今、万感の思いを込めて汽笛が鳴る…
今、万感の思いを込めて汽車が行く…
一つの旅は終わり、
また新しい旅立ちが始まる。
さらばメーテル…
さらば銀河鉄道999…
さらば少年の日よ!
解説
『銀河鉄道999』とは、宮沢賢治の童話『銀河鉄道の夜』をモチーフとした松本零士の代表作。
舞台は、銀河系の各惑星が銀河鉄道と呼ばれる宇宙空間を走る列車で結ばれた未来世界(テレビアニメ版では第1話冒頭のナレーションで西暦2221年と設定)。
999号が停車する1つの惑星につき1つのエピソード、という短編の連作で基本的に構成されている。
なお「銀河鉄道999」のタイトルを素直に訳すと“Galaxy Railway 999”となり、原作初期の頃には(999以外の)車両の側面に「GR」のCIロゴを入れた車両も出ていたが、アニメ化に際して現在の“Galaxy Express 999”に固定された。
アンドロメダ編
宇宙の多くの裕福な人々は「機械の身体」に魂を移し替えて機械化人となり永遠の生を謳歌していたが、貧しい人々は機械の身体を手に入れることが出来ないばかりか、機械化人の慰み者として迫害されていた。
そんな中、無料で「機械の身体」を与えてくれるという星を目指して、主人公の星野鉄郎は謎の美女メーテルとともに銀河超特急999号に乗り込む。
エターナル編
アンドロメダ編から1年後が舞台。鉄郎が再びメーテルとともに999号に乗り、アルテメータ星系にあるという終着駅・エターナルに到着するまでを描く。
惑星アンドロメダの消滅により機械化文明が滅び、元の生物の星に戻った地球。しかし、いつの間にか新たな支配者が現れ、地球人の殆どは従順で食べるだけの無気力な人間にされてしまった。
政策に反対した星野鉄郎は光も届かない地下深くで永久自室幽閉にされていた。そんな鉄郎のもとにメーテルがやって来る。
1996年から執筆が開始され、2004年までに41話が掲載されたが、2005年に松本の漫画家50周年を記念した「ビッグコミックスペリオール」の増刊号に描き下ろしの4話が掲載されたのを最後に連載が休止。松本は「エンドマークはまだつけていない」、「連載は終了ではなくあくまで中断」、「自分の物語は時空を越えて全て繋がった一つの世界で時の輪をめぐる物語として描いている」との発言をしていたが、再開されることなく2023年2月13日に松本が逝去。本作は未完のまま絶筆となった。
アルティメットジャーニー
島崎譲作画の漫画作品。こちらは原作エターナル編とは異なり、明確に劇場版の続編として描かれている。『さよなら~』の一年後なので鉄郎は18~19歳になっている(劇場版1作目が15歳、さよならが17歳)。
ストーリーは『さよなら~』の後、鉄郎が地球に降り立つところから始まる。
戦乱は機械化帝国の崩壊によって徐々に収まっていくが、今度はそれまでの報復とばかりに生身の人間による機械化人迫害が始まってしまう。機械化人も裕福で残虐な者ばかりではない上、惑星大アンドロメダの消滅によりエネルギーカプセルの供給が止まり日々の生活もままならない機械化人が追い詰められつつあった。鉄郎は地球で機械化人専門の医師の助手として働いていた。
地球連邦政府は地球の復興を宣言するものの、一部の富裕層の居住地区以外はまだ荒廃した地域も多かった。
鉄郎は戦乱の終結とともにコスモドラグーンを封印していたが、機械化人の救済に奔走する彼を「裏切り者」と見做した集団に襲われれ、撃たれかけたところをエメラルダスに助けられる。そのエメラルダスから「メーテルが消滅したが、あなたが呼べば戻ってくる」と言われ、再び999で地球を旅立つことになるのだった。
作品内容のイメージについて
TVアニメリアルタイム世代からその後年の世代に至るまで、原作・TV版とは異なる以下の刷り込みがなされていることが多い。
- 機械伯爵は惑星ヘビーメルダーの時間城で斃された。
- 機械伯爵を撃ったのはコスモドラグーンである。
- メーテルの姿は星野加奈江(鉄郎の母)のもの。
- 鉄郎は終着駅でネジの身体にされかける。
- 機関車の声は渋みがかった低い声。
これらはいずれも劇場版で初採用された設定である。原作・TV版では機械伯爵はあっさり第1話で退場(しかもいきなり押しかけてきた10歳児に銃を乱射されて瞬殺される)、この時鉄郎が使ったのは作中世界ではありふれたビームアサルトライフルである。メーテルの姿が星野加奈江のものという設定もない。
発表が劇場版の後となった原作・TV版の惑星ヘビーメルダーには、代わりにハーロックの偽者が時間城に居座っている。また、劇場版には機械伯爵の愛人としてリューズが登場するが、原作・TV版では既に別の話でリューズという人物が登場したため、偽ハーロックの愛人は「リューズの姉のレリューズ」になっている。
ネジの身体にされかけると言うのも本作が先行し、TV版ではネジの身体を強要されてはいない。原作より早くTV版が終了したため、結果的に最後発となった原作では違う形でやはりネジの身体にされかけていた。
また、機関車の声はTV版では一貫して甲高い男性(戸谷公次)が務めていた。しかも劇場版第1作では機関車は口を聞いてすらいない上、劇場版第2作での中の人は機械伯爵と同じだったりする。
本作ほど劇場版とTV版のイメージが乖離し、なおかつ劇場版のイメージが広く浸透している作品は珍しいと言われる。
作品のコアなファンからは「劇場版は鉄郎の顔が違いすぎる」と言われたが、実際、感情移入は15歳の劇場版鉄郎の方がしやすいと言われ(特にTV版は10歳児が銃を扱い大立ち回りをする、大人に説教するなど※小学生ですな言動が多く、感情移入しにくい)、劇場版のイメージが強い理由の一つとなっている。ちなみに、劇場版の鉄郎は原作・TV版の10歳の鉄郎が15歳に成長した姿である。
アンドロメダ編の原作・TV版・劇場版を整理すると、以下の通りになる。
原作 | TV版 | 劇場版 | |
---|---|---|---|
公表媒体 | 週刊少年キング(のち廃刊) | フジテレビ系列(再放送は日本テレビなどでも) | 東映洋画(現在は東映に吸収) |
第1回 | 1977年5・6合併号(1月24・31日号) | 1978年9月14日 | 1979年7月4日 |
最終回 | 1981年48号(11月6日号) | 1981年3月26日 | 1981年8月1日 |
主人公の年齢 | 10歳 | 10歳 | 15歳(2作目は17歳) |
機械伯爵の居場所 | 地球 | 地球 | 惑星ヘビーメルダー |
終着駅 | 惑星大アンドロメダ | 惑星プロメシューム | 惑星メーテル(完結編では惑星大アンドロメダ) |
主題歌 | - | 銀河鉄道999 | 銀河鉄道999(完結編は「SAYONARA」) |
歌手 | - | ささきいさお・杉並児童合唱団 | ゴダイゴ |
意外にも最終回はTV版が最初である。TV版は原作準拠だが、尺の関係で原作にない描写が加筆されたり、表現規制やネタバレ防止などの理由で一部の描写が改変されている。車掌が乗客を宇宙空間に放り出すなど、容赦ない描写の多くはそのままだが、原作より湿っぽい感情表現が増えている傾向にある。また、終盤は原作に追いついたため、松本零士の短編作品のエピソードを翻案したり、TV版オリジナルの話も放映された。
結果的に原作の終了が最後発となったため、原作からのアニメ化は「メーテルの旅」が最終となっている。「石の花」以降は映像化されていない。また、原作最終回は劇場版・TV版双方の要素が反映されている。
主題歌はTV版・劇場版共に同名だが、別の曲である。どちらも高い評価を受けているが、やはり劇場版の方が有名であり、後年の外部作品とのコラボでも、劇場版主題歌が採用されることが多い(例:『新幹線変形ロボ シンカリオンZ THE ANIMATION』コラボ)。
他作品とのリンクについて
劇場版でこそ鉄郎の協力者として描かれているハーロックやエメラルダスだが、アンドロメダ編連載の時点ではあくまでもゲスト扱いで控えめな出演であった。
しかし、エターナル編からは松本零士自身によって積極的な世界観の拡大や設定の変更が行われ2人は鉄郎の協力者として度々登場している。
それ以外にも「新竹取物語 1000年女王」、「ニーベルングの指環」といった作品と物語がリンクしている他、作中に「ヤマト」や「超時空戦艦まほろば」が出てきたこともある。
また、外伝にあたる「銀河鉄道物語」では333(べガラス3号)と思われる機関車が別の宇宙の重力の底で眠りについており、ちょうどノイローゼを起こしていたビッグワンを同じく重力の底で眠りについていた他の機関車たちと共に重力の底へと誘った。
極論的に云えば鉄郎や古代進、ハーロックやトチローも全て遠縁の親戚筋に当たる。原作者回顧展で、その系譜が時系列順に展示されていた。
その他の余談
テレビアニメ版はOPに主人公である鉄郎とメーテルが一切登場しない。これは当時は他に例はなく、当たり前だが今なおほとんど例を見ないものである。
また、中盤以降のOPでは、銀河鉄道の列車が宇宙ステーションから発着するカットが入るが、これはポピーから発売された「未来ステーション オメガベース」の広告を兼ねていた。なお、「オメガベース」は本編には一度も登場しなかった。
本作の『週刊少年キング』連載終了後、松本零士の次回作として『漂流幹線000』が連載された。本作の外伝にも見える表題だが、外伝ではない(ただし、プレイステーション用ゲーム『松本零士999』では、「000」も銀河鉄道の管理下にあるとされる)。運営も「漂流鉄道高速度交通営団」である。メーテルポジションの平田静子は、美人だががさつで酒乱で露出狂なキャラクターで、メーテルの二次創作ネタ「駄目ーテル」の原型扱いされることも。
なお、『漂流幹線000』は『週刊少年キング』休刊により打ち切りとなった。