概要
藤子・F・不二雄のビッグコミックで発表されたSF短編漫画。アニメ化もされている。
牛型の宇宙人が人型の家畜を飼っている星に漂着した、地球人の宇宙飛行士のお話。文化や倫理観など人による価値観の違いと、人類に対する強烈な皮肉が込められた作品。宮沢賢治の『注文の多い料理店』の対になる内容である(もしかしたらF先生のことだから美少女捕食シーンが描きたかったのかもしれないという可能性も存在)。
直接的なグロシーンは全くないが、設定的にはかなりグロいので繊細な人は注意。
この作品が発表されたのは1969年と、ドラえもん以前の作品であるにもかかわらず、50年以上たった今でも高い評価を受けている。
あらすじ
宇宙飛行士の主人公は、「イノックス星」に不時着し、美少女ミノアと出会う。
ところがミノアは実は人型の食肉用家畜で、彼女らを飼育しているのは牛型の宇宙人だった。
ミノアに好意を抱いていた主人公は驚愕しつつも彼女を助けようと奔走するが、「おいしく食べられること」を誉れと考えている彼女とは話が噛み合わない。
そしていよいよミノアが祭りで食べられる日が近づく……。
登場人物
- 主人公 (CV:古川登志夫)
原作では名無し。アニメ版では小笠原事件が由来だろうか「立花」という苗字がついている。ビーフステーキが好物。
宇宙船で事故に遭い、たった一人生き残ってイノックス星に不時着。助けてくれたミノアに惚れ、ズン類に食べられる事になった彼女を助けようと奔走する。
原作版は21エモンの主人公(原作版・1981年映画版デザイン)に似ているが、アニメ版はスネ夫を少し丸くした様な顔つきをしている。
主人公を助け、彼と交流を持つ人型の美少女。
イノックス星の家畜「ウス」の中でも特に最高級とされる育ちで、本人もおいしく食べられる事を誇りに思っており、逃げるよう説得しつづける主人公とはまったく会話が噛み合わない。
おそらく名前の由来はクレタ島に栄えたミノア文明からだと思われる。
本作での設定
- イノックス星を支配しているのは牛のような容姿の「ズン類」で、人間のように見える「ウス」を食用、愛玩用などの用途で飼育している。
- 「ズン類」はおおむね理性的かつ文化的だが、宇宙船を飛ばす程の文明はまだない。一方で、「ウス」をおいしく食べるための「活け造り」の技術を発達させるなど、妙なところで高いテクノロジーを持つ。
- 地球人と酷似した「ウス」は言葉も通じ感情もあり、服なども着ているが、自分達が食べられる存在である事に疑問を持っておらず、むしろおいしく食べられることを誇りと考え同族で競い合っている。特に大祭の時に食べられる「ミノタウロスの皿」に選ばれることはウスとしての最高の誉れであり、逆に等級が落ちてハムやソーセージは食べられるだけまだマシだが、食べてすらもらえず肥料にしかならないことを死以上の屈辱と考えている。
- 全てのウスが食べられるわけではない。おおまかに「食用種」、「愛玩種」、「労働種」の3つのタイプに別れており、5月に「ウスの愛護週間」なるものがあり、「ウスを虐待した者には重い刑事罰が下る」など、ウスの権利もしっかり尊重されている。したがって、ズン類とウスの関係は総じてきわめて良好といえる。
- そう考えると、相手の立場を考えていないのは立花であることになる。
- ちなみに元ネタになったギリシャ神話のミノタウロスは肉食の怪物とされている。ただし、こちらはズン類とは異なる生贄に捧げられた子供を買う凶暴な怪物である。
関連項目
のび太の魔界大冒険 主要キャラが人肉料理にされかけるシーンがある。