銀河鉄道999と銀河鉄道物語に登場し、地球とアンドロメダの間を1年に1往復する形で運行される銀河鉄道の列車。銀河超特急999号とも。
基本は動力集中方式で(ただし客車にも補助動力はある)、国鉄C62形蒸気機関車の牽引する旧型客車風の列車をモチーフとしている。客車については後述。
なぜモチーフが蒸気機関車と旧型客車なのかはメーテルの発言によれば2度と帰らないお客のための演出の一環であり、銀河鉄道の存在がオープンになっていない惑星でのカモフラージュの役割も担っている。
外観こそレトロだが中身は最新鋭であり、機関車は人工知能を搭載したコンピュータによる完全自動運転を行い、運行中に判断を要する事項が発生した場合も機関車の人工知能が全てを判断する。勿論万一の際の手動運転も行える。
銀河鉄道の中で最も速い列車であり、自身(後述の機関車を参照)や車掌はそれに誇りを抱いている。公式設定上も宇宙空間において999を追い越せるのはアルカディア号やクイーン・エメラルダス号など限られた存在となっている。
劇場版第2作で幽霊列車に追い抜かれているが、これは黄信号で減速したところを無理やり退かされたもの。公式設定上は貨物列車の幽霊列車は推力では999の倍とされているが、最高速度は同じである。
編成構成
機関車
日本国有鉄道C62形蒸気機関車を模している。原作・劇場版が48号機、TV版は50号機となっている。48号機は松本零士氏が実際にC62 48のナンバープレートを所有していたことから採用された。50号機は実際のC62が49号機まで存在したことから付番された。
48号機は奇しくも常磐線電化完成まで平機関区に在籍しており、日本国鉄最後の特急仕業(『ゆうづる』)を受け持つ1機だった。
炭水車内に通路があり客車から機関車内に入ることができる。見かけのボイラ部分が人工知能を持ったコンピュータの空間で機関車と会話することもできる。機関車の人工知能は「正確かつ安全に999の運行を行う」ことを第一の目的にしている…………はずなのだが、車掌と喧嘩してみたり、不貞腐れて牽引がラフになったり、自分の行動の正当性に疑問を持ってみたり、「幽霊列車に追い抜かれた」と嘆いてみたりと実に人間臭い性格をしている。また本来中立でなければならない銀河鉄道だが、TV版では鉄郎の知人をかばって空中戦に介入したこともある(『キリマンジャロの鳥人』)。ボイラ奥のモヤモヤした部分はCPUが詰まっている部分で、もの凄く発熱するので冷却システムが動作しており、そのため傍目で見ると白く光って見える。
999に限らず銀河鉄道の車両は厳密には「鉄道車両型宇宙船」なわけだが、宇宙空間においても車軸の駆動が推進に何らかの役割を果たしているようで、機関車が起動不能の時に「シリンダーが動かせない」と悲鳴を上げたり、空転で引き出しができなかったり、逆に急減速の際に車輪から火花が散ったりしている。
肝心の作画はと言うと原作初期はモデルに廉価版の模型を使ったことから、実機のC62には存在しない舟底テンダー(炭水車)が連結されていた。後にアニメ化の際、実際のC62の資料が揃えられこの点は解決された。
一方TV版は資料を揃えて制作が始まったが、グロス請けの受注先によってはボイラ径も高さもデッタラメ、「これじゃあ痩せたC57だよ!」というような作画をされることも多かった。今だったら炎上どころじゃ済まねぇんじゃねぇかな……
劇場版第1作では梅小路蒸気機関車館に保存されているC62 2号を徹底的に取材、更に当時稼働する国鉄中~大型蒸気機関車では唯一のC57 1の運転時の状態も観察した。なおかつコストも充分にかけられたため美しいC62の姿が再現されたのだが……
Wikipediaの記事では劇場版第1作では実稼働するC57 1号機を参考にして描かれたため、C62とやや形が違う、となっている。しかし──
これはおそらく「地球・メガロポリスからの出発の際」と「終着駅でホームに進入しながら減速、停車しようとしている時」の真正面を描いた時のボイラの座りの悪さだろう。
- C62形とC57形は同じく給水温メ器を正面前部デッキ上、煙室扉下側に搭載している。ところが、C62は踏み板と前垂れの化粧板で覆い隠しているのに対し、C57はこれがむき出しで、しかも煙室扉に干渉する部分は煙室扉の方がオフセットしている。さらに動態保存運転開始後のC57 1は、この給水温メ器の正面向かって左右の端に金帯を入れており目立つ。なので……
- 第1作のとき、このシーンをC57 1の同じようなアングルから起こそうとした際、「C62にはこんなものなかったぞ」となり、C57形が「貴婦人」と呼ばれていることはその由来(細いボイラを高い位置に配置していること)は、山口線での一般公開運転もあって、割と一般にも知られていたから、そのままこの邪魔っぽいの取っ払ってC62形のデカいボイラを据えたら(デフレクタ板と相まって)「なんか頭より高い肩パッド入れている」感じになってしまったのではないか……と推測できる。他のアングルではここに比べるとそれほど不自然さはない。
- 第1作後のテレビスペシャル版用実写合成素材として、このアングルのC57 1を撮影したフィルムを見て「う~ん、日本最大の蒸気機関車にしてはC57のような力強さが足りないように感じないか?」というような事になって、あるいは国鉄の関係者に「この部品なんですけど……」と聞いて「C62も同じ場所についてますよ」「エッ!?」という話にでもなったのだろう、その点が第2作では是正されて、引き締まった力強いC62が再現できたのではないだろうか。
- 一方で、第1作の段階でC57形一次型の特徴あるラッパ煙突ではなく、返しの付いた歪曲煙突になっているので、ここはC62形の資料が素直に使われている。逆に第2作では砂撒き管が片側2本にされてしまった。砂撒き管が片側2本のC62形は全49両中1機も存在していないが、C57形一次型の中に存在していたらしく、C57 1も(あるいは当時)そうなっていたのではないだろうか。
- とにかく、C62形自体が一時期C62 3がJR北海道で動態化されていたのを除くと、本線で営業運転できる車両が1機もなく、こと動輪径1,750mmの急客機となるとC57形しかないため、勢いそちらに引っ張られるのは仕方ない(現在は2011年に兄弟機のC61 20がJR東日本にいるが……)。
一方、劇場版で起動時に追加された「ガチャチャチャチャチャ…………チャン」という音、あれはロッドの音ではない。並型自動連結器には大きな「遊び」があったため、それが引き上げられる時に金属音が発生するのだ。昔の客車・貨車を牽引する列車の場合、必ず聞かれた。蒸気機関車ではなくとも、EF81形のような電気機関車でも発生した。
だが、テレビシリーズのそれがない起動音は制作側の怠慢とは言えない。と言うのも、C62の最後の見せ場だったブルートレイン20系客車牽引では、20系客車が乗り心地向上のため、「遊び」が連結作業を終えた時点で自動的に引き締められる(という機構を持ちながら、並型自動連結器とは完全上位互換の)密着自動連結器を採用していたため、この連続音はほとんど聞けなかったことに由来する。
アニメでの声優はTV版が山田俊司→戸谷公次。どちらも甲高い口調で(作品が作られた当時の)コンピューターの合成音声風にしゃべる。
劇場版第2作では第1作で機械伯爵を演じた柴田秀勝。実は第1作では機関車が口を聞くシーンはない。柴田氏は「感情がありすぎてもあたたかみがなさすぎてもいけない」(意訳)と感じて演じたとのことである。
『エターナルファンタジー』では山寺宏一。ホント山ちゃんなんでもやるな。
原作エターナル編をベースとする作品では、機関車の実体部品として電子妖精カノンが機関車内に乗務している。『エターナルファンタジー』では999の改造により一緒に生まれたとされているが、原作エターナル編と『アルティメットジャーニー』では鉄郎の以前の旅も知っており、メーテルとも旧知の仲となっている。容姿はざっくり言えば「機関車と同じ黒色の胴体にビキニを纏い黒メットを着用した松本美女」である。体温がボイラーと同調しているので抱きつくと暖かい。
あと炭水車にスリーナンバーのロゴマークが付いているのはTV版のみで、原作・劇場版の999には付いてない。TV版にロゴマークが付けられたのは『スタートレイン』シリーズとして玩具展開する関係と思われる。
客車
原作・TV版の客車のモデルは実在しない。敢えて挙げるとするならモハ52系。電車じゃねーかって? そりゃそうだよ昔は2段窓って『電車窓』と呼ばれてたんだから。日本国鉄の旧型客車での採用例はほとんどなく、例外は70系戦災復旧車(元電車を電車として復元するのを断念してとりあえず客車として使ってた車両)ぐらい。新性能世代を含めてもわずかに12系と50系があるのみである。
劇場版第1作では2等車(ハザ)は主に急行用に運用されたスハ43系がモデルとされた。車両の前後に乗降扉がある、モケットのある座席、向い合せのボックスシート(特急用のスハ44系は2人掛けの座席が進行方向を向くロマンスシート)などから判断できる。……のだが客車も第2作では後ろ側の乗降扉がなくなりスハ44系とチャンポンしたような有様になってしまう。
劇場版『エターナル・ファンタジー』では鋼体化改造車オハ61系がモデルとなったようで、車体に実際に形式が書かれているのを確認できるシーンがある。
展望車
劇場版第1作で、動態保存車マイテ49 1号を資料として採用。以降、原作でも連結されるようになった。
1等車
メーテルが「1等車の……グリーン車のお客さんだわ」と言っていることから新制1等車(ロザ)扱いと思われる。
開放式のリクライニングシートが並ぶ車内は、劇場版第1作で、天井が空調仕様の蛍光灯(風)になり、化粧板なども樹脂製風になっていることから冷房改造後のスロ54形かスロ62形がモデルと思われる。ツッコミ出すとキリないので以上。
劇場版第1作では他に個室の車内も描かれているが、モデルはおそらくマイネ40形の個室部と思われる。
寝台車
原作では描かれていないが、アニメ版では個室寝台車のベッドで鉄郎が目を覚ます描写がある。
『アルティメットジャーニー』では鉄郎が寝台車のベッドで寝起きするシーンが何度か登場する。個室ではなくカーテン仕切りのB寝台である。
食堂車
テーブルのある4人がけボックスシートが並ぶ。外見は他の車両と描き分けられていない。
調理は食材を停車駅ごとに積み込むのではなく、様々な元素を元に食材や料理を再現する調理器によって行われる。車掌曰く「合成なんて生半可なものではなく、完璧に本物を再現できる」。ただラーメンは合成ラーメンらしい。
ガラスのクレア殉職後、長く食堂車専従の乗務員は不在となった。このため食堂車に来客があると車掌が食堂車の業務を代行する。原作終盤・劇場版第2作ではメタルメナが後任として赴任する。
食事が無料か有料なのかははっきりされていないが、少なくとも原作のメニューには金額が書かれており、劇場版1作目では食事が終わった後にメーテルが「お金を払っていく」と言っている。
図書館車
原作で図書館車そのものは描かれていないが、図書館車から借りた書物を鉄郎が読む描写は存在する。
TV版では図書館車が描かれており、同じ車両の中に本棚とボックスシートの閲覧席が設置されていた。
装甲車
「超時間重力砲」あるいは「ブラックホール・キャノン」なる三連装の砲塔が車体の上下左右に1基ずつ計4基実装されている。ただ砲塔同士が接触するので実際には上下か左右のどちらかしか同時には使えない模様。
威力は当たれば一溜まりもないレベルだが、999自身が組み込んで戦ったときには相手が悪すぎた(だってエメラルダスだもんよぉ……)こともあり無力化されてしまう。また『卑怯者の長老星』に999が虜になった時はこれを連ねた装甲列車が最初救出に向かったが、惑星からのビーム砲一発で編成まるごと破壊されてしまった。つまり作中役立ったことは一度もない。どちらかというと宇宙海賊の出やすい宙域で海賊避けの威嚇用として連結しているようである。
銀河鉄道物語での999号
無印第1話で有紀学の兄、有紀護が空間鉄道警備隊入隊に際してタビトからデスティニーへ向かうために乗車。客車の窓にシルエットのメーテルと鉄郎が写っている。編成は最後尾に展望車を連結する劇場アニメ仕様となっている。
その後の登場はなかったが、OVA忘れられた時の惑星ではメーテル・鉄郎・車掌の3人も含めてメイン級の扱いをされる。ディグエット駅発車後に謎の光を浴びて車両全体が急速に腐食。動力系も停止した999は近傍の惑星ヒーライズの重力に引っ張られる形で惑星地表へと墜落した。
Nゲージの999号
マイクロエースが2000年にNゲージで製品化した。テレビシリーズ仕様と劇場版仕様の2種類があり、後の改良版にも引き継がれている。
セットには鉄郎、メーテル、車掌、ハーロックのフィギュアも付属している。
余談
「銀河鉄道株式会社には000~1000までの1000編成の列車が存在している」
...エターナル編でレイラ・ディスティニー・シュラが語ったこのセリフだが、この台詞には矛盾がある。000~1000まで1編成ずつ欠番なく入れているのであれば全部で1001編成である。(作中でもレイラが語った直後、有紀護がツッコんでいる)
その際レイラが語ったのは「999号は特別列車なのであれは除外されています」。
...この言葉が表す意味とはなんなのだろうか?
これはおそらく999が元は「機械化惑星の部品にする若者を集める」というプロメシュームの意向で運行されていた列車、言うなればメーテル用特別列車だからであろう。ちなみに機械帝国は銀河鉄道の筆頭株主である。
そもそも銀河鉄道の営業エリアは天の川銀河内であり、アンドロメダ銀河まで運行する列車は999のみである(千葉県の本八幡まで運行する都営新宿線みたいなもの)。さらに営業運転は下りのアンドロメダ行きのみで、上りの地球行きはメーテル(とメーテルが認めた者)しか乗車できないという規程もある。どう考えても銀河鉄道と無縁の惑星に駅があるのも、おそらくメーテルが連れている若者をテスト、もしくは鍛える目的で停車させているのであろう。
ちなみに一般乗客は999の全線パスを持っていても終点までは乗車できず、途中下車していなければ終点の手前で抹殺されていたようである。もっとも機械帝国にしてみれば一般人が機械帝国の首都惑星に行こうなんざとんでもなく不穏分子なわけで、抹殺されても仕方ないのだが。
そんな999号も今では機関車から新幹線へとパワーアップしている。