概要
捕手は主にホームベースの後ろに座って投手の投げた球を受け止めるのが仕事だが、ただしゃがんで投手の球を受ければいいだけではなく、後述するように捕手のやることは多く、責任も重くなりがちである。漫画やアニメの影響で大柄な人物がやるポジションというイメージがあるが、体が大きいだけでは決して務まらない、難しいポジションなのである。
しかし、上手い捕手がいるということはそれだけ自分のチームを有利にできるということでもある。
なお、ブルペン(投球練習場)で投手の投球練習を補佐する捕手を「ブルペン捕手」という。
捕手に必要な大まかな事
キャッチング技術
捕手にとって最も重要な役目は「きちんと投球を捕球できる」ことであり、投球を取り損ねた場合は体に当ててでもボールを止めなければならない。特に、三塁に走者がいる状況で捕手がボールを取り損なうと、ホームを陥れられる危険がある。
捕手が頻繁にボールを取り損ねたり、後ろに逸らしていたりしていては投手は安心して投球することが出来ず、チーム全体にも悪い影響を与えかねないため、キャッチングの技術は捕手にとって何よりも重要な要素とされている。
ルールの熟知と視野の広さ
捕手は他の8人の選手と正対する位置で守備に就くため、プレー中はベンチの監督に代わって他の選手達に指示を出す現場監督の役割を担うことが多く、ダイヤモンドの形を扇に見立てて「扇の要」とも呼ばれている。
そのため、捕手は投手が投げる投球内容の組み立て以外にも様々なことに常時気を配っておかねばならず、状況に応じて臨機応変に対応できる冷静さが求められる。
しかし、MLBでは捕手のリードはあまり重要視されておらず、配球を考える事はベンチに居る監督・コーチの仕事のようである。
昨今は日本でもこの考えが浸透しており、高校野球で幅広く採用され、NPBでも横浜DeNAベイスターズのアレックス・ラミレス監督がこういったメジャー式の方針を采っている。
投手のリード
当然ながら、打者には速球に強い選手や変化球を苦にしない選手、長打力のある強打者や来たボールを逆らわらずに打つ巧打者など多士済々であり、ひとりとして同じ特徴をもつものはいない。捕手はこれらの打者の特徴を考慮に入れて投手をリードする必要があり、それらの対処法もシーズン中に変えることも要求される難しいポジションである。
怪我に負けない心と体
捕手は他の8つのポジションと異なり、マスクやプロテクター等の防具を装着して守備に就く。
これは捕手が他と比較して試合中に怪我をする機会が非常に多いためであり、至近距離で打者が振り回すバットやファウル、全速力で本塁に突っ込んでくる走者とのクロスプレー、さらには投手のピッチングミスなど、常に危険と隣り合わせである。
昨今ではコリジョンルール導入により危険なクロスプレーは減ったが、それでも危険はつきものなので、捕手にはそういった危険に負けない心の強さと頑強な肉体が必要不可欠なのである。
肩の強さと送球の技術
捕手には相手チームの盗塁を防ぐという仕事もあり、必然的に速いボールを投げる肩の強さと、ボールを捕ってから投げるまでの素早さ、そして正確なコントロールが要求される。
それらを兼ね備えた捕手が出場するだけで相手チームの盗塁を牽制する効果もある。
足腰の強さ
「捕手はデブでも鈍足でも構わない」というイメージが大きいが、これは大きな誤りである。ほぼ常時中腰で座りっぱなしの捕手にとって、足腰の柔軟さと強さはかなり重要であり、防具を着けたままでも俊敏に動けることが必須となっている。
そのため、外野手などの俊足強肩の選手が捕手にコンバートする事も増えてきている。
視力
隠れた適性として、視力のいい選手が捕手としても適性があると考えられている。かつての日本球界では、メガネをかけた捕手はプロで大成しないという固定観念があったが、1989年のドラフトでヤクルトスワローズに2位で指名された古田敦也が実力でその常識を覆したことにより、「メガネをかけた捕手=プロ失格」という風潮は次第になくなっていった。
捕手と打撃力
上述したように捕手は守備時の負担が大きいポジションのため、少しでも負担を軽くするために打順が少なくて済む下位打線に配されることが多く、打撃が悪くても評価に影響しない場合が多い。
故に、阿部慎之助や城島健司などのような強肩強打の捕手は大変貴重なのだが、大抵の場合は打撃を活かして一塁手や外野手にコンバートする選手が多い。近年での代表的な例は小笠原道大や和田一浩などが挙げられる。
捕手=右投げが常識とされる理由
野球では、捕手は右投げの選手にやらせるのが常識であり、現実はもとより、漫画やアニメ、ゲームなどでも左投げの捕手は非常に稀である。
何故左投げの捕手が少ないのかというと、偏に右投げより不利な面が多いからである。
例を挙げると
- 左投げの捕手がライン際の打球をミットで捕りに行く際、一塁側は体がファウルグラウンド側に向くため、バッターランナーと衝突してしまう恐れがあり、三塁側はフェアグラウンドに背を向ける状態になるため、走者や他の野手から一旦目を離さなければならなくなる。
- 競技人口的には右打者が多いため、左投げでは二塁や三塁への送球時に打者が邪魔になりやすい。特に、投手と正対した状態から三塁へ投げるにはどうしても体の向きを変えないといけないため、三盗などを防ぎにくい。
- 走者は捕手の左側から本塁に突入してくるため、ミットを右手に着ける左投げではタッチが遅くなりがちな上に無理な体勢になりやすく、利き腕をケガする危険も高い。コリジョンルールが導入された今日では、左投げの捕手は本塁の防衛がますます不利になったと言える。
こうした事情から、左投げの選手が捕手として起用されることはほぼ皆無であり、肩が強い左投げの選手は投手か外野手として育成されるのが一般的である。
一般に流通しているキャッチャーミットやプロテクターも全て右投げ用に作られており、左投げ用の物が欲しい場合は特注で作ってもらう必要がある。
ただ、盗塁がないソフトボールでは左投げでもあまり支障がないため、野球と比べて左投げの捕手を見かける機会は多い。