概要
元ネタは漫画『究極超人あ~る』のたわば先輩が(かたよった)写真の心得を説いた時の台詞。
タグとしては逆光が上手く活用されている絵や、逆光と、あ~るネタが絡んだ絵に付くことがある。
この言葉が該当する/しない場合
(該当する場合)
写真で芸術的な表現をする場合、順光(撮影者の後ろ寄りに光源がある状態)では往々にして写真にインパクトが欠け、個性のない平板な仕上がりになりやすい。
そこで逆光(撮影者の前寄りに光源がある状態)にすれば、被写体が浮き上がり強調されるだけでなく、非日常感を醸しだす事もできる。ただし何事にも限度というものがあり、光源が強過ぎると被写体がシルエット状態になりかねないため、反射板(レフ板)で被写体前方からの光を補ったりする。
(該当しない場合)
逆に、記録するために写真を撮る場合、逆光では肝心の被写体の総体的な姿が見づらくなるため、順光で手堅く行くべきだろう。
心得
「これが基本だの巻」より。
- トライXで万全
- これを4号か5号で焼いてこそ味がでる
…上記2つは鳥坂先輩の言葉。高コントラスト傾向があるコダック社の『Tri-X』フィルムを使用し、高コントラストの印画紙に焼くと言う事。具体的にpixiv利用者各位にお馴染みであろう表現で言うと二値化したような感じになる。「これはこれで表現としてありだが、カメラに触ったばかりのような初心者に勧めるような代物ではない」という意味で偏っている、のは連載当時の話。
どういうことかというと、作品連載当時のモノクロネガフィルムの主流は、作中でも取り上げられている富士フイルムの『ネオパンSS』(ISO感度100)だったのだが、これより10年ほど後になると、ISO感度400同士の戦いになってくる。当初フジは先行のコダックに対しネオパンSS・SSS(ISO感度200)の単純な発展型として『ネオパン400』を発売するのだが、銀塩フィルムでは感度を高くするためにはフィルムの感光体の粒子の大きさを大きく取らざるを得ず、感度と写真の解像度がバーターになっていた。この時点で、Try-XはISO400でありながらISO100のネオパンSSといい勝負ができる解像度を誇っており、これに対して目に見えて劣るネオパン400は散々な評価を受けてしまった。
そこでフジは非球形粒子を用い、SS並の解像度を維持しながらISO400とした『ネオパンPRESTO』を発売。ところが非球形粒子を採用した関係でネオパンPRESTOはコントラスト中央がやや暗色側に偏っていて(従来のネオパンシリーズもコダック製フィルムに比べるとそうだったが、それに輪をかけて)、これに対してTry-Xの方がニュートラルな発色だったため、ISO400全盛時代は「標準はTry-X」となってしまったのである。
ちなみにネオパンPRESTOに対抗するため、コダックがTry-Xの後継として発売した非球形粒子高解像度フィルム『T-MAX』はネオパンPRESTOに輪をかけて酷いことになっており、通常のモノクロフィルムと同じ現像処理をすると暗色側が潰れてしまうため、発売元がアメリカの企業だったゆえ「人種差別フィルム」というありがたくない二つ名を頂いてしまう。
また、Try-Xの標準現像液はモノクロフィルム現像液として世界的デファクトスタンダードだった「コダックD-76」で、フジのネオパン用標準現像液『フジドール』はこの互換品、高速現像液『スーパープロドール』は世界的にほとんど唯一の「D-76の単純強化型現像液」だった。ちなみに、T-MAXをD-76で処理すると上記の通り酷いことになるので、後に対策した専用現像液『T-MAX Developer』が発売される。
そんなわけで、コダック製フィルムを「偏っている」とみなしていたのはむしろ1970~1980年代の日本ローカルで、1990年代に入るとTry-X派v.s.ネオパンPRESTO派が、カメラ側のニコン党員とEOS党員の対立と同じぐらいの勢いでバチバチやっている状況になっていて、「偏っている」と言われたければ前記T-MAXぐらい使わないとダメになっていた。ちなみに、D-76での処理時間から係数を割り出してTry-Xをスーパープロドールで現像するなんてのはフツーに横行していた。
…………で、その後は皆さんご周知の通り、デジタルカメラの普及で銀塩写真フィルムのシェアは急激に落ち込み、フジは早々に銀塩写真事業を縮小したため、既に需要がないに等しいモノクロフィルムは一旦全て廃盤となり、PRESTOどころか球形粒子のネオパンシリーズの技術もロストしてしまっている。現在唯一ラインアップされている『ネオパン100 ACROS II』は代替原料の確保に目処がついたことで再参入する形で発売された。
一方のコダックは、元々カメラ本体ではフジに大きく差を付けられていた事もあり、8mmシネフィルムも含めた銀塩写真フィルムソリューションの継承を会社の方針と位置付けていたが、デジタルイメージング事業がサンヨーの粉飾経営の巻き添えを食って出遅れたこともあり、結果会社まるごとあぼーん。こちらも経営再建のために殆どのニッチ商品の生産をクローズし、こちらも現在は伝統と栄光のTry-X(35mm判ISO400、シート判ISO320)だけがラインアップされている。
まぁ、印画紙の方は普通3号がスタンダードだけどな。
…前述。
- 世はなべて3分の1
…画面に三分割法を使う。具体的には、縦横3区画ずつに均等に区切る仮想の線を使い、被写体もしくは要素の境界線(山の稜線など)を、画面の中心にせずに少し寄せる。
- ピーカン不許可
…光のあたる部分が白く、影の部分が黒くなり過ぎる。
- 頭上の余白は敵だ
…頭を写真の中心にすると、写真に無駄な余白ができてしまう。
上記3つはたわば先輩の言葉。簡単に言うと、どれも「基本中の基本」ではあるのだが、最後の一つは人物写真の心得で光画部の面々が撮りに来ている風景写真とは関係がない。こちらは「基本を重視するあまり、現在何をしに来ているかすら失念している」という意味で偏っている。
早い話が「平凡な写真は撮りたくない」というプライドと「その為に必要なセンスや技術を磨くのは面倒」という本音の葛藤の末に生み出された、「安易に個性的な写真を撮る」為の技法である。当然その出来には何の保証もない。「作品の完成度」よりも「面白さ」を伝統的に重視してきた、春高光画部らしいといえばらしい指導ではある。
関連イラスト
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外部リンク
(…TAKAよろず研究所)