予後不良から転載。
経歴
2015年出生、2023年引退。馬名はサハラ砂漠にあるモロッコの地名で毛並みの色から連想されたと思われる。
フジキセキ系のカネヒキリを父に持ち、母父ラムタラという良血馬。園田や姫路といった地方競馬で111戦8勝。
決して好成績を残したとは言い難く、引退後は五月の端午の節句中に行われる、三重県多度大社の上げ馬神事に使われる事になった。
神事の問題点
が、この上げ馬神事、
- サラブレッドの正しい扱いもわからない地元住民によるアマチュア調教をたった一月だけ受けた状態
- 年端もいかない未成年を騎手にし(日の練習期間は下校後の数時間のみ)
- 竹棒や角材などで殴り、酒を飲ませる等で興奮させ
- 一般聴衆から腹や足を殴る蹴るなどの暴行を受けながら現地に向かい
- 青嶋坂もびっくりな急傾斜な坂路を駆け抜けた後
- 障害レースや乗馬でも採用しない2m以上の土壁を練習もなしのぶっつけ本番で飛び越えさせ
- 失敗すればその場で首や腹を荒縄で無理に縛り上げて力任せ引きずり上げる
- 「馬が上がる」ことを目標にしており「馬そのものの安否は後回し」
という、おおよそ平地競争用のサラブレッドに施す行為から逸脱した祭事が災いし、足を折って予後不良となった。
恐ろしいことにこれらは毎年のように予後不良馬を排出し、年によっては成功例0件等の事例も出しておきながら開催側は「今年はうまくいかなかったね」「来年も頑張ろう」などなんの反省改善の素振りも無く来年以降も継続する意向を示している点である。
使用する大型動物を苦しめて死に到らせる祭事を毎年のように繰り返し、それをまるで喜ばしいこととして受け止めている主催者側のスタンスに違和感を覚えたユーザーから批判の声が上りTwitterを始めとしたSNSで炎上を見せた。
壊滅的な論戦
NPO法人引退馬協会は明確に苦言を呈し、これに賛同する組織や牧場もちらほら現れてはいる。
しかしながら、これら開催者側の問題行動を端に発して炎上した結果、神事の伝統性や地域色、直後に日本ダービーで急死したスキルヴィング号との比較、競馬そのものへ批判の矛先を向ける行き過ぎた動物愛護の観点から、様々な方面に飛び火し、現在解決不能に思える論争となっている。
- 祭事擁護派からは「鎌倉時代から存在する伝統行事であり他県民から口出しする覚えは無い」という意見が最も目立つが、後述するとおりサラブレッドが輸入されるようになったのは日本史でもごく最近のことであり、かつ行事がどのようなものであれ動物愛護法などの現行の法律は遵守するのが法治国家の基本である。(とはいえ、祭事に関しては全国で「文化保護の面から行政の口出しを控える」という政治スタンスがまかり通っており地元優勢の傾向は免れない)
- 真偽不明の内部告白に寄れば「有力者会議等による地元民による改革は絶望的」とされ、開催側が付けている獣医が10年提言してもなんら改善はされなかったとされている。SNSでは現地映像のとてもヤンチャなナリの若者たちが開催馬に暴行する光景が毎年撮影されていることから、地元民度を攻撃対象にするやり口が高頻度に繰り返され、全く別の論点に発展してしまいより収拾が付かなくなっている。
- しかしながら引退馬を神事祭事に活用する神社自体は日本各地に存在し、彼らの存在が後述する引退馬の苦悩に対する受け皿として一部機能していることは忘れてはならない。
- 動物愛護派からは「お馬さんがかわいそう!」という意見から非常に強い反発が見受けられ全国規模で炎上を加速させるべく情報発信をする草の根運動が盛んだが、なにせそもそも鞭打って走らせることが前提の競馬自体彼らからすれば目の敵であり早々に「競馬ごとなくせばいい」「現役時代は無理矢理走らされて引退してから殺されるなんて悲惨」「騎手も調教師も同罪」といった見当外れな意見も目立つ。
- 当然ながら現役競走馬の健康状態は非常にデリケートで細心の注意を払っても故障が発生することも多々ある。また自動車産業の発展に伴う乗馬農耕馬の利用価値が格段に下がった現代では、少なくともサラブレッドは競馬で走らせる以外に命をつなぎ止める手段が皆無な上、土地や餌や人件費など手元に置いておくだけでも途方もない金がかかる。
- 最も過激な意見では「競馬自体やめろ」から発展してヴィーガン的思想と結合し「サラブレッドの繁殖自体が悪」という結論に到り「(無理矢理走らされるのがかわいそうだから)馬そのものを全て処分しろ」といった反出生主義的な発言も散見されるようになり、当初の「お馬さんかわいそう!」はどこに行ったんだと言いたくなるような過激派発言まで見られる自体も発生していた。(この傾向はスキルヴィングの一件から一回強くなったが、どう言うわけか翌月からナリを潜めてしまった)
- とはいえ「目的達成のために競馬ファンとも情報交換、連携を進めていく」というスタンスの者も居ないわけではないため、個々人のスタンスを注視していく必要がある。
- 一般的な競馬ファンからの反応は最も幅が広く「見たくも無い、話したくも無い」から「このような扱われ方をする為に売ったわけではないだろうに」「断固反対」まで多彩である。そもそも業界ですら「種牡馬入りもしていないなら引退後の馬は追うな」という言説がジョッキーからファンまで浸透しており、JRAですら用途変更した馬の状態は全てを把握しきれない、競馬の闇が最も濃い領域で起きた問題とも言える。
- とはいえ、テイエムオペラオー等で有名な和田竜二騎手が引退馬に会いに行く動画をYouTubeで公開して注目度を上げようとしたり、ナイスネイチャ号が所属していた引退馬協会が彼の誕生日に集めた寄付金で他の引退馬を買い取ったり、業界側が全くの無策で放置しているわけでは無い。馬の寿命は大体20年前後であるが、自然死を迎えられる馬は生産数全体に比べて一割にも満たないとされてる中、一日でも長く生かしてやりたいと努力する人々の努力と熱意を無碍にしてはいけない。
- 2023年現在のサラブレッド生産数は約7000~8000頭であり、ここから年間7000頭近くが処分されていることから、プラマイゼロの状態を目指していると思われる。馬産経済はおおよそ20年前の1992年に12000頭が生産されたのを頭打ちに減少傾向にある。全体の重賞数が変わらないのであれば、単純計算で生き残れる確率は上がっているといえる。…それでも勝ち鞍G2の馬が用途変更の末処分になるのが現実ではあるのだが…
…以上のように各勢力が各々の事情と問題点を抱えたままぶつかり合い互いに揚げ足を取り合っているため、マトモな改善運動に発展する素振りは絶望的とされる。
上げ馬
メルズーガをはじめ多くの引退馬の命の上に成立している上げ馬神事が、これほどまでに行政介入を拒みタブー視される原因は「伝統行事だから」という免罪符の存在が文化保護の観点で機能してしまうせいだが、外部の有志が神社の説明文と国会図書館の史料を比較した所、「700年」の謳い文句自体が疑わしいという意見が主流となりつつある。
馬を活用した祭事それ自体は流鏑馬をはじめ日本各地に存在するものの、そもそも当然ながらそれらは背も低く足腰も太い日本在来種を利用したもので、整地された平地でスピードを競うサラブレッドとは明らかに使用用途が異なる。
にもかかわらず昭和中期から客寄せのために迫力あるサラブレッドを使用するという現象が日本全国各地で発生し、それにともなって上げ馬神事も坂や壁の土を盛ってイベント性を盛り上げるという大人の事情が見え隠れする事態となった。(なお、現代でも参観料として一人2000~4000円ほど徴収する)
この時点で開催側が主張する「鎌倉時代から700年続く」という趣旨は覆っており、数少ない文献からはそれまでの上げ馬神事自体は地域共同体が手塩に掛けた農耕馬を境内に上げるあるいは町内をゆっくり巡らせて最後にゆるい坂を登らせる程度の事業であったのではないかとも予想されている。
なお、上げ馬神事の主目的は「豊作占い」であり、「馬が無事に駆け上がってしまっては占いの意味が無い」という判断から坂の上の壁が追加された経緯がある。人の手で成功率を操作できるならばそれは最早占いとして機能しないのでは無いかと編者は思う。
そもそもの話、神聖であるはずの境内で動物の死を強要すること自体どうなのかという意見もある。
日本維新の会で動物福祉活動もしている串田誠一議員が文科省農林水産省等も呼び寄せて質問の席を設けたが、省庁からは「私の地元でも引退馬を祭事に利用しているが、見る人に寄れば虐待と言われかねないのでコメントを控えたい」と非常に消極的姿勢を示された。
最後に
メルズーガ号の冥福を祈ります。
天国のナイスネイチャたちと一緒に、今後の日本引退馬たちの行く末を見守ってくれますように。