概要
ハーメル村はエレボニア帝国南部のサザーラント州の更に最南端に位置し、隣国のリベール王国との国境沿いにある小さな山村である。リベール王国の最北端のラヴェンヌ村とも交流があり、子供も少ない平凡な村であった。
しかし七耀暦1192年4月23日、突如として山津波が発生して住民達は全滅。その直後に何故か帝国はリベール王国に侵略戦争を仕掛けた。後に百日戦役と呼ばれる戦争である。
戦争後、住民の全滅によってハーメルの名は地図から抹消され、政府と軍の上層部によって徹底的に周辺地区が封鎖されるという不可解な結末となった。これが通称『ハーメルの悲劇』である。
真相?
ハーメルの悲劇は山津波などではなかった。ハーメルはリベール王国の軍隊に襲われ、焼き討ちにされた。つまり、百日戦役は越境した隣国軍による虐殺への報復戦争だったのである。だが、カシウス・ブライトの抵抗で苦戦を強いられた帝国はリベールにハーメルの一件を口外しないという条件のみで終戦を申し入れた。国力差と国民の安全を考慮した女王はこれを受け入れるしかなかった。
真相
しかし、リベール軍の仕業ならば帝国が口外しないという条件を要求するのは不自然である。それもそのはず。
ハーメルの悲劇は帝国内の貴族将校達によって仕組まれたことだったのである。当時、平民出身の将校達が力を強め、自分達の権益が損なわれつつある事を良く思わない貴族達は戦争による武功を持って権力回復を図ったのである。が、問題は開戦の口実である。
中世期なら領土・資源目的の侵略も勝ちさえすれば不問とされた。だが、導力革命を経て国際法が制定された現代では、理由なしの侵略は認められなくなった。
そこで、リベールとの国境付近にあるハーメル村をリベール製の武器で武装させた猟兵くずれによって焼き討ちにさせ、村人を皆殺しにしたのである。(生存者の話やスピンオフ作品であるレーヴェ物語での描写から村にいた女性の中にはただ殺されるだけでは済まなかった者もいたようである。)
目論見通り、リベールへの報復戦争という名目で開戦にこぎ着け、ハーメルの悲劇を仕組んだ一人であるルドルフ・アランドールを筆頭にした貴族将校達が武勲をたてていった。しかし、戦争後期にハーメルの事件が露見し、実行した猟兵くずれは口封じに皆殺しにされ、それを仕組んだアランドールらも全員が極秘裏に平民出身の帝国軍准将ギリアス・オズボーンによって処刑された。後は、上述通りである。
この貴族達のあまりにも利己的な欲望から引き起こされた惨劇は最重要国家機密として徹底的に秘匿されることとなる。また、貴族達を処刑したオズボーン自身も、これらの暴挙を事前に察知して止めようとした矢先に貴族派の陰謀によって妻子を喪うという悲劇に見舞われている。
しかし、後にリベールや帝国、更にはクロスベルをも巻きこんだ事件に僅かに生き残ったハーメル村の子供が巻き込まれていくことなる。
その後のハーメル
ハーメルには慰霊碑が建てられた後、徹底的に封鎖された。当然ながらハーメルの周囲は立ち入りを禁止されており、入るためにはエレボニア王家又はサザーラント州の統括者であるハイアームズ侯爵家とサザーラント州の軍の上層部の許可が必要(不用意な他言無用が条件であり、口外した場合には反逆罪が適用される)。
七耀暦1206年の時点でハーメルに最も近い紡績町パルムの住民でさえも、一部の老人を除けば十年以上前までリベールとの国境沿いに村があったこと自体知らない程に情報は統制され、帝国内の資料にも村の名前でさえも殆ど記載されておらず、トールズ第Ⅱ分校の教官も百日戦役関連の資料で名前をうろ覚えでしか知らなかったほどである。
百日戦役の十年後に、リベール王国へ渡っていた生き残った子供が事件を知る帝国皇族の計らいで墓参りに訪れていた。後年にトールズ士官学院・第Ⅱ分校の生徒達や灰色の騎士と彼の仲間も口外しないという条件でこの事件を知り、帝国の闇を思い知ることとなる。
他の猟兵達の間でもハーメルの名前自体は曖昧ながらも、ハーメルを焼き討ちにした猟兵くずれは前述の所業から同じ猟兵からですら「一つの村を滅ぼした外道達」と蔑まれている。更には結社・身喰らう蛇の執行者や鉄機隊でさえも同じ執行者がハーメル出身であったこともあり、花を添えて村人達の死を悼むだけでなく、村の中を荒らさないように配慮していた。
リベール、帝国、クロスベルの英雄達だけでなく、結社の執行者達や猟兵達にとってもハーメルはあまりにも忌まわしく、哀しい場所であった。
また、ハーメルには霊脈があり、異常なまでに霊脈の乱れが起きた特異点になったり、精霊の道が開いたり、龍の霊場が出現したりした。
関連タグ
テイルズオブファンタジア:ハーメルという名前の町が登場し、本作と同じように壊滅させられている。こちらも生存者はほぼ皆無に近く、町に住んでいたとされる少女ひとりだけである。
真相の更に裏にある真実
事件の主犯となった主戦派であるが、実は事件当時帝国内において権力闘争に敗れ、後が無いものたちばかりであったという。
つまり自らの手でこのような大それたことを引き起こせるほどの力は無かったのである。
その彼らに対し結社の使徒が後々の計画の仕込みとして、アランドールらに猟兵くずれを紹介すると共に、生贄となる村をささやいた事実がある。これをリベールの若者達が知るのは十年後となる。
知られざる真実
だが、中世ならいざ知らず現代においては権力回復のための戦争を起こす口実で自国民を虐殺するというあまりにもリスクが高すぎるこの計画………しかも、仕組んだルドルフ・アランドールらは弱小貴族な上に平凡な人間で、後になり何故魔が差した、自分が信じられないと困惑していた。
これらの悲劇は1000年以上遡る帝国の呪いによって引き起こされたということが後に知られることとなる。それだけでなく、ハーメルより過去、そして後に起こる大小の悲劇の全てが。
もう一つの関連タグ
事件の関係者
猟兵くずれ:実行犯。事件発覚後に皆殺しにされ、猟兵達の間では面汚し・恥曝しとなっている。
ルドルフ・アランドール:事件の立案者の一人、事件発覚後秘密裏の軍事裁判により処刑。
ゲオルグ・ワイスマン:影の首謀者。当時落ち目で消えていくしかなかった貴族派に計画の発案や猟兵くずれの紹介をする。
ギリアス・オズボーン:エレボニア帝国宰相、当時軍の平民准将であり計画の妨げになる事を恐れた首謀者達によりハーメル実行前に自宅を襲撃され妻と息子を失う。その後ハーメルの後始末や停戦を行なった功績により宰相の地位につくようになる。
ユーゲントIII世:エレボニア帝国皇帝、国のためにこの事件を隠匿。その因果により後に凶弾に倒れる。
アリシア女王:リベール王国女王。一度は帝国軍を押し返したものの総力戦になれば勝ち目はないと考えていた中、帝国側よりハーメルの真相の黙認を条件に停戦を打診されたため自国民のために辛くもその提案を承知。そのため生き残りの一人であったレオンハルトから「俺を憐れむ資格はない」と一蹴される。聡明であるが為にハーメルの真相に気づいており、本人もその事は自覚している。
ハーメルの生存者
※生存が明らかにされていなかったヨハンを除く二人は情報漏洩を恐れた軍から口外しないように脅されていた。また、ヨハンを拾った行商もヨハンを手放すように軍と政府に脅され、ヨハンはその行商の行きつけの店に勤めていたホステスに託される。
ハーメルの犠牲者
ヨシュアとカリンの両親
ジャン エミリア(ヨハンの両親)
間接的な犠牲者
エステル・ブライト、アガット・クロスナー:ハーメルの虐殺がきっかけで起きた百日戦役でエステルは母を、アガットは妹を喪っている。彼らもハーメルの犠牲者の一人である。
レクター・アランドール:首謀者であるルドルフの息子。息子という立場上父の処刑後に軍の上層部から命を狙われていたようである。
ジョゼフ:かつては名うての狙撃手でルドルフの部下であった当時は帝国正規軍大尉。ルドルフの不始末によって軍を失業し、その後自堕落な生活を送るようになる。
オズボーンの妻と息子:当時帝国軍准将だったオズボーンの妻子。邸宅が猟兵崩れに襲われ、襲撃者はオズボーンが返り討ちにしたものの、妻子は犠牲となった。
ハーメルの真相を知る者達
ゼクス・ヴァンダールを始めとする当時からの帝国軍の重鎮。
フェルナン・ハイアームズ侯爵:四大名門の一人でハーメルがあったサザーラント州の統括者。
モルガン将軍やカシウス・ブライトといったリベール軍の重鎮。
リベール事件の解決者:女神の至宝を取り巻く戦いの中でハーメルの事件を知ると同時に、更にはソレが計画の仕込みの一環であった。当事者の一人がハーメルの生存者。
Ⅶ組:卒業後、帝国内部の動向を探る独自行動の最中にその真実を知る事となる。
トールズ第Ⅱ分校生:サザーラントの実習任務の際にそれを知る、生徒の一人であるマヤは前述に記載されたジョゼフの娘。さらにもう一人ハーメルの生存者がいる。
特務支援課:帝国のトールズ第Ⅱ分校に教官として出向していたランディ・オルランドがそれを知り、ロイド・バニングスとエリィ・マクダエルも帝国の動向を探る過程でその事件を知る。また、クロスベル独立国の大統領ディーター・クロイスとの問答でも『帝国がリベールへ侵攻する際に起こした悲劇』として聞いている。
結社:貴族達を唆したのが使徒の一人で、同時に生存者が執行者となっている。
???:ハーメルと同じく、何ら変哲も無い共和国の農村。しかし、ある意味でハーメル以上の大惨事に見舞われる。