「さあ、懺悔なさい」
「もしも、やり直せるならば」
概要
七つの大罪シリーズの最後、「憤怒」を飾った人物。モデルはGUMI。
主な登場楽曲は「ネメシスの銃口」「最後のリボルバー」。シリーズ内で唯一、「罪」と「罰」の両方を一人で担当した。
他に「そして少女は狂い出した ~終末月夜抄~」「master_of_the_hellish_yard」なども歌う。
彼女が所持する憤怒の器(大罪の器)は、ナイフや毒など形を変えてシリーズ全てに登場しており、悪ノP曰く「いずれの時代においても、(憤怒の)器の持ち主は他の「大罪の器」の保持者を殺そうと目論んでいる」とのことだった。(公式ガイドブック「悪ノ円舞曲」より)
ネメシスはその器の悪魔と、自身も知らないうちに契約してしまっていた。
少女時代
E.C. 964年、カヨ=スドウの一人娘として誕生。千年樹の森にある廃屋で生まれ育つ。
「父」の顔は知らず、「母」は脚本家という職業柄、頻繁に(時には数年単位で)家を空けていた。「母」を待ちながら、時折貰うお土産や仕事先での体験談を楽しみにしていた。
「母」の友人であるニコライ=トールからは、森での生活の仕方や魔術の勉強も受けていた。
魔術に関してはあまり素養が無かったので氷を操るくらいがせいぜい。
なお「母」の料理は良い……とは言えず、泣きそうになるのを堪えつつ完食していた。その分プレゼントのセンスは抜群で、クリスマスにプレゼントされたジズ・ティアマの「ジズさん」にはとても懐かれている。逆にニコライは料理が非常に上手く、プレゼントのセンスは最悪だった。
本人は覚えていないが、「ジズさん」をプレゼントされた日、夢の中でジズさんから「僕と友達になってよ」と語りかけられ、「うん」と答えたらしい。
タイタニス号事件の発生
14歳。この頃になると手持ちの水槽ではジズさんのサイズが合わなくなり、ニコライの住む千年樹の森の洞窟へ度々預けに行っていた。
ネメシスは不良グループ『ゼウス』に所属。次第に恐喝や暴力などの悪事に手を染める。警察の厄介になるほどではなかったものの、ニコライから諫められると「学校なんて退屈」「お説教なら結構」と反発していた。
ゼウス自体は、フリージス財団の影響で貧民街に追いやられたエルフェ人の子どもが集まって出来たグループ。ネメシスは(少なくとも「母」は蛇国人である為)純粋なエルフェ人でなかったが、それにも関わらず仲間たちが受け入れてくれたことに感謝していた。
転機が訪れたのは、ゼウスメンバーの一人がある日、アケイドの北区(高級住宅街)で死体となって発見されたこと。殺したのは敵対グループ『ハデス』のリーダー、ミダス=ダッチであった。
復讐の機会を窺うメンバーに、「カンディ」と名乗る男性が現れる。彼もミダスに因縁を持ち、利害の一致したゼウスはカンディの誘いに応じて、ミダスの乗る高級旅客船「タイタニス号」から金塊を奪い取る計画を立てた。
しかし作戦は失敗。ゼウスメンバーの一人は海上でミダスの用心棒に殺害された。船にはミダスの他にも政財界の大物ばかりが乗り、このままいけばゼウスは警察に突き出されるか、あるいはミダスに皆殺しにされるかの二択となった。
頼みの綱であったカンディも、その正体はゼウスメンバーを貧民街へ追いやったフリージス財団の幹部・ビンディ=フリージス。ビンディはただゼウスを利用していたに過ぎなかった。
このままいけば最悪な形でゼウスが終わり、ようやく出来た居場所を失ってしまう———焦るネメシスの内側からそのとき、知らない女性の声がした。
委ねよ
全てを己の感情に委ねよ
声に導かれたネメシスは、ジズさんを使い、乗客ごとタイタニス号を海に沈めた。
こうしてゼウスは助かった。しかし凄惨な現場を目の当たりにしたメンバーは、ネメシスに対して恐ろしい物を見るような目を向けてしまう。
仲間として受け入れてもらったことを感謝していたネメシスは、結局大切なものを失った。
なおこの事件がきっかけとなり、とある男が悪の道へ落ちることとなった。
(正確には事件そのものではなく、男の最も大切にしていたものをちらつかせた人物が原因)
タイタニス号事件・その後
ミダスが海に沈んだことで予定通り利益を得たビンディは、世界警察に圧力をかけ、ゼウスが捕まらないよう手を回した。
タイタニス号事件は表向き、ただの事故として処理される。しかし世界警察と対立する暗星庁、そしてその内部に属する特殊組織・Police Neutrality———通称『PN』はこれを疑問視。とはいえ確たる証拠がない以上、彼らも表立って動くことは出来なかった。
そこで動き出したのが『PN』の裏組織、大昔の犯罪組織から名前を借りた『ペール・ノエル』。
事件発生から半年後、ネメシスはペール・ノエルに捕まった。
森で捕まったネメシスはニコライに助けを求めたものの、ニコライは湖の水を全て凍らせ、ジズさんを封じ込めた上で、ネメシスを捕縛したペール・ノエルにゼウスメンバーの居場所を教える。
ニコライはネメシスがタイタニス号事件を起こしたことで、ネメシスを見限っていた。
(ただし、後に決してそれだけでは無かったことも仄めかされている)
なおこの翌日、とある男が『強欲』の器に宿った存在と契約した。
タイタニス号事件・3年後(17歳)
ネメシスやゼウスが捕まったことで、タイタニス号事件の黒幕・ビンディ=フリージスも逮捕され、裁判を受けていた。裁判を担当した暗星庁長官・ガレリアン=マーロンは、しかし悪として初めて行ったこの裁判で、ビンディに無罪判決を下した。
判決後、ビンディの呼び掛けにより、ガレリアンはゼウスメンバーを刑務所内で皆殺しにする。
しかしネメシスだけは、事前に ブルーノ=ゼロに連れ出され密かに生きていた。ブルーノはガレリアンの部下であったが、ガレリアンに無断でネメシスを連れ出していた。
ブルーノがネメシスを連れ出した理由を語ることは無かったが、小説版「ネメシスの銃口」では、その理由を察した人物もいる。
ブルーノと同じペール・ノエルの一員であるシロ=ネツマの元に預けられたネメシスは、シロから銃の扱い方を学ぶ。ここでネメシスには、優れた銃の才能があったことが判明。
やがてネメシスはペール・ノエル『No.8』のコードネームと共に、暗星庁及びPN(表側の組織であるPolice Neutrality)の裏側(ペール・ノエル)の「仕事」が与えられるようになった。
最後のリボルバー
公的な記録では死亡しているネメシスは、「テミス=エイト」という偽名を与えられ、ペール・ノエルの「仕事」の一環でルシフェニア共和国のロールド市に引っ越してきた。
新しい部屋の窓からは、美しい桜の大樹が見えていた。
桜の木の下に向かったネメシスは、ニョゼ=オクトと出会った。
ニョゼ(ガレリアンの策略により投獄されたところを脱走したため、シャクソンの偽名を使う)と恋に落ちたネメシスは、やがてニョゼに告白され正式に付き合い始める。
警察官のニョゼと暗殺者である自分の大きすぎる違いに悩みながらも、ネメシスは心からニョゼを愛していた。が、正式に付き合い始めてからしばらくして、彼の秘密を知ってしまう。
ニョゼは、ネメシスがペール・ノエルから命令された暗殺対象(つまりはガレリアンにとっての邪魔者)の最後の一人であった。さらにニョゼはガレリアンと敵対しており、その過程でネメシスの正体も知っていた。
ニョゼもネメシスも、お互いの秘密は隠したまま恋人関係を続けていたが、クリスマスの少し前、とうとうブルーノがニョゼの存在に気付く。これがペール・ノエルのMASTERに伝わり、ネメシスは年内にニョゼを銃殺するよう命じられた。
銃口を向けながらも、どうしてもニョゼを殺したくないネメシスは、ニョゼに一緒に逃亡しないかと持ちかける。しかしニョゼは「お互いに守るべきものがある」として、ネメシスが父親のために暗殺を行っていたことも自分は知っていたと明かす。
ネメシスにとっては晴天の霹靂だった。ニョゼがネメシスを気遣って口にした言葉により、逆にネメシスは、自分に暗殺を命じていた人間が、自分の父親であることを知ってしまった。
(ただしガレリアンはこの時点でネメシスが自分の娘と知らず、そもそもペール・ノエル『No.8』の顔すら知らない。全てを知っていたのはブルーノ、及びガレリアンを大罪契約者にした人物)
感情を抑えきれなくなり絶叫したネメシスの内側から、タイタニス号事件を起こしたときと同じように、『もう一人の自分』の声がした。
委ねなさい。
自らの内なる感情に。
そして——―全てを滅ぼせ。
錯乱したネメシスは、しかし直後ニョゼに力強く抱きしめられたことで、自分でも信じられないほど冷静さを取り戻す。(七つの大罪シリーズにおいて、『悪意』に呑まれた人物がすぐに正気を取り戻すのは稀有な事例である)
ネメシスがニョゼを愛していたように、ニョゼもたしかにネメシスを愛していた。
ニョゼから身体を離したネメシスは、泣きながら銃口を向ける。「愛しい人」を殺したネメシスは、続けて自分のこめかみに銃口を当てた。
ネメシスが最後にニョゼに向けたのは「ごめん」という言葉。(楽曲「最後のリボルバー」ではカタカナ、小説版「ネメシスの銃口」ではひらがな表記)
一方、ニョゼがネメシスに向けた言葉は楽曲・小説共に明かされておらず、二人だけの秘密となっている。
もしも、やり直せるならば。———それがネメシスの受けた「罰」だった。
しかし…
銃口をこめかみに当て、確実に死ねる状況だったにも関わらず、自殺を図った数十分後にネメシスは目覚めた。
ネメシスの前には憤怒の悪魔・セト=トワイライトが姿を現す。ネメシスはそこで、自分が少女時代からの大罪契約者であったことをセトに明かされた。
セトは憤怒の器である黄金の鍵の姿の他、青いタコ(ジズ・ティアマ)の姿も持つ。それはネメシスが大切に飼っていたペット「ジズさん」であり、少女時代に夢の中でジズさんから「友達になってよ」と語りかけられた頃から、大罪の悪魔との契約は始まっていた。
(ただしタイタニス号事件やニョゼ殺害前にネメシスに語りかけてきた人物は、セトとはまた別の存在。後にある人物は、セトを「事態をややこしくしていた」と非難している)
契約解除を求めたネメシスに、セトは「それでもいい」とは前置きした上で、「本当にそれでいいのか?」と問いかける。
契約解除すれば死ぬことは出来る。死ねば恋人の後を追うことは出来るが、ネメシスの人生は、他人から翻弄され続けたものとして終わってしまう。本当にそれでいいのか、と。
友人、もしくは悪魔から提示された重すぎる問い掛けに、すぐには答えが出せないまま、ネメシスは翌日ひとまず桜の木の部屋から逃げ出し、ルシフェニアの南へ向かった。
レタサンの町に到着したネメシスは、亡きニョゼの弟・ガモン=オクトに確保される。
ガモンが所属するエルフェゴート国の政党・タサン党に連行されたネメシスは、話し合いの結果、説得を受けてタサン党のメンバーに加わった。
セトもガモンも、ネメシスに「生きろ」「逃げるな」と言う。ネメシスはそれに従った。
後にネメシスの精神を分析した研究者は、彼女のこうした性質を「主体性のない、弱い人間」「常に誰かに導かれるままに人生を送り、自身もそれを認識していた」と評している。
悪徳のジャッジメント・ネメシスの銃口
タサン党の仲間に加わったおよそ半年後(E.C. 983年2月)、ネメシスに銃を教えた師でもあるシロ=ネツマが、トニー=オースディンの錯乱に巻き込まれ死亡する。
ペール・ノエル自体は嫌っていたものの、シロのことは慕っていたネメシスは、7月、彼女の墓参りをする。同時にトニーが暗星庁の裁判によって無罪判決を受けたことを知らされる。
トニーを無罪にした裁判官は、シロにとっても仲間であったはずのガレリアン=マーロンだった。
8月。レヴィアンタ内乱が発生し、ネメシスはトニーを銃殺。その足で暗星庁へ向かった後、ガレリアンの自宅へ到着したネメシスは、ついにガレリアンと対面した。
ネメシスが見たのは、人形に話しかける男の姿。
人形の名前はミッシェル。ガレリアンと正妻の一人娘であり、タイタニス号事件のとき、ネメシスが海に沈めた乗客の一人であった。
絶望の末、ネメシスは憤怒の器・グリムジエンドの銃弾を用いて、自身と同じ大罪契約者であったガレリアンを銃殺。
しかし自分の存在など知らなかったはずのガレリアンは、ネメシスの銃弾を受けた後、「それでいい」「ありがとう——―ネメシス」と呟く。
実はガレリアンは、ネメシスが屋敷に入る少し前、『強欲の器』に宿った存在から強制的に契約を解除されていた。さらには自身を出生時から観測していた存在に気付き、「観測者」からブルーノ及びMaが隠し続けていた事柄を教えてもらう。
ネメシスがガレリアンの元を訪れるまさに直前、ガレリアンは自分にもう一人の娘———ネメシスが存在することを知ったのだった。
消えていく仲間
レヴィアンタの内乱から1年後。20歳になったネメシスは、ついに表舞台へと戻った。
同時に6年前、14歳の頃に起こしたタイタニス号事件の罪を問われ、刑務所の中にいた。(最も形式上のもので、タサン党の力によってすぐ恩赦が下る予定となっていた)
かつてのガレリアンと同じく司法を歪めることに複雑な気持ちになりながらも、刑務所を出たらタサン党とエルフェゴート国のために尽力しようと決意する。
鉄格子の隙間からは満月が覗き、昼間には桜も見える牢獄で、ネメシスはふと、3年前天国へ行った恋人が今の自分を見たらどう思うのだろうと考えていた。
釈放されたネメシスは、タサン党によって副党首の地位を与えられた。党首はガモン=オクト。
それから数年。権力者となったガモンの元に、かつてガレリアンに奪われた家宝の刀・ヴェノム・ソードの情報が入って来た。
この頃のガモンは自らの身体に宿る忌まわしき『呪い』に苦しめられ、まともに仕事ができる状況ではなくなっていた。
(呪い自体は、兄の生存時から発生していたが、当時はまだ「時折、正気を失いそうになる」という程度だった。兄の方もヴェノム・ソードを「妖の宿りし刀」と認識しており、ガモン同様退魔の印を刻んでいたが、彼が『呪い』にかかっていたかどうかは不明)
兄が愛した人であるネメシスを傷つけることは避けたかったガモンは、呪いを解くため、ガレリアンが生前に収集品をコレクションしていたという「映画館」へ向かう。そのまま失踪したガモンを捜し、ネメシスも「映画館」へ向かった。
「映画館」は、少女時代ネメシスが暮らした森の廃屋を壊して建てられたもの。25歳になったネメシスが訪れた千年樹の森は、かつてと真逆の禍々しい森・EVILS FORESTと化していた。
赤いドレスの女や双子からどうにか逃げてきたネメシスは、ガモンを諦めざるを得なくなり、仕方なくタサン党へ帰ることにする。帰路に着く前、呼び止められたネメシスは、かつての保護者・ニコライ=トールと再会した。
タイタニス号事件でペール・ノエルに引き渡されたときから、11年ぶりのことであった。
ニコライの屋敷を訪れたネメシスは、しばしの会話の後、ニコライから自身の殺害を依頼される。
戸惑うネメシスであったが、ニコライ自身がそれを望み、幼い頃の自分を見守ってくれた恩に報いるため、また11年前の復讐のため、恋人や父親を殺したのと同じ銃でニコライの命を終わらせた。
銃殺前、一粒ぐらい自分のために涙を流してくれたらもっと嬉しいと語ったニコライに対し、ネメシスは答えた。
「泣きながら人を撃つのは、もうしないって決めてるの」
清算の記憶
ガモンの失踪により、ネメシスはタサン党の党首となった。
民衆から見れば、悪徳裁判官ガレリアン=マーロンを打ち倒したネメシスは人気の高い存在であり、やがて国内外の支持を集めたネメシスとタサン党はエルフェゴート国の政権を奪取した。
エルフェゴート国の総統(「独裁者」とも記載されている)となったネメシスは、かつての王女とは逆に、ルシフェニア共和国への侵攻をエルフェゴート軍に命令した。
制圧後も戦火は止まらず、やがてエルフェゴートはほとんどの国にとって敵となる。
各国に対抗するため、ネメシスはセトの知恵を借り、千年前(つまり原罪物語の時代)から残されていた太古の遺産・『少年』を利用。実用的な武器『罰』として改良し、千年樹の森、次に蛇国の鬼ヶ島を焼き尽くした。
この事態を重く見て、ネメシスを止めるため動き出したのが、かつてネメシスを暗殺者にした張本人・ブルーノ=ゼロと『PN』メンバーであった。
ある日の軍事会議の後、タサン党の自室で水槽にいるジズさん(小説版「ネメシスの銃口」では、この時点で少女時代から30年以上が経過している)を眺めながら、ネメシスはかつて恋人と語らった一時を思い出す。
今では遠い過去となった記憶に蓋をした直後、タサン党を襲撃に来たブルーノと再会した。
ネメシスとブルーノが実際に会うのは、ネメシスがルシフェニア国ロールド市に潜伏した17歳の春以来。十数年ぶりの再会となったネメシスは、命の恩人であり、今の自分を形作ってくれた人でもあるブルーノに、微笑みながら銃口を向けた。
引き金を引いてブルーノの血しぶきを顔中に浴びながら、心からの満足感を得ていたネメシスは、『悪意』に支配されつつあった。
そして少女は狂い出した
千年樹の森が消えたことで、今度は無事「映画館」へ辿り着いたネメシスは、ついに母親・Ma(カヨ=スドウ)と再会する。
『少年』のこと、ブルーノのこと、ニコライのこと。話をしていくうちに、やがてネメシスはMaから、少女時代の真の記憶を突き付けられた。
Maは、ネメシスを産んで以来、実は一度もネメシスの元を訪れたことは無かった。
(ネメシスが暮らす森の廃屋へ足を運んだことはあるが、それはネメシスがタイタニス号事件でペール・ノエルに連行された後のことである)
少女時代のネメシスが回想していた、
「数年単位で家を空けることもあるが、たまに帰って来ては仕事先の話を聞かせてくれた」
「料理は下手だけどプレゼントは抜群」
「着物の帯の結び方を教えてくれた」
などの記憶。
それらは全て、全くデタラメの記憶だった。
もちろん、クリスマスに「ジズさん」をプレゼントしてもらったというのも嘘の記憶。捏造された記憶は、ネメシスの精神を壊してしまわないよう、周囲からもあえて訂正されずにいた。
楽曲「そして少女は狂い出した ~終末月夜抄~」では、ネメシスが本当はどのような少女時代を過ごしていたのかについて窺い知ることが出来る。
あまりの事実に呆然とするネメシスだったが、続けてMaはネメシスの首を絞め殺そうとする。
大罪契約者であるネメシスは、通常死ぬことは無い。しかしガレリアンが収集した「大罪の器」の悪魔たちを体内に取り込んでいたMaは、大罪契約者を超えた存在となっており、ネメシスを殺すことが可能だった。
ネメシスを殺せば、Maはネメシスが契約した憤怒の悪魔も取り込むことができる。
窮地を脱した後、全てがどうでもよくなったネメシスは、Maに銃口を向け、悪魔殺しに特化した大罪の器である黄金の弾丸を使用してMaを銃殺。
ネメシスはとうとう『悪意』に堕ちた。
master of the hellish yard
E.C. 1000年(ネメシス36歳)。『悪意』に支配されたネメシスは、少女時代から幾度と聞いた『もう一人の自分』の声に従い、禁じられた装置のスイッチを押す。
それはエヴィリオス全土に照準を定めた兵器『罰』の装置。黄金の鍵を差し込んだネメシスは、かつてとある男が一国を滅ぼしたときのように、世界を滅ぼした。
ネメシス自身はこれについて、「世界を壊した」ではなく「『エヴィリオス』という地獄を壊した」と認識している。(楽曲「master of the hellish yard」・小説版「七つの罪と罰」より)
世界が滅んだことで、地上と冥界(hellish yardと呼ばれる死後の世界)の境界もなくなった。
文字通り全てが消えた地上の大地は、天界(heavenly yard)にいた魂も引っ張ってきてしまう。そして、かつて地上に暮らした人々の記憶が、幻となってあちこちに投影されるようになった。
この状況を受け、地上を見守っていた者は「イレギュラー」と呼ばれる存在を地上に降ろす。
かつての歴史が再現されたような幻の地上を巡り、最後に「イレギュラー」は、ネメシスの姿を発見する。
大罪契約者は、通常の方法で死ぬことはできない。『罰』によって世界が滅び、身体が吹き飛んでしまおうが、肉体の欠片でも残っていれば、いずれ身体は再生する。
「イレギュラー」が見つけたネメシスは、他の魂たちと異なり、生きた人間のままだった。
ネメシスは全てが死に絶えた大地で、たった一人生き続けていた。
しかしさすがに無事とはいかず、19歳前後の姿に戻っていたネメシスは、肉体と精神が分離した状態となっていた。(肉体の行方は小説版「七つの罪と罰」で、精神の行方は小説版「ネメシスの銃口」で描かれている)
その後「イレギュラー」の尽力により、ネメシスの肉体と精神は一つに戻る。これによってネメシスは、自身の人生の他、ネメシスとして生まれるよりもさらに昔の記憶、そして『悪意』に侵されていたもう一つの記憶も思い出した。
最後に懐かしい存在とも再会し、「イレギュラー」と共に滅ぼした世界を救う旅に出発する。
こうして物語はエヴィリオスシリーズ最終章、master of the heavenly yardへと続いていく。