※ストーリーの具体的なネタバレは書かないよう、編集の際はご注意ください。
概要
マリオシリーズを題材にしたアニメ映画。配給はユニバーサル・ピクチャーズ。制作は怪盗グルーシリーズでおなじみのイルミネーション。
また、制作には任天堂の開発チームも大きく関わっており、宮本茂氏もプロデューサーとして参加している、事実上の日米合作映画となっている。
日本では『ピーチ姫救出大作戦!』以来37年ぶりのアニメ映画版のマリオで、映画版のマリオとして見ても『魔界帝国の女神』以来30年ぶり。
初代から最近まで、様々なマリオ関連作品の要素が盛りだくさんな内容となっており、かなりマイナーなキャラクターも登場する。BGMや効果音も歴代マリオシリーズのものが使用され、ある意味一種のイースターエッグのよう。
演出面ではカメラが横スクロールになったり、キャラクター・アイテムの能力が原作のゲームに準拠しているなど、ゲームとしてのマリオらしさがしっかり盛り込まれている。
一方でマリオのルイージ以外の親族や、ピーチ姫の出自など、本作オリジナルの設定・描写も多い。その他本作より公式名称を海外で統一する目的でブラッキーの名前がスパイクに変更され、日本版公開数週間前に任天堂の公式サイトで発表された。
日本語版の声優は一新されているが、主要人物の多くはプロの声優の中でも有力な方々が声を担当している。音響監督はアニメ『ポケットモンスター』、『シャーマンキング』、『鋼の錬金術師』、『妖怪ウォッチ』など数多くの人気アニメを担当した三間雅文氏が務めた。尚「日本語吹き替え版」ではなく、「特別日本語版」である(後述)。
原語版の声優はクリス・プラットやジャック・ブラック、セス・ローゲンなど、他作品で名を挙げてきた豪華俳優陣をメインに起用している。
また、原語版・日本語版共通でこれまでのゲームで初代マリオを演じているチャールズ・マーティネー氏が出演しており、公開から4ヶ月後にマリオシリーズの声優の引退を発表した為、これが最後のマリオ作品の出演となった。
ファミコンでマリオというキャラクターが誕生してから実に40年を迎えようとしている時期での上映の為、現代の子供達は勿論、ファミコン時代よりマリオが身近にいた大人達も幅広い年齢で楽しめる映画として、制作発表時よりマリオが生まれた日本は勿論、世界中で大きな期待を寄せられていた。
2023年4月5日にアメリカなどの諸外国で先んじて公開。日本では2023年4月28日公開された。アメリカでの推定オープニング興行収入(公開から5日間)が1億4600万ドル(約193億6000万円)、全世界での推定興行収入は約500億円を叩きだした(後に24日の時点で1168億円となった)
そして遅れて公開された日本でもその勢いは尋常ではなく、オープニング興行収入が19億円と異例のスタートダッシュを見せ、その後も公開してから僅か1ヶ月で興収100億円を突破し、アニメ映画の世界的な興収も難攻不落と思われた『アナと雪の女王』及び『アナと雪の女王2』のツートップから前者の興収を超え、日本での洋画アニメ映画としては史上最速となった。
最終結果として合計13億6000万ドル以上を記録し、現在の歴代アニメーション映画での興収はなんと歴代2位の大ヒット映画となった。また世界で公開されたユニバーサル映画の中でも過去最大のヒット作となっている。
更に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3』を除いて上映された作品が尽く赤字を叩き出したディズニーに取って代わり、ユニバーサルが2023年、年間興行収入1位の座を奪取した。
任天堂の古川社長は「この映画が成功すれば、他の任天堂IPを使ったアニメーション映画作品をさらに製作する」との意向を表明している。
結果見事に社長の予想を遥かに上回る大成功を果たし、今後任天堂関連の映画作品がさらに製作される事は間違いないと見られていた。
そして2024年のマリオの日、続編を制作中であることが発表された。北米を中心に多くの地域で2026年4月3日に公開予定。日本では4月24日に公開する予定。その他の地域についても4月中の公開を予定している。
ストーリー
本作のストーリーは現在の「キノコワールド生まれ」のマリオとルイージの物語では無く、ファミコン時代からスーパーファミコン初期までの「イタリア系アメリカ人」のマリオとルイージの物語のリブートとなっている。
マリオとルイージの兄弟が、まだピーチ姫やクッパはおろか「キノコワールド」自体とも関わりを持っておらず、アメリカのブルックリンで起業したばかりのしがない配管工だった状態から物語が始まる。
そしてあるトラブルで異世界へと渡り、様々な出会いや大冒険を経験していく事で、今のようなスーパーヒーローに成長していく過程が丁寧に描かれる事になる。
キャラクター
ゲーム版とデザイン及び設定にやや差異がある。また、当記事ではCVはキャスト欄と分けている。
ご存じ最も有名なゲーム主人公。
今回は「ヒーローになる前」というキャラ付けらしく、身体能力こそ既にバツグンだが、頼りない「配管工の若者」としての面が強調されている。
基本的には陽気で前向きだが、純粋さと繊細さ、喧嘩っ早さと正義感が同居する複雑な内面の持ち主。特別な能力は持たず戦闘はアイテム頼みだが、どんな時も諦めない不屈の心を持つ。
ゲーム版とのデザインの差異は服に襟があり、よく見ると前開きシャツになっている。
ご存じマリオの双子の弟。マリオ同様服に襟がある。
ゲーム同様臆病かつ不憫で、普段はマリオに輪を掛けて頼りない。だが他者を気遣う優しさを見せたり、落ち着かない兄を嗜めたりなど人の良さが目立つ。
今回は彼が攫われ役で、ゲーム版の幼少時代よろしく、早々クッパに捕まってしまう。ある意味『クッパがピーチ姫に惚れる前』と思わせた目眩まし役。
ご存じキノコ王国の姫君。
いつものように攫われポジション…と思いきや、本作では『SPP』やスポーツシリーズを思わせる女傑ぶりで、マリオを連れて冒険へ旅立つ。
長年攫われポジションだった反動かPV曰く『真の主人公……なのかも知れない』。
人物もお転婆さと気品が合わさったような性格。ゲーム版と比べブローチや冠に細かい装飾が施されている。また、よく見るとドレスの下にロングスパッツを穿いている。
ご存じキノコ王国の国民たち。彼ら(彼女ら)は皆、かわいさを強調する性格。
その中で勇敢さを追い求める一個体が、ピーチのお供として冒険に同行する。
ご存じ元祖ライバルのネクタイゴリラ。
今作ではジャングル王国の王子兼コング軍を率いる戦士として、マリオと同盟を賭けた決闘を行う。力を誇示するお調子者な性格で、ゲーム版と比べ目の周りが明るく瞳も大きめ。
ご存じ横暴なカメの大魔王。
カメ族を中心としたクッパ軍団を率い、世界征服のためクッパ城を拠点に各国を侵略している。この時点で既にピーチにも惚れており、彼女との結婚も企んでいる他、自作の恋歌まで披露する。
ゲーム版のようにピーチ姫をさらわないなど妙に紳士的な一面もある。
本作では肩の上や首の周りがやや緑っぽい。
クッパの腹心たる魔法使い。
今作でも彼の悪事をお膳立てしているが、同時に振り回される苦労人な面も健在。
クッパの手下としてお馴染みのキャラクターたち。
ノコノコ、クリボー、ボムへい、トゲゾー、ヘイホー、パックンフラワーなど多くのキャラクターが登場。
初代ドンキーコング。今作ではジャングル王国の王という立場になっており、若い頃のマリオとの因縁は存在していない。王という設定になったのを伴い、服装が王族の物となっている。
ゲーム本編と異なり、上記の2代目ドンキーコングは孫ではなく「息子」という設定。
ジャングル王国に住むコングたち。
モブキャラクターとしてディディー、ディクシー、チャンキーなどが登場。
懐かしな『レッキングクルー』の悪役。『モバイルゴルフ』版以降の逞しい容姿になっており、上記の通り公開直前で改名された。
本作ではマリオとルイージの元上司で、マリオたちが独立した事におかんむりの様子。
ニューヨーク市のブルックリン地区に住むマリオとルイージの知人。
原語版・日本語版共通でゲーム版のマリオの声を当てているチャールズ・マーティネー氏が声優を担当し、マリオ兄弟が作ったCMを絶賛する形でバトンタッチ的な役割を務める。
ニューヨーク市のブルックリン地区に住む、マリオ兄弟の両親と叔父たち。
本作の兄弟はここで生まれ育っている。
『スーパーマリオ64』に登場したペンギン達。氷の国で暮らし、侵略してきたクッパ軍団に立ち向かうもあっさり敗北。その後捕虜になっており、下記ルマリーの言動に呆れている。
『スーパーマリオギャラクシー』に登場した星の子チコの一人(名前はよろずやチコの海外名から。このチコの本業は商人だろうか?)。
可愛らしい外見と子供のような声に反してネガティブかつ陰鬱な性格で「死による解放こそ唯一の希望」などと物騒な事を言う。
本作にロゼッタは登場せず、関連があるかは特に明かされてない。
ご存じ平和主義な食いしん坊ドラゴン。ヨースター島に大勢のモブとして登場。
実質背景としての登場なのだが…
『スーパーマリオオデッセイ』のイメージか、本作ではニューヨークの市長として登場。マリオやドンキーとの接点はバッサリカットされている。
ブルックリンで大規模な下水漏れが発生した際の中継映像に登場。
特別日本語版
本作は一般的な海外製作の映画とは異なり、翻訳作業において特殊な手順がとられている。
完成した本編の日本語訳版を製作するという従来の工程ではなく、本編の製作と同時に日本語版も並行して作成しており、脚本も完成した物の純粋な翻訳では無く日本語版独自で製作されている。
声の収録もそれぞれを参照せずに収録されている為、本作の日本語版は「日本語吹き替え版」ではなく、宮本茂氏は「英語版と日本語版を楽しんで欲しい」と発言している。一方で日本語版のキャスティングは英語版を基に行われている為、本作の英語版の日本語版の関係は「原語版と特別日本語版」となっている。
その為原語版と日本語版で台詞の差異が大きめだが、大筋まで変わっている訳では無い為、逆に原語字幕版で敢えて実際に言っている事と全く違う字幕が表示されている場面が日本語版だと原語版の直訳に近い発言になっている事もある(マリオの家族の「前の会社、やめんなよ」やクランキーの「守備を固めろ!」など)。
また、この製作方法の影響で日本で原語字幕版と日本語版が同時に上映されたのと同時にアメリカでも一部の映画館で日本語版が上映されるという珍しい出来事も起きている。
キャスト
メインキャスト
原語版のその他キャスト
キャラクター名 | キャスト |
---|---|
ペンギンの王様 | カリー・ペイトン |
CMのラップの歌手 | アリ・ディー |
マリオ達の母親 | ジェシカ・ディシコ |
トニー叔父さん | リノ・ロマーノ |
アーサー叔父さん | ジョン・ディマジオ |
キノピオ将軍 | エリック・バウザ |
ルマリー | ジュリエット・ジェレニック |
ノコノコ将軍 | スコット・メンヴィル |
日本語版のマリオの父親とその他キャラの声優は非公表となっている。その中で木村昴氏はCMのラップの歌手、唯一声優では無い子役の山根あん氏はルマリーを担当していると推測されているが、いずれも公式には声優の担当は明確にされていない。
配役不明の日本語声優は以下の通り。
石田嘉代、小野寺悠貴、菊池通武、菊池康弘、木村昴、熊谷海麗、くわばらあきら、光部樹、坂本くんぺい、志村知幸、空見ゆき、高口公介、武隈史子、田邊幸輔、永井真里子、福西勝也、星祐樹、山根あん
だが、全編を通して台詞が少な目なのでよほどアニメに見馴れた視聴者でないと特定は困難。
余談
- マリオの声を演じる宮野氏とルイージの声を演じる畠中氏は、特撮番組『ウルトラマンZ』でウルトラマンゼロとウルトラマンゼットの師弟コンビとして共演している。
- その為、特撮ファンからは「兄弟が0Z師弟!?」「実質『劇場版ウルトラマンZ』」等中の人ネタで話題となり、その結果、全く関連性が無いのに関連ワードがトレンド入りする異常事態が発生した。
- 尚、宮野氏はルイージ役が畠中氏と知った際、『Z』の頃を意識していたから(実際に声優のインタビューでは作品名までは言わなかったが「師弟関係」と口にしている)か「ルイージ=畠中かぁ〜…」とテンションが低かったとか…(とは言え、『Z』等共演率もある事もあって、可愛らしい兄弟を演じられるとも思ったらしい)因みに、畠中氏は反対に宮野氏がマリオ役と知って「マリオ=宮野さんやーん!!」とメッチャテンションが上がったらしい。
- ついでに言うと、キノピオ役の関氏もゼロの仲間であるグレンファイヤーとゼットの名付け親であるウルトラマンエースを演じており、より0Z師弟と縁のあるキャスティングになっている。
- 本作の公開後、何故か30年前の実写映画である『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』が、amazonなどで注文が相次ぎ品切れとなるまさかの事態が発生している。
- 劇中でマリオとルイージが開業する配管会社のホームページやCM動画は実際に制作されていて、しかもホームページに記載されている電話番号は(アメリカの電話番号だが)実際に繋がり、ルイージが応答する凝った仕掛けがある。
- 他にもレビューをよく見ると、スパイクの恨み節が書かれていたり、映画本編を見ると納得する様なレビューが書いてあったりする。
- CM動画の音楽はアメリカで過去に放送されていた番組『The Super Mario Bros. Super Show!』のオープニング曲「Mario Brothers Rap」をリマスターしたもの。編曲・歌唱共に歌手兼音楽プロデューサーのアリ・ディー氏が担当し(編曲は作曲家のアンソニー・ミラベラ氏も協力)、本編の原語版でもそれが使用されているが、他国版ではその国の担当人物が歌を吹き替えたものが使用されている。
- 尚、映画版ではいくつか独自の設定変更があったのだが、2023年4月20日には任天堂公式から「これまで日本でブラッキーと呼ばれていたキャラクターを正式に欧米版と同じスパイクに統一」と公式発表され、本編でも今後はスパイク名義となる事になった。
- 更に、映画で「クランキーコングの息子」設定に変更されたドンキーコングについても「この映画を機会にドンキーコングのデザインを『スーパードンキーコング』で3Dモデルになって以来久しぶりに変更した」と宮本氏が語っていたことや、2023年4月26日には「Jr.が初代ドンキーの息子」「2代目が初代の孫」と解説されていた旧ニンテンドーオンラインマガジンの公式サイトがページ削除されるなど、映画に合わせたような動きが行われている。
- 本作の上映から2ヶ月が経った6月にニンテンドーダイレクトにて『マリオシリーズの完全新作であるスーパーマリオブラザーズワンダー』、『ルイージが主役のルイージマンション2のリメイク』、『ピーチ姫が主役のスーパープリンセスピーチに続く新作プリンセスピーチショータイム!』、そして『マリオとピーチ姫とクッパが主役のスーパーマリオRPGのリメイク』と怒涛のマリオシリーズの情報公開ラッシュが行われた。
- 更にBlu-rayやDVDの発売と同じ9月のニンダイでは『ペーパーマリオRPGのリメイク』が発表された。
- そこから更に続編の公開日が発表された2024年の6月のニンダイでは文字通りマリオブラザーズが主役の『マリオ&ルイージRPGの新作』が発表された。
- 2016年、USJ内にマリオをテーマにしたエリアを開発すると発表され、2021年にスーパーニンテンドーワールドが完成・オープンに至った。これに対し、当初は「ユニバーサルスタジオの映画を舞台にしたテーマパークなのに、マリオが題材のエリアを作るのはいかがなものか」という否定的な意見が時折見られていた。ユニバーサルスタジオと関係の薄い作品のアトラクション自体はそれまでにも幾らかあったが、それらはいずれも期間限定であり、対してスーパーニンテンドーワールドは常設である為、こう言った声がより上がるのはやむない事でもあった(常設且つユニバーサルスタジオと関係がない作品としては、既にハローキティという前例はあったが)。しかし、この作品が公開された事によってマリオは名実共にユニバーサル作品の仲間入りを果たした為、現在ではエリアに対する意見の減少はもちろん、寧ろ映画の空気まで合わせて楽しめるエリアとしてより一層の賑わいを見せている。
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ピーチ姫救出大作戦!:日本におけるマリオ劇場版第1作。「クッパがピーチ姫に惚れている」という設定が出た初の作品であり、本家及びメディアミックスに多大な影響を与えた。また、ネタバレになるが、最終決戦になる流れとクッパの倒し方も似ている。
魔界帝国の女神:マリオブラザーズが住んでいるのがアメリカであったり、異世界に迷い込んだりといった点など似通っている点がある。また、ネタバレになるが終盤で両世界を巻き込んでの戦いになる点も共通している。
光神話パルテナの鏡:序盤でマリオがプレイしていた。当然ファミコン共々海外仕様で、おなじみのあのセリフも英語になっている(吹き替え版ではテロップで「ヤラレチャッタ」が出る)。
ミニオン:イルミネーションの代表作、怪盗グルーシリーズのキャラクター。冒頭の「ILLUMINATION」の企業ロゴパートにスチュアートが特別出演している。マリオカートのようなカートで急発進し、「ILLUMINATION~!!」の叫びと共に画面外に吹っ飛んでいく。なお、バージョンによってはキノピオとクリボーの寸劇になっている模様。