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ニシノデイジー

にしのでいじー

2016年生まれの日本の元競走馬・種牡馬。主な勝ち鞍は2022年・2024年の中山大障害(J・GⅠ)で、その他にも2018年の札幌2歳ステークス・東京スポーツ杯2歳ステークス(以上GⅢ)を制した。2024年JRA賞最優秀障害馬。
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概要編集

ニシノデイジー2016年生まれの日本の競走馬。

北海道・西山牧場生まれの2頭の優駿、セイウンスカイニシノフラワーの直仔を祖母に持ち、早くも2歳にして札幌2歳ステークス東スポ杯2歳ステークスの2つの重賞に勝利し注目を集める。

3歳時も日本ダービー5着など、クラシック三冠競走を完走した。


その後長らく苦闘が続いたが、試行錯誤の末に6歳となった2022年障害競走に転向。同年末の中山大障害で、GⅠ級競走初制覇を挙げて復活した。

その後2年間、障害競走の重賞戦線の常連として存在感を発揮し、2024年の中山大障害で2年ぶりの勝利を挙げ、J・GⅠ2勝目を花道に引退した。


プロフィール編集

馬名ニシノデイジー
欧字表記Nishino Daisy
生年月日2016年4月18日
性別
毛色鹿毛
ハービンジャー
ニシノヒナギク
母父アグネスタキオン
生産谷川牧場(北海道浦河町)
馬主西山茂行
調教師高木登(美浦)
主戦騎手勝浦正樹(平地)、五十嵐雄祐(障害)など
戦績32戦6勝(平地:20戦3勝、障害:12戦3勝)
獲得賞金3億3942万8000円(平地:1億2449万5000円+障害:2億1493万3000円)
主要勝鞍

母ニシノヒナギクの血統を辿ると、祖母ニシノミライは西山牧場を代表する2頭のGⅠ馬であるセイウンスカイニシノフラワーの間に生まれた産駒である。

ちなみに馬名の由来は「冠名(ニシノ)+すてきなもの」。「すてきなもの」がどういう物であるかは明かされていないが、どうにかしてセイウンスカイとニシノフラワーの血統を残そうと試み、自ら「狂気の配合」「逆玉の輿」とまで称した配合を実行した馬主の西山茂行氏のことを考えれば、おのずとその意味が分かるだろう。


戦歴編集

2018年(2歳)編集

2018年の7月8日に函館競馬場で行われた新馬戦で勝浦正樹を背にデビューするも2着。

続く7月21日の未勝利戦で初勝利。

9月1日に行われた札幌2歳ステークス(GⅢ)は6番人気ながら重賞初挑戦で初勝利。

続く東スポ杯2歳ステークス(GⅢ)も8番人気ながら重賞連勝を決める。

年末のホープフルステークス(GⅠ)では3番人気に推されたが、サートゥルナーリアアドマイヤジャスタに先着を許して3着に終わった。


2019年(3歳)編集

年明けは弥生賞(GⅡ)から始動し1番人気に推されるもメイショウテンゲンの4着に敗れる。

皐月賞(GⅠ)は見せ場のないまま17着の惨敗に終わるも、続く日本ダービー(GⅠ)は13番人気ながら5着に食い込み、地力の高さを証明した。


ダービー終了後は放牧に出され、秋はセントライト記念(GⅡ)から始動。最後の直線で追い上げるも5着だった。

菊花賞(GⅠ)は鞍上をクリストフ・ルメールに代えて臨み、当日も2番人気に推されての出走となった。しかし伸び悩み9着に敗れた。


結局、5戦中3戦で掲示板(5着以内)を確保する形でクラシックを終えることとなった。


2020年(4歳)編集

古馬としての初戦にはアメリカジョッキークラブカップ(GⅡ)を選択。田辺裕信との新コンビで挑むが6着に終わった。

続く金鯱賞(GⅡ)でも4番人気ながら6着、目黒記念(GⅡ)では18着のシンガリ負けと振るわない。

ここで鞍上を勝浦に戻して函館記念(GⅢ)に出走するも13着に留まった。


夏の函館をもってデイジーは10連敗。2歳からコンスタントに走ってきたが陣営はここでリフレッシュを選択し、秋は出走を回避することとした。


2021年(5歳)編集

休養明け初戦は東京新聞杯(GⅢ)に出走。初のマイル戦ということもあって期待がかかっていたが、13着に終わる。

続く新潟大賞典(GⅢ)でも伸び悩み12着。

エプソムカップ(GⅢ)では新たに鞍上に「穴男」として知られる江田照男を迎え、かつて勝利した東スポ杯以来の1800mに挑むが、18着シンガリの惨敗を喫し、5ヶ月間の休養に入った。


11月の復帰戦はなんと霜月ステークス(OP、東京ダ1400m)。2018年に初重賞挑戦初制覇を果たした札幌2歳ステークス以降、常に重賞にのみ出走していたニシノデイジーだったが、ここでオープン特別にグレードを落とし、かつ初のダート戦、距離も過去最短となる1400m戦と、低迷の打破に向けて大きなカンフル剤が打たれたのである。鞍上も内田博幸が初騎乗となったが、見せ場なく11着に敗れた。

さらにもう1戦、距離を1800mに戻してのダート戦ベテルギウスステークス(L)も12着。


2022年(6歳)編集

ダートに見切りをつけて芝に戻ったが、1月の白富士ステークス(L、東京芝2000m)12着。


ここでニシノデイジーは障害競走への転向に向け調教が進められることとなった。

4ヶ月を経て障害デビューとなった5月28日の未勝利戦(新潟2890m)。五十嵐雄祐を背に好位先行でレースを進め、一旦は先頭に立つ。最後は捕まり3着も、ホープフルステークス以来3年5ヶ月振りに馬券内に食い込んだ。

そして障害2戦目の6月19日未勝利戦(東京3000m)、2着に3馬身差をつけ快勝。東スポ杯2歳ステークス以来、実に3年7ヶ月振りの勝ち鞍を挙げ、障害オープン入りを果たした。


中山大障害編集

11月の秋陽ジャンプS(OP)2着を経て、年末の中山大障害への挑戦が決定される。陣営やオーナーはまずはオープン特別で障害2勝目をと考えていたようだが、五十嵐雄祐騎手が大障害で使うことを提案し、採用されたという。

障害未勝利戦の勝鞍のみで、障害路線ではGⅠはおろか重賞にすら未出走の挑戦者の立場だったが、復活への期待、またこれまでの障害3戦で1度も馬券を外してない安定感から単勝15.4倍の5番人気に推された。


このレースは障害絶対王者オジュウチョウサンの引退レースとして注目を集めていたが、五十嵐雄祐騎乗のニシノデイジーは最終周回に入ると先頭に立って後続を引き離し逃げ込みを図る。最後はリードを守って2着ゼノヴァースに3馬身差で勝利。


東スポ杯2歳ステークス以来、実に4年以上振りの重賞制覇で、初のJ・GⅠ勝利を挙げた。またセイウンスカイの子孫にあたる競走馬がG1勝ち鞍を上げるのは史上初であった。


なお、東スポ杯の優勝馬が中山大障害を勝利したのは、ゴッドスピード(1996年、当時の競走名は「府中3歳ステークス」)以来2頭目である。


ニシノデイジーが生まれたのはオジュウチョウサンが初めてG1勝利した2日後。絶対王者の始まりと共に生まれた馬が、絶対王者に引導を渡すという点でも実に印象的な勝利である。

また、JRA賞では最優秀障害馬への選出を期待する声は多かったが、オジュウチョウサンにわずか一票の差で破れ、惜しくも受賞はならなかった。

しかし、あの障害界のレジェンド・オジュウチョウサンに入障1年目の馬が肉薄するということは、障害界のホープとしての期待を証左するものに他ならないだろう。


2023年(7歳)編集

新たな障害王者として迎えた2023年だが、次走となる阪神スプリングJでは五十嵐騎手が交代する事になった。

GⅠ勝利コンビを敗戦したわけでもないのに交代するという異例の事態だが、コレは五十嵐騎手が同レースでミッキーメテオに騎乗する先約を取り付けており、馬主の西山氏に相談した結果。

下手な憶測が出回る前に、西山氏からこの経緯の発信も行われた。


そして五十嵐騎手に変わってデイジーの鞍上を任されたのは、なんとオジュウチョウサンの相棒であった石神深一騎手。オジュウチョウサンの引退により予定が空いていたため、前王者の騎手が現王者の鞍上を任される事となった。


本番では1番人気に押されたが、道中行きたがる悪癖が出てしまい、掛かって折り合いを欠き、障害での飛越ミスも目立った。終盤の勝負所では疲れからかスピードが乗らず3着に終わった。

しかし、テン乗りでの騎乗でありながらも石神騎手の騎乗が冴え、追いきれなかったもののデイジーも3着に残るなどその能力の高さをうかがわせた。

次走は春の障害王決定戦・中山グランドジャンプに出走。

少頭数の10頭立てで行われたレース本番では大きく出遅れてしまったところを、重馬場の中で無理矢理上がっていき、それでスタミナが切れてしまったのか、最後はふらついてしまったが、どうにか完走し9着で無事レースを終えることができた(1着イロゴトシ、2着ミッキーメテオ)。


秋は五十嵐騎手に鞍上が戻り東京ハイジャンプに出走するも、これも重馬場に苦しみ後ろで何もできずに11着。なお、中山GJ覇者イロゴトシも6着と、障害競走が戦国時代へ突入したかに見えるような形となった。


連覇のかかる中山大障害は3番人気で迎える。この日は良馬場にも恵まれ、テンから好位を確保し、逃げを打ったビレッジイーグルに中盤で競り掛け、先頭を奪取する。しかし、背後の3番手で機をうかがっていた1番人気のマイネルグロンに最終周回の向正面で捕まり、最後は10馬身ちぎられ2着。とはいえ、積極果敢な内容でレースを引っ張り、3着エコロデュエルにも6馬身差をつけて連対。この一年間勝利を挙げることは出来なかったものの前年覇者として意地を示す内容で2023年を終えた。



2024年(8歳)編集

8歳となった初戦の阪神スプリングジャンプでは中山大障害と同様、好位を追走すると、道中でネビーイームをかわして先頭を立つが、中団に控えていたマイネルグロンのスパートに捕まると、そのまま15馬身ほど離される4着に敗北。


そして春の大一番、中山グランドジャンプ。新星マイネルグロンが単勝1.1倍の絶大な支持を受ける中、前年覇者イロゴトシに次ぐ3番人気。レースは果敢に先行し、大竹柵障害で先頭を奪うも、残り1000m付近でイロゴトシの仕掛けに屈し3着。前年覇者のプライドの前に惜しくも敗れることとなった。


昨年と同じローテーションで挑んだ東京ハイジャンプ。マイネルグロンが中山GJ後に右前深屈腱炎を、イロゴトシも9月に左前浅屈腱炎をそれぞれ発症してしまい戦線を離脱。その穴を埋めるように台頭してきた中山GJ2着のジューンベロシティが本命視された前哨戦。後方に控える競馬から2周目の3コーナーで追い出し体勢を見せるも、ジューンベロシティの逃げ切りに及ばず4着。

これにより重馬場に泣かされることもあったが、障害転向4戦目で絶対王者を下した中山大障害からまる2年もの間勝利から遠ざかっていた。


そして迎えたのはかつて栄光を手にした中山大障害。9頭立ての少頭数とはなったが、前哨戦を逃げ切ったジューンベロシティ、驚異的な回復力を見せ、屈腱炎からわずか7ヶ月で復帰したマイネルグロン、東京ハイジャンプで鋭く2着に食い込んできたエコロデュエルに次ぐ4番人気。ここまでが単勝10倍を切る大混戦模様となった。

ジューンベロシティをマークするような位置で競馬を進めると、最後の3号坂路で勝負に出て坂路の上りでハナを奪い切ると、最終障害飛越後は後続を突き放す一方。

連覇を狙ったマイネルグロンが最終障害で躓き落馬(他2頭も落馬競走中止)するアクシデントもあったが、直線ではエコロデュエルの追い込みを歯牙にも掛けないセーフティリードでゴール板を駆け抜けた。

2年ぶりの復活勝利をJ・GⅠ2勝目という形で挙げ、見事に王座を奪還してみせた。


なお、口取り式では西山オーナーの粋な計らいで、勝利騎手の五十嵐騎手ではなく、この年騎手を引退したかつての平地時代の主戦であった勝浦正樹元騎手が跨っている。



引退・種牡馬入りへ編集

中山大障害の翌日、2024年12月22日

この日開催された有馬記念にファンが沸いてからしばらく経った後、西山オーナーのブログにおいて引退が発表された。

西山オーナーによると、東京ジャンプステークス4着の時点で引退を検討していたものの、主戦である五十嵐騎手が調教師試験に落ちたと言われたことから一旦は来年までの現役続行を決定。11月に左前脚に熱感が生じたものの、翌日には収まったことから大障害に出走させて勝利したが、翌日に脚部に相当な疲労が溜まっていると報告されたため引退を決め、高木調教師もその旨を了解したという。


年が明けた2025年1月7日、2024年度のJRA賞が発表され、ニシノデイジーは2位以下に大差を付けて最優秀障害馬を受賞し、見事に花道を飾るのだった。


引退後は西山牧場で種牡馬入り。オーナー自身に「狂気の配合」とまで称されながらも、遂に大輪を咲かせたこの馬は新たな戦いの道に進むこととなる。

セイウンスカイとニシノフラワーという、西山牧場を代表する2頭の血を継ぐのもそうだが、実は父のハービンジャーは後継種牡馬にはかなり恵まれておらず、それもあって数少ない後継種牡馬としての役割も担うこととなった。

  • ハービンジャーが来日した大きな要因は「薄め液」と称される、サンデーサイレンスキングカメハメハなどの日本の主流血統が煮詰まった牝馬の相手をしても近親交配にならないようにする役割があった。それ故にハービンジャー直仔はそれらの主流血統を受け継ぎがちで、血が濃くなりすぎて親の役割を代替できないという問題があった。有馬記念を勝ったのに種牡馬になれなかったブラストワンピースがその一例だろう。
  • 一方、ニシノデイジーは主流と言える血がアグネスタキオンを経由する曾祖父サンデーサイレンスくらいで、ある程度サンデーの血が混じった馬ともリスクの少ない交配が可能である。その希少性故に、父のポジションをある程度継承できるのでは?と指摘されていた。

種牡馬としてその希少な血統を後世に繋ぎ、そちらでも大輪を咲かせることが出来るか?

ニシノデイジーの戦いは第二幕へ。「すてきなもの」を探す旅はまだまだ続くようである。


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競走馬 19世代 セイウンスカイ ニシノフラワー フラウンス

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