「遥かな高みから、地上を見下ろすのは愉快なものであろう?」
CV:島田敏
概要
クロワール・ド・カイエンは英雄伝説『閃の軌跡』『閃の軌跡Ⅱ』に登場するエレボニア帝国西部・ラマール州を治めるカイエン公爵家当主。そして2作の黒幕である。
なお、フルネームの「クロワール・ド・カイエン」は『閃の軌跡Ⅲ』で初めて明らかになり、『閃の軌跡』『閃の軌跡』では単にカイエン公爵と記されるのみである。
閃の軌跡以前
七曜歴1196年(『閃の軌跡』の物語の8年前)、兄であり実質公爵家の次代と定められていたアルフレッド・カイエン公子(ミルディーヌの実父)が妻ともども海難事故で死亡したため、その弟であるクロワールが次代公爵家当主に推される。
その後公爵を襲爵し、カイエン公爵家当主となるが、この折に兄・アルフレッドの遺児かつ自身の姪・ミルディーヌを脅威の存在とみなして母方であるイーグレット伯爵家に養女として向かわせた挙句、兄の死の3年後には帝都の聖アストライア女学院初等部に送り込んで幼少の身ながら幽閉させた。
この間に暗躍を続け、クロウとヴィータを援助し、《帝国解放戦線》の結成を後押しするほか、海都・オルディスの地下に眠る《蒼の騎神》・オルディーネの試練と入手にも手を貸す。
また、ルーレ工科大学のシュミット博士に新兵器・機甲兵の開発を依頼し、この際にクロウが入手したオルディーネの情報をシュミットに提供されるよう取り計らったうえで、機甲兵の用意を始めるとともに、戦艦パンタグリュエルを建造して来たる内戦、自身の抱く野望成就のための準備を密かに進めた。
閃の軌跡・閃の軌跡Ⅱ
ゲームに初登場したのは『閃の軌跡』で、 バリアハートへ行く道すがらレグラムのアルゼイド子爵を訪ねるところをリィンとラウラと会う。この時にヴィクターを貴族派加入に勧誘するとともに、正規軍への教練を止めるよう釘を刺した。
そして終盤、クロウの放った銃弾がオズボーン宰相を貫いた後で内戦を勃発。『閃の軌跡Ⅱ』序盤、クロワールは貴族連合軍主宰として、貴族連合軍総参謀となったルーファス・アルバレアを右腕として従え内戦を優勢に進め、エレボニア帝国領内を次々と手中に収める。
また、皇帝ユーゲント三世・皇妃プリシラ・帝都知事カール・レーグニッツ、さらにはリィンの妹・エリゼ・シュバルツァーを誘拐してカレル離宮に監禁・幽閉した上で《灰の騎神》の乗り手となったリィンを味方に引き入れることを画策し、クロウに力の差を見せつけた上で旗艦パンタグリュエルに半ば強制的に招き、
「オズボーンのやり方があまりに理不尽だったから自分たちが事を起こしたのだ」
と訴え、懐柔とリィンの貴族連合軍への参入を図った。
しかしリィンがこれに応じず、さらにルーファスの諫言、そして配下に集った者、とりわけクロウやヴィータが「お叱りは私が受ける」と言いあっさりとリィンをⅦ組に返したことから、少しずつ狂いが生じる。
一方で皇女アルフィンをパンタグリュエルに乗せて「貴族連合軍の象徴」として慰安を強要させるほか、皇太子セドリックは帝都地下に眠る《緋の騎神》の起動者とすべく拉致・監禁・強要させる非道も見せた。なお、アルフィンはリィンによってパンタグリュエルにて救出、その後Ⅶ組とともに帰還・合流している。
アルフィンやセドリックに対しての虐待ともいえる行動の根底は、実のところ皇族への復讐にあった。カイエン公爵家は250年前の《獅子戦役》で現在の皇帝家であるアルノール家の祖先たるドライケルス第三皇子に敗れて後に《偽帝》として伝わるオルトロス・ライゼ・アルノール第四皇子を祖先としており、いわばアルノール家の分家であった。クロワール自身の真の野望と目的はドライケルスの末裔たる現・皇帝家への復讐と自身がセドリックを操ってエレボニア帝国の支配者になることであった。
後半にかけてクロワールは貴族連合でも強硬的、かつ帝国の実権を皇帝家から次々と奪うべく突き進んでいたのに対し、他の四大名門では
- フェルナン・ハイアームズ侯爵(パトリックの父)- 元より穏健派かつ領内の混乱を収拾するため内戦に関与せず。
- ゲルハルト・ログナー侯爵(アンゼリカの父) - ゲルハルト侯爵自身は貴族連合に関わることが忠誠を誓う皇帝家に弓引く行動であるため、心中おだやかでなかった。その一方でゲルハルトの弟ハイデル・ログナー伯爵はクロワールに感化してラインフォルト社の重役の立場から多く貴族連合を支援、かつラインフォルト社社長イリーナを監禁して実権を握っていた。しかし元々兄・姪と不仲だったことが災いしてハイデルはⅦ組やアンゼリカによって救出されたイリーナに叩きのめされた上で、アルフィン皇女の説得とゲルハルト侯爵の英断で早々に貴族連合軍を離脱。
と、2侯爵家からは縁を切られ、
- ヘルムート・アルバレア公爵(ルーファス・ユーシスの父)に至っては、クロワールに後れを取る焦りからか、リィンの故郷ユミルを襲撃・フィオナ・クレイグ(エリオットの姉)誘拐および殺人未遂・そして領内の町ケルディックを焼き討ちして町を破壊するなど、クロワールの意思とは関係なく独断かつ勝手に蛮行を犯すこと多々でついにはクロワール自身とルーファスによって連合から除名。ユーシスらⅦ組によって捕縛される。
など、段々と連合軍にヒビが入ってくる。
ついにはⅦ組によってトールズ士官学院を奪還され、これを守備していたパトリック・T・ハイアームズら貴族生徒も翻意され、いよいよ帝都ヘイムダルに追い込まれる。
そして最終決戦、ヴィータの秘術によりバルフレイム宮を「煌魔城」と変貌、城内に傘下として集った結社の執行者(ブルブラン・デュバリィ・マクバーン)と西風の旅団の猟兵(ゼノ・レオニダス)を配置し、城の最上階でクロウ・ヴィータとともに皇太子セドリックを拘束しつつⅦ組を待ち構える。
これらを退けたⅦ組に対し、激高したクロワールは
「さあ殿下、覇道の時間ですぞ」
と言い、セドリックの拘束を解き、《緋の騎神》に取り込ませてⅦ組に襲い掛からせる。
最後は激戦の末にセドリックを助け出されるが、致命傷を負ったクロウをⅦ組やヴィータが終の別れをしている間隙をぬって気絶したセドリックの喉元に刃を突き付けて人質にとり、
「蒼の騎士も、深淵の魔女も、見掛け倒しではないか!!」
と叫び抵抗する。この蛮行と罵倒に対してヴィータが逆上、あわや殺されかけるという場面となるがそこに参謀総長・ルーファスが登場し、ヴィータに斬りつける。クロワールは「助けに来てくれたのか」と心躍るが、ルーファスは
「民の言葉で言うところの、『寝言は寝てから言うがいい。』」
の一言ののち、背後よりアルティナの戦術殻・クラウ=ソラスの一撃によって拘束される。
「たびたびの不敬罪、もはや見過ごすことはできぬ。カイエン公爵そして結社の魔女、お前たち二人を拘束する。」
と告げた上で自身の正体を明かしたルーファスと生存していたオズボーンの参上により事の真相・全てはオズボーンの指示を受けたルーファスによる貴族勢力を削ぐためとオズボーンに告げられて野望を完全に打ち砕かれてしまった。なお、ヴィータはオズボーンから見逃されたこともあってその場より敗走している。
その後
貴族連合軍主宰としての内乱の首魁による国家反逆罪・セドリックを人質にとり、刃を突き付けたことでの不敬罪の現行犯、そして現皇帝ユーゲント三世陛下・プリシラ皇妃夫妻の幽閉・監禁に対する不敬罪・さらにはクロスベル事変に際してクロスベル独立国ディーター大統領とその娘との呼応・共謀してガレリア要塞を破壊した外患罪と多くの罪で逮捕され、『閃の軌跡Ⅲ』開始時点では拘留が続いていたが、前述の内戦中に帝都を占領して皇帝・皇妃ら皇族を幽閉・監禁したことが決め手となり、
無期懲役
公爵位および公爵家当主剥奪
所有する戦艦パンタグリュエルは帝国政府に没収
と断罪された。現在は収監中とされるが、意気消沈して周囲からは気の毒な目で見られるほど落ち込んでいるらしい。なお没収された戦艦パンタグリュエルはアルノール皇族家所有となり、儀礼艦パンタグリュエルとなった。
公爵家こそ取り潰しは免れたが、領地のラマール州はクロワールの叔父であるヴィルヘルム・バラッド侯爵が暫定統治するものの、本人のあまりの不甲斐なさもあり、その後領邦会議において次代当主は皮肉にもかつて遠ざけていた自身の姪であるミルディーヌが推されることとなった。
そしてその姪・ミルディーヌもまた、オズボーン、いやその背後の者の野望を感じ、図らずも叔父と同じくエレボニア帝国政府に反旗を翻す・・・・・・。
人物
カイエン公爵家はゼムリア大陸近隣諸国を凌駕する財力を持ち、クロワール自身はそれに見合った派手さと豪奢さを好み、見た目は優男という風貌をしている。飄々としたつかみどころのない人物で、前述の通りヴィクターや《灰の騎神》の乗り手となったリィンのような潜在的な敵対者を懐柔して取り込もうとするしたたかさも持っていた。
また、皇帝家への復讐は自身が《偽帝》の末裔であることの屈辱を抱いていたゆえともいえる。
しかし、続編『閃Ⅲ』での海都オルディスの公爵家御用達の職人からは悪しざまに罵られているなど性格の悪さと人望の低さは確かな上、自ら手を汚すことを嫌う黒幕タイプの典型らしく、普通ならばラスボスとしてⅦ組と自ら戦うべき立場でありながら武器をとって戦うことを最後まで行わなかった。このためクロワールは軌跡シリーズの歴代黒幕キャラクターで、ボスキャラクターの立場でありながら最後まで主人公と戦わなかった人物のひとりとなっている(シリーズでは『碧の軌跡』のイアン・グリムウッドや『黎の軌跡』のエドモン・オークレールも該当するが、前者は共犯に最終決戦前に用済みとして始末されて戦闘に参加できなかったこと、後者は自らが抱く選民思想からマフィアの総帥に利用され、彼の行った暴挙を見て青ざめ、縁切りを図るものの先に始末されかけている。)。
前述のリィンに対する加入の強要を行うが失敗、取り逃がした件についても、「加入しなければ君の妹君がどうなってもよいのかね?」とエリゼを人質にとり、彼女への危害を匂わせればあっさりとリィンを陥落できたはずであるがそれを行えなかったこと、さらにそれでも拒否するならセドリック同様拷問を加えてでも加入の強迫を行わなかったこと、Ⅶ組と当初対立していたパトリックに対して、同じ四大名門貴族の子息ゆえに士官学院では厚遇(おそらくはパトリックに対しても同類として服従を命じたとは思われるが)したものの、他の貴族生徒含めて完全に感化させられなかったことなど、詰めは甘かった。
これらのことから姪・ミルディーヌから見たクロワール評は愚かなる叔父の一言で、ミルディーヌ自身もクロワールから冷遇、放遂、果ては女学院に幽閉されたことで少なからぬ恨みもあるらしく、内戦勃発の時点でクロワールは内戦で敗れて破滅するのを予期していたという。
そんな器量が足らないクロワールも都合よく兄のアルフレッド公子が事故死してカイエン家当主に就くことができ(一部からはクロワールが兄夫妻を海難事故に見せかけて殺したという説も挙げている。)、さらには自らが抱く野望より内戦を起こしたことから、彼もまたイシュメルガの呪いに乗せられたのではないかという見方もある。
余談ではあるが『空の軌跡』でクーデターを画策したリベール王国のデュナン公爵はオリヴァルト皇子によると「帝国なら死罪」と言われていたがデュナン公爵以上の暴挙を行ったカイエン公が無期懲役刑にとどまった理由は不明だが、おそらくはカイエン公爵家は四大名門筆頭格かつ皇族家の分家であることの体面的なもの、またクロワール自身のみが問題人物だったことがあると思われる。
関連タグ
ギリアス・オズボーン - 倒すべきだった宿敵。
セドリック・ライゼ・アルノール - クロワールのために続編で歪む原因となり、結果的にはアルノール家の未来の一端を潰してクロワールの野望の一片を果たせることになった。
ミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエン - 姪。彼女の能力を恐れてか、母方の実家にとして向かわせるなど遠ざけていた。
四大名門
ルーファス・アルバレア ユーシス・アルバレア アンゼリカ・ログナー パトリック・T・ハイアームズ
貴族連合時に配下だった者たち
ルーファス・アルバレア クロウ・アームブラスト アルティナ・オライオン オーレリア・ルグィン ウォレス・バルディアス ヴィータ・クロチルダ 怪盗紳士ブルブラン 神速のデュバリィ 劫炎のマクバーン ゼノ レオニダス
カイエン公以外の軌跡シリーズ歴代黒幕
ゲオルグ・ワイスマン マリアベル・クロイス イアン・グリムウッド 黒のアルベリヒ イシュメルガ イシュメルガ=リィン エドモン・オークレール ジェラール・ダンテス オーギュスト・アルダン