概要
別名はビネガロン、ムチサソリ。
名前の通り一見してサソリを彷彿とさせる姿だが、実際にはサソリどころか近縁ですらなく、むしろクモやウデムシ・ヤイトムシ等に近縁で、特に細部はウデムシやヤイトムシとの共通点が多い(捕獲用の触肢・触角状の第1脚等)。
特徴は3本の爪を持つ太い触肢とお尻に付いた鞭のような尻尾。ウデムシほどではないが、第1脚は触角状の感覚器で長く伸びる。外見は体を縦に伸ばして尾を足したウデムシとも言えるだろう。
日本ではウデムシやヒヨケムシとあわせて「世界三大奇虫」のと呼ばれるが、海外だけに分布するウデムシやヒヨケムシとは異なり、サソリモドキは日本にも分布する種類がいて、アマミサソリモドキとタイワンサソリモドキの2種が確認されている。
生態
夜行性・捕食性・悪い視力・触角状の第1脚で周りを感知(残り6本の脚だけで歩く)・子供を負って保護するなど、ウデムシと似た性質が多い。
触肢はサソリのようなただのハサミではなく、どちらかと言えば複数の道具を兼ね備えた折りたたみナイフ。3本の爪のうち先端2本がハサミのように働くが、捕食では全ての棘で獲物をしっかりと囲みながら、付け根の歯車型の棘に押し込んで握り潰す。
ほとんどのクモガタ類と同様、口から消化液を分泌し、捕獲した獲物を弱らせつつ自分が食べやすいように、口外で獲物を直接消化しながら捕食する。
求愛の流れは複雑で、雄が触肢のハサミで雌の第1脚を掴んでキスしては、雌がまた触肢で後ろから雄の腹部をハグする。最後は交尾ではなく交接で、雄が精包を排出し、触肢でそれを雌の生殖器にぶち込む。
毒は無いが、危険を察すると触肢を広げながら腹部を高く上げて、尻尾の付け根から強烈な酢の匂いがする酸性液体を噴射する。ビネガロン(vinegaroon)という英名はこの特徴に由来する(vinegar=酢)。
人間との関わり
人間とは、あまり馴染みのない動物である。基本的には大人しくて無害であるが、上記の噴出物は一応は皮膚や目に有害な刺激性を持つので注意が必要である。直接皮膚に浴びるとかなりの熱があり、場合によっては火傷や皮膚炎、目に入ると最悪失明の危険性もある。
これらの事から、遭遇した場合は、なるべく彼らをパニックにさせないように注意すべきである。
一方で、その奇妙な容姿が注目されており、稀にペットとして流通する事もある。
虫王や虫皇帝等にも度々参戦し、強烈な酢酸攻撃でオオスズメバチやハラビロカマキリ、ノコギリクワガタ等を撃退した。
酢酸は大型のサソリやムカデはおろか、パラワンオオヒラタクワガタとヘラクレスオオカブト等にも有効で、戦意を喪失させる威力を誇る反面、ヒヨケムシやヤブキリ等の一部虫には通用しないという話がある。