概要
神奈川県川崎市の中心地をなす行政区。区域には工場や中小建設企業が集まっており、競馬場、競輪場といった高度経済成長期の労働者が憩いとした公営競技施設が存在感を放つ。近年は川崎駅周辺の再開発を進め、駅前では催事や路上パフォーマンスが盛んに行われている。
年末年始に多くの参拝客が訪れる川崎大師や、京浜工業地帯としてコンビナートや流通拠点がある港湾地区もあり、区内の情景は多様に富む。道路は川崎駅から放射状に形成されており、大型車が通りやすいよう道幅は広めに区画整備されている。
多様性文化地域として
明治や大正の頃は海苔や梨の田園風景が広がる現川崎区内だったが、昭和初期に京浜工業地帯の一角として様々な産業の大工場が林立する地域となった。同時に出稼ぎの労働者としての街としての生活が強くなったものの、第二次世界大戦中は労働者不足を補うために朝鮮人労働者が多く動員された。
戦後、桜本などに定住した外国人労働者【在日朝鮮人(在日韓国人とも)】は日本人からの差別にさらされながら、独自コミュニティを形成して高度経済成長期には国内のインフラ産業に支えた。バブル期になると、増産至上主義を掲げる日本の大企業は南米や東南アジアより人材を招いて工場労働に従事させ、首都高速神奈川1号横羽線沿いの地域には外国人労働者の住宅地が形成された。
そのため、わざわざ川崎区内に足を運んでヘイト発言をする団体が押し掛けるようになり、川崎市としても重大な人権問題に発展した。2019年12月に川崎市議会でヘイトスピーチ禁止条例が成立されて以降は、区内の外国人交流施設に脅迫状を送った川崎市元職員に実刑判決が下されるなど取り締まりが厳格化されている。
文化面でも外国人差別へのカウンターカルチャーが深く根付き、日本のヒップホップ界を先導する地域としての性格も強い。メンバーが外国人ルーツを持つヒップホップグループ『BAD_HOP』などが、川崎駅近くの商業施設チネチッタを拠点にライブパフォーマンスをしている。