ゲーム概要
ゆうやけ氏がトータルデザインを手掛けたフリーゲーム。
キャラクターデザインは『勇者が死んだ!』の作者である漫画家・スバルイチ氏。
現代日本の小さな町『東雲市』と死後の世界『狭間の世界』を舞台に2つの世界を行き来しながら、主人公・硲幸丞が残された猶予の中で自らの死の真相と未練を果たすために仲間とともに深淵を歩んでいく。
ゲームシステム
RPGツクールVX Ace製でプレイにはVX Ace RTPのダウンロードが必要。
小説発売記念としてRPGツクールMVに移植し、内容を追加したバージョンも存在したがMVのAnd App対応終了とともにそちらの配信も終了している。
HPは『猶予』という概念として存在しており、ニューゲーム当初からかなり高めに設定されてるが基本的に回復手段は僅かにしか回復しないアイテムのみ。レベルが上がっても上昇はしないし回復スポットも存在しない。
そんな状況で手持ちの猶予があるうちに生前の未練を果たして進んでいくというのがゲームの基本となる。
ストーリー
東雲市にある東雲高校に通う高校2年生を修了したばかりの高校生・硲幸丞は友人達とともに春なのにもかかわらずセミの鳴き声が聞こえてくるという、地元にある東雲山の心霊スポットを訪れていた。
噂通りに鳴り響くセミの鳴き声。それと同時に頭に声が鳴り響く。
「やっと・・・聞こえたんだね」
不審に思った幸丞が道を引き返すと、目の前に広がるのは不思議な通路だった。
そこで幸丞は絶望に堕ちた死者・ダーストに襲われるが、間一髪のところで女死神によって救われる。
だが、彼を待っていたのは無慈悲な宣告だった。
「お悔やみ申し上げます・・・。
大変残念なことですが・・・
硲様はすでに亡くなられています。」
登場キャラクター
パーティキャラクター
- 硲 幸丞(はざま こうすけ)(メイン画像右)
東雲高校在学中の高校2年生を修了して春休みを迎えたばかりの高校生。享年17。黒髪。
遺体が見つかっていない関係で表向きには行方不明ということになっている。
部活は水泳部に所属し、エースだった。ちなみに中学までバタフライは全然泳げなかったが、高校になってからは何でも泳げるようになった。
趣味はバンドと写真。
所属する4人組バンド・シノノメンではギターを担当している。
カメラはもはやヲタクの領域で語り出すと止まらない。
家族構成は両親と姉、犬。
物語が進んでも特殊なチカラを得ることはないが、実は・・・。
蔵之助ほどではないがわりとスケベ。愛犬・ラスターからは(自室のアレが原因で)『幸スケベ』なるあだ名をつけられている。幸丞本人は『幸スケベはやめろ』と抵抗しているが、蔵之助のスケベな企みに乗っかったりついつい女子トイレに突撃しようとしては自重しているあたり、その辺は年相応な模様。
固有スキル名は水泳用語とカメラ用語の組み合わせ。
- 橘 葵生(たちばな あおい)
ミルクブラウンの髪色をした境界人の少女で幸丞のバンド仲間・悠生の妹。享年8。
幸丞が境界人になってから最初に仲間となる。交通事故により即死した。
生前は1人で留守番をしていることが多く、死んでしばらくは自らの死にも気が付いていなかった。
だが兄に触れられなかったことで自らの死を察し、永遠の孤独が始まってしまうことに絶望してダーストとなりかけるが幸丞の尽力により救出される。
救出後は現世にいる動物と普通に会話ができるようになる『アニマルトーク』のチカラを得る。
気遣いのできる優しい少女だが、純真ゆえに答え辛い質問をしてくることも。
動物が大好きで飼い猫・エーシスとは言葉が通じない生前から大の仲良し。見ただけで細かい種類を当てられる。
固有スキル名は本人曰く「なんとなく」決めたそうだ。
- 神 蔵之助(じん くらのすけ)
お調子者で大人げないオトナの境界人。髪色は赤色。享年27(本人曰く「永遠のトゥエンティーセブン」)。
放火魔による自宅の火災が原因で亡くなって以降、40年もの間その怒りで暗闇を彷徨っていた。なので猶予はぶっちぎりで低い(その次に低い愛海と比較しても倍以上低め)。なので強敵の猛攻によってあっさりと戦闘不能になることもしばしば。
チカラに目覚めた葵生に興味を示し、流れで仲間になる。当初は2人から『怪しいおじさん』扱いをされていた。
生前は研究業に就いて『業の研究』をしていた。なので勉強は全て得意(本人談)。
かなりの酒好きで、それは彼の深淵や固有スキル名にも表れている。ちなみにスキル名に使われているお酒は全て実在している。
家族構成は妻と娘。娘・ミナコは蔵之助が亡くなった当時は小学生だったが、40年経った今は結婚して子供もいる。蔵之助本人は彼女の晴れ姿や孫をとても楽しみにしていた。
だが中盤で幸丞がミナコの息子(=蔵之助の孫)と判明すると、元々の家族思いな性格がさらに強くなりジジバカを発揮するようになる。
物語が進むと現世の物に触れるようになる。最初は放火魔への復讐心が残っていた関係でペンすら握れなかったが、復讐心の解消と心の整理をつけることでだんだんと安定してくるようになる。
ちなみに技名は『ゴーストタッチ』で、使用時にいちいち叫ぶのはご愛敬。
幸丞と愛海を敢えて2人きりにして自分は物陰に隠れ(て葵生とともに2人の様子をニヤニヤ観察し)たり、肝試しの際は幸丞のためにくじ引きでイカサマをさせたりと他人の気持ちをきちんと察知できるナイスガイ。
だが男の性かかなりのスケベで、作中では生者には姿が見えないことをいいことにあんなことをしようとしたり、境界人の女性に(一応既婚者にもかかわらず)ナンパをかましている(前者は愛海により未遂に終わり、あとで女子2人から幸丞共々きっちり制裁を食らっている)。
そのため幸丞同様『蔵之スケベ』なるあだ名をラスターからつけられる羽目に。
- 咲良 愛海(さくら まなみ)
2年前にARSにより死去した幸丞の幼馴染の少女。享年16。
中学時代はバレー部に所属していたが、病気の悪化によりやめている。
ポジションはリベロだが、サーブが得意。
生前は黒髪だったが、境界人になってからは青髪に変化している。
人気の少ない臥待岬がお気に入り。
病気になって以降車椅子生活を送っていた反動でやり残したことに対する思いが強く、彼女のサブストーリーは他愛もない青春物語となっている。
ちなみに凄まじいレベルのヘビーゲーマー。
彼女のチカラは強く、知人になら憑依してコンタクトを取ることができる。仲間を憑依させて家族と会話させたり、ギターを弾かせるなんて芸当も可能。
固有スキル名は幸丞の真似をして好きなものを組み合わせた。
パーティキャラクターの家族、知り合い
硲家
- 硲 美奈子(はざま みなこ)、硲 幸博(はざま ゆきひろ)
幸丞の両親。美奈子は蔵之助の娘でもあり、40年前の悲劇で蔵之助の命と引き換えに自宅の火災から救出された過去がある。
- 硲 美尋(はざま みひろ)
幸丞の姉で女子大生。ラスター内のカーストでは女神扱いされている。
- ラスター(メイン画像の犬)
硲家の飼い犬。オス。シベリアンハスキーとウェルシュコーギーのミックス。幸丞、蔵之助をスケベ呼ばわりした元凶。彼曰く、2人からは同じ匂いがするらしい(血縁関係を考慮すれば当然でもある)。だが、彼自身も女の子大好きなスケベ。なので蔵之助からは『ウンコ』呼ばわりされている。
骨には興味がない。
橘家
- 橘 悠生(たちばな ゆうき)
葵生の兄で幸丞、愛海の幼馴染。幸丞のバンド・シノノメンのボーカリスト。
葵生のわがままをろくに聞いてやることができないまま彼女と死別してしまった後悔から、葵生が仲間達の力を借りて協力を求めてきた時は積極的に協力してくれる。
- エーシス
橘家の飼い猫。シンガプーラ。葵生とは大の仲良しで独りぼっちで留守番をすることが多かった葵生のお姉さん代わりをしていた。事故をきっかけに橘家から失踪するが、葵生の説得や悠生の協力を得て橘家に戻ってくる。
蔵之助の知り合い
- 神 美帆子(じん みほこ)
蔵之助の妻。蔵之助の死後は女手一つで娘を育て上げ、毎年彼岸になると蔵之助が生前お気に入りだったお酒をお墓に供える。一度は『善なる怨者』に取り憑かれて生命の危機に瀕するが、蔵之助たちの活躍により救出される。
- 藤代 俊明(ふじしろ としあき)
万代町商店街にある藤代酒屋商店の店主。蔵之助とは旧友で40年前の悲劇を知る1人。事件解決後、蔵之助はゴーストタッチのトレーニングも兼ねてこっそりとお店の手伝いをすることになる。
愛海の知り合い
※愛海の家族は彼女の死後、引っ越していったので登場はしない。
- 伊織 圭(いおり けい)
東雲高校に通う高校3年生。茶道部所属の名家の一人娘だが、物語開始早々に父親を失う。
愛海とは中学生の頃からの仲。父親の形見である外貨コインが宝物。
- 三田 加奈子(みた かなこ)
東雲高校に通う高校3年生。バレー部所属の眼鏡っ娘。後輩から気にかけられている。最近、バレー時限定でコンタクトレンズをするようになった。
シノノメンのメンバー
- 幸田 太一(こうだ たいち)
シノノメンのドラマーで東雲高校3年生。勉強はちょっと苦手。葵生からは『コーダ』と呼ばれている。
- 本郷 徹(ほんごう とおる)
シノノメンのベーシストで東雲高校3年生。勉強は学年トップクラス。葵生からは『ホンゴー』と呼ばれている。
冷静沈着で、たとえ生者の身ではふつうあり得ない現象に巻き込まれようとも崩れない。
その他
- 川越 孝正(かわごえ たかまさ)
東雲高校の教師で、本来であれば幸丞が所属するはずだったクラスの担任の先生。
最近白髪が進んでいる。
時々何かに気付いているような節があるが・・・。
- 峰岸 明子(みねぎし あきこ)
幸丞の小学校時代の恩師で白髪の境界人。登場時点でほぼ成仏寸前だった。
MV版や小説版では出番が追加されており、葵生の救出に向かおうとする幸丞に最後の授業を行った。
- ガタイのいいおっさん
禿げ頭の境界人。現世に戻って己と向き合うことを諦めている。
物語にかかわる重大な事件を起こしており、それを悔いて自ら命を絶った。
蔵之助からはその行いについて激しく責められている。
- 花子さん(はなこ)と貞子さん(さだこ)
東雲高校の女子トイレに住んでいる境界人。
2階の住人・花子さんは誰かに説得され続けているツンデレ少女。
3階の住人・貞子さんは情報通なお姉さん。
- マール
狭間の世界と現世を繋ぐ『蜃気楼の門』の門番。
賑やかで語尾に『シ』をつけるが、たまにキャラを忘れて凄みのある口調で話す。
- マジカルマの店主
夜の商店街で境界人を相手に商売をしているファンキーないでたちの境界人の商人。夜の現世に降り立てるようになると会えるようになる。商店街の裏事情(境界人的な意味で)にも詳しい。
- ニワトリのような鳩
文字通り、見た目から鳴き声までほぼニワトリのような鳩。鳩なのにエーシスとは友達とは本人の弁。東雲高校の屋上によくいるため、屋上をたまり場としているシノノメンのメンバーのこともよく知っている。
越境の四者
いわゆる四天王ポジション。特に強い執着心を持っており、強力なチカラで現世に干渉したり境界人の猶予を奪うことができる。
- 善なる怨者(ぜんなるおんじゃ)
最初に戦うことになる越境の四者。
何らかの理由で植物人間となった男。自らの意思に反して提供されてしまった彼の臓器をレシピエント達から『奪い返そう』としていた。
6月の夜に美帆子に移植された彼の臓器を奪い返そうと彼女の病室を襲撃し、幸丞達と交戦する。植物の力と越境の四者の猶予吸収攻撃で一行を苦しめてくる。
最期は幸丞に『あの子』の面影を見出しつつ、その身はダーストと化しながら消えていった。
コレクターブックによると、二重人格らしい。
- 歪みを貫く者(ゆがみをつらぬくもの)
2番目に戦うことになる越境の四者。
生前から『芸術』と称して放火を行っていた男で、40年前の悲劇を起こした元凶。
40年前に何者かに唆されて自ら焼け死んでからも境界人のチカラを悪用して『芸術活動』を続けていた。
彼の被害者である蔵之助からは『貴様だけは死んでも許さん』というレベルで恨まれている。
歪みを貫く者の名の通り、敗北後も最期まで狂気の姿勢を崩すことなく燃え尽きていった。
- 女死神/捨て去りし者(めしにがみ/すてさりしもの)
幸丞がプロローグでダーストに襲われた際に救援した女性で、3番目に戦うことになる越境の四者。
境界人のことを名字+様呼びで呼んでいる。
幸丞は正体を察するまでは彼女のことを『女神様』と呼んでいる。
生そのものに執着しており、生者に深く嫉妬している。
その正体は2年前、死んだその日に全てを捨て去って変貌した愛海。彼女のチカラがパーティメンバーの中で強いのもこのため。
呼称表
が/に | 幸丞 | 葵生 | 蔵之助 | 愛海 |
---|---|---|---|---|
硲幸丞 | 俺 | 葵生ちゃん | 蔵助さん/祖父ちゃん※1 | 愛海 |
橘葵生 | ハザマ/あにき※2 | あおい | ぞうさん | マナミちゃん |
神蔵之助 | 硲少年/幸之丞※1 | ミカンちゃん | 俺 | サクラちゃん |
咲良愛海 | コースケ | 葵ちゃん | 助さん | 私 |
※1 血縁関係判明後
※2 救出後
小説版
2017年3月31日に小説版がエンターブレインより発売されている。
リンク
ネタバレにつき隔離された人物
- 囚われし者(とらわれしもの)
最後に戦う越境の四者。正体は川越先生で現世で彼がたびたび何かに気付いていたような態度を見せていたのも、彼自身が現世の生者とも普通に接することができるチカラを持つ境界人であるため。東雲高校が木造の旧校舎だった時代に起きた生徒の自殺事件(その生徒は花子さんだということが仄めかされている)を止められなかったことを激しく悔やんでおり、死後に自らの遺体に取り憑いて贖罪を続けていた。急速に白髪が進んだことから死んでかなり経つらしく、現在の東雲高校にある彼の深淵で対峙した時には力の制御も利かなくなるほどの状態だった。このままでは大切な人を殺めかねないことを察した彼は、幸丞達に止めを刺すよう頼み込む。
倒された後は、生者の身でありながら狭間の世界に呼ばれた『マージカルマン』とその現象を起こした人物のことを話して成仏していった。
- 硲 永介(はざま えいすけ)
本編開始5年前に水難事故で亡くなった幸丞の双子の弟。『善なる怨者』の言う『あの子』の正体でもある。
泳ぎは幸丞よりもうまく、死因となった事故も幸丞と泳ぎの勝負(永介による一方的な挑発)の最中の出来事だった。
存在そのものは序盤から彼を知る人物達により語られていたが、季節が夏になった頃に本格的に登場し、夏の終わり頃に表向きには行方不明だった幸丞の身体に憑依した状態で幸丞達や硲家の面々の目の前に現れる。
彼の魂は2つに割れてしまっており、1つは残滓として死後も幸丞の中にある。
あらすじの太字の台詞も彼によるもの。
だが幸丞の身体の中にいるもう1つはすでに生前から抱えていた幸丞への羨望と嫉妬の感情で狂いきってしまっており、現世から生者を次々に狭間の世界へ呼び出す異常現象を引き起こす。そして、幸丞の存在を消そうとタイマン勝負を挑んでくる。そして・・・。