のためにでっち上げた組織。当初は利害の一致に過ぎなかったが、数日の旅で互いの胸の内や過去を明かし合ったことで、かつてのユーシスにとってのⅦ組同様ルーファスにとって初めての仲間となる。
鉄血の子供たち――自身と同じ、鉄血宰相ギリアス・オズボーンの直属。加入時期は二番目だが、年齢等もあり長兄にして筆頭。三人との関係は良好だったが、当人同士と比べれば付き合いは薄かった。
トールズⅦ組――トールズ本校の常任理事だった頃に、Ⅶ組に課題などを出していた。特に初代Ⅶ組には弟やオズボーンの実子がいたことも含めて強い興味を抱いていた。が、同時に彼らのような仲間を渇望していた。
クロウ・アームブラスト――トールズの生徒のひとりにして初代帝国解放戦線のリーダー。故郷を奪われた復讐のため、オズボーンを心臓に弾丸を撃ち込んで殺害した・・・が、オズボーン自身が不死の肉体であったため未遂に終わり、何より本人が覚悟した生き様だったためかルーファスにとって主君の仇にはならず悪感情は抱いていない模様。またクロウも黄昏でオズボーンが世を去り、同時に故郷が再独立したためか特に揉めることもなく接する。しかし《C》と名乗っていた頃のことはいわゆる“黒歴史”であり、それをほじくり返されたことに関しては大層怒っている。とある事情で互いにその記憶を失った時でも「つい最近、多大な迷惑をかけられたような気がして文句の1つも言いたくなってくる」とのこと。界の軌跡ではルーファスと同じくMK社と社外テスター契約を結んだ事が明かされた。
鉄機隊――前述の通り、彼女たちのマスターであるアリアンロードを騙し討ちした事から恨まれており、特にアリアンロードを最も崇拝していたデュバリィからは当初は殺意を抱かれ敵討ちを挑まれる程憎まれていたが、最初の一騎打ちの際に不意打ちでアーツによる攻撃を受けて怯んだ隙をついて彼女に勝利、その際『今回の事件が解決したら改めて一対一の勝負を受けよう』と約束を交わして協力を申し入れた事で(当然渋々な様子ではあったが)協力関係を結び行動を共にする事となった。その後は偽物のルーファスを倒したことで少し溜飲が下がったのか、ルーファスに対して「ルーファス卿」と呼ぶなど変化が見られた。(クロスベル解放後はまた『ルーファス・アルバレア』呼びに戻ったが)
また自己犠牲で天の雷を阻止、逆しまのバベルを滅ぼそうとしたルーファスの覚悟を認めて、蟠りは少し残るものの、復讐自体は止めた様子。それどころか約束した決闘に早く応じてもらうためとはいえ、入院しているルーファスに果物を差し入れする程、柔らくなった。(ちなみに果物はラピスが全部頂いた模様) 約束した決闘は後日行ったようだが、結果はデュバリィの全戦全敗。全戦から分かるように、何度か申し込んで、ルーファスも全部引き受けたらしい。その様子はピクニック隊からは、『稽古にしか見えない』と言われて、ルーファスも『ユーシスに剣を教えていた時みたいだ』と語っている。
アイネスとエンネアもデュバリィ程激情には駆られていないがやはり恨んでたようであり、ラストチャプターではサングラスをかけて変装していたルーファスの正体を見破りながらも、事件解決の為に恨みを呑んで協力している……が、エンネアに関しては『せいぜい、背後に気をつけながら死ぬ気で頑張りなさい?』と脅しとも警告とも取れる台詞を口にしており、内心かなり殺意を抱いていた事が窺い知れる。
ギリアス・オズボーン――鉄血の筆頭にして、ルーファスの精神上の父。彼を越えることで、自らの存在を示そうとしていた。オズボーンの方もルーファスの事を気にかけていた事が彼の独白で明かされた。
オリヴァルト・ライゼ・アルノール――帝国の皇子。立場上は同じトールズ本校の理事長と常任理事という上下関係でもある。また、双方とも抜きんでた才能を持つ共通項がある。ただし、二人の決定的な違いは信頼できる仲間の存在ひいては他人に頼る、頼らないの違い。優れた才能を持ちながらもオリヴァルト皇子は親友やリベールの仲間達、Ⅶ組、特務支援課と多くの人々を信頼し、また信頼されていた。逆に優れすぎていたルーファスは全てを一人でこなしていた。コレが二人の決定的な差であり、後のルーファスの敗因であった。クロスベル再事変が解決した後、ウルスラ病院の病室に姿を現しルーファスが死亡扱い担った沙汰を伝えている。
ケビン・グラハム――星杯騎士団所属の星杯騎士第五位。界の軌跡にてオレド自治州のMK本社で邂逅し彼の任務を手伝う依頼をされ、金銭面でのバックアップを約束させて契約を結ぶ。常識人な一面を持つためか、ルーファス一行が時折見せる世間からズレた一面を見た際にはツッコミを入れている(一行のツッコミ役であるスウィンからは「正直助かる」と言われている)
彼が使命を果たすと言いつつも、何かしらの葛藤を抱いている事を見抜いているが、口を出さずに静観している。
バトルスタイル
登場作品を通じて得物は騎士剣。前述の通り流派は帝国宮廷剣術で、かの「風の剣聖」アリオスからも「感服した」と賛辞を貰うほどの実力を持つ。
プレイヤーキャラとしては『創』が初になるが、ほぼユーシスと同じ感覚で使える。前衛に立って剣を振るうこともできれば、後衛に回りアーツでの攻めもできるなど、弟同様まさに万能の立ち回りができる。オーダーも2つあり、「クリミナルレイド」は5ターンの間、30%クリティカル率アップと前衛攻撃向きで、「ダークレクイエム」は8ターンの間、詠唱時間3/10高速化と、後衛アーツ詠唱向きと、状況に応じた複数のオーダーをリィン以外では唯一持つ。
余談
上記の通り『創の軌跡』でロイド、リィンに続く3人目の主人公となり、軌跡シリーズの主人公の一員となった彼だが、当初の3ルート目は、『創の軌跡』が「西ゼムリア大陸編完結編」をコンセプトとする事から、彼でなくエステルを主人公とし、リベール王国を主な舞台とする予定だった。しかし、リベール王国でやるべき物語は『空』でやり切った為、それ以上の物語を展開すると蛇足になりかねず製作は難航。
そこで若手の製作メンバーが提案したのが、ルーファスに仮面を着用させて《C》と名付け、主人公とするルートだった。この提案に日本ファルコム社長の近藤氏らは驚き、これが採用されて発売に至る。
彼を主人公とするルートは、ルーファスの効率・合理至上主義な性格はそのままに、それをシナリオ及びネタ的な意味でのキャラクターの魅力として描き切り、同時に『閃』における彼の背景の掘り下げが行われ、シナリオ全体のテンポもよい点から評価が高い。
実際、
・身を隠すために使ったのが、かつての敵国が開発し、戦中の兵士から回収した道具。
・自分の偽物の人物に支配された地域に潜入する際、自分の偽物に変装して正面から堂々と侵入。
・ラピスが大量の偽物の人形に埋もれてしまった際、彼女を見つけた方法が「こっそり付けた発信機」(大量の偽物から迷いなく本物の自分を救い出してくれた事を感動しているラピスを尻目にレンにそのカラクリを打ち明けている)。
・デュバリィとの決闘での不意打ちアーツ(軌跡シリーズにおける魔法の名称で、『決闘』なので剣と剣の勝負だと思いこんでいたデュバリィを大きく怯ませた)。
・綺麗な山間の景色を見た際の感想が「無駄な未開発エリアが多い」
etc…と夢もロマンもなく、他の軌跡シリーズ主人公であれば心理的、立場的に躊躇われる手であっても即座に実行に移して目的を達成する姿は、熱血・正義感の強い歴代の軌跡シリーズ主人公達とは対極に位置し、一周回って新鮮ですらある。
グループミッションの掛け合いも必聴で、たとえばガイウス・オリヴァルトとの三人の掛け合いでは弟を持つ兄とはどうあるべきかを話したり、レクター・クレア・ミリアムとのかつての鉄血の子供たちである四人での掛け合いでは互いに前作で世を去ったオズボーンを偲ぶ一言を述べている。
関連タグ
閃の軌跡 閃の軌跡Ⅱ 閃の軌跡Ⅲ 閃の軌跡Ⅳ 創の軌跡 黎の軌跡Ⅱ 界の軌跡
ユーシス・アルバレア ラピス・ローゼンベルク スウィン・アーベル ナーディア・レイン
エステル・ブライト ケビン・グラハム ロイド・バニングス リィン・シュバルツァー ヴァン・アークライド
シュナイゼル・エル・ブリタニア――コードギアスシリーズの重要人物。並外れた才覚、内外に注目される国の重鎮、友人と呼べそうな相手はいても本質は虚ろと共通項は多い。付け加えれば、世界を巻き込んだ弟との兄弟喧嘩も行っている。決定的な違いはルーファスには自分の存在意義の確立という執着があったが、シュナイゼルには自分自身の存在を求める執着すらない。また、世界の憎悪を一身に引き受けた点はシュナイゼルの弟と共通。