概要
星野鉄郎をかばって殉職した、クレアの後任として、999号の食堂車ウェイトレスとして乗り込む機械化人。
原作漫画と旧劇場版第2作『さよなら銀河鉄道999』に登場するが、名前以外はまったく共通点がない。さらに、原作では松本御大の悪い癖で劇場版から取り入れたは良いが、途中で放り出してしまい、結局事実上短期間のスポット登場である。
この為、本項では主に『さよなら銀河鉄道999』のメタルメナについて扱う。
人物像
容姿
名前に「メタル」と入っているだけあって、身体の表面は金属質になっている。ただ、所謂“メカスジ”はなく、生身の人間同様にしなやかに動いている。身体の部分部分にインジケーターやメーターが配置されている。
『999』シリーズの他の機械化人には目・鼻・口がメーターになっていたりする者も多いが、彼女は普通に目・鼻・口が配置されている。表情もほぼ生身の人間同様に変化する。手指もしなやかな女性らしいラインの人間の手である。
一方、脚部は足元まではやはり女性らしいラインだが、足はヒールを履いた感じになっている。頭部はストレートのセミロングヘアの髪を模している。
整った顔立ちとスタイルと言ってよく、美女と呼んで差し支えないと思われる。
性格など
温厚なクレアとは対照的に、周囲に対して冷ややかな態度で接する。乗客であるはずの鉄郎に対しても、口調こそ丁寧だが慇懃無礼な口利きで、自身の思っている事を構わずに口に出してしまう。
とは言え、これらはクレアとは逆の意味で人間らしい性格と言える。
価値観についてもガラスの身体を嫌がっていたクレアとは対照的で、機械化世界を素晴らしいものと思っている。本シリーズの機械化人にありがちな、生身の人間を見下す傾向がある。食堂車で久しぶりにビフテキを食べようとする鉄郎の前で、生身の人間の有機物を主とした食事を「非衛生的」と言ってしまったりする。
999への着任は、本人の希望。志望理由は「この世で一番素晴らしいものを手に入れる為」となんとも曖昧なもの。
この時999は(前作の)終着駅の喪失から“行先不明”になっており、車掌さんの言によると、他に適当な人材がいなかったらしい。
クレアからCVを続投した麻上洋子は、これらの要素を踏まえて「ツッパった声で演じてます」とインタビューで答えている。
能力
指の先からレーザー状の光線を発する。破壊力があるが、本来はレーザーメスのように使うものと思われる。しかし、機械化帝国首都では武装隊の隊長を、両手の指から発する光線をあわせて撃ち込むことで倒しており、瞬間的にコスモドラグーン並みの威力にまで上げることができるようだ。ただし、ほとんどエネルギーを使い果たしてしまうのか、その後はほとんど身動きができなくなってしまう。
原作漫画版
フルネームは“S・F・メタルメナ”。途中駅から乗客として乗り込み、鉄郎や車掌達が食堂車で盛り上がっているところに水を差す。
その後、銀河鉄道本社から発行された「本人が希望する列車の食堂車にウェイトレスとして配属される」というムチャクチャな辞令を持って999の食堂車に着任する。これは列車の責任者である車掌や機関車にも拒否権がないらしい。
劇場版のメタルメナが名誉毀損で訴えたら勝てるんじゃないかってぐらい酷い人物。
容姿は機械化人らしいところはあまりなく、癖のあるショートヘアの中性的な女性。だが三白眼に団子鼻と、お世辞にも美女とは言い難い。
先の辞令を手にするには、当然銀河鉄道本社の食堂車ウェイトレスのカリキュラムを受け、最終試験を優秀な成績で合格する必要がある。……はずなのだが。
乗務中も、鉄郎に嫌味を言う、なんていうのは可愛いもので、乗客の私物を弄って結果車内設備を破壊する、その上車掌に注意されても暖簾に腕押しで、悪態をつきながら投げて返すなど、コイツのどこが優秀なのか銀河鉄道の担当者はちょっと車両工廠裏来いやと言いたくなるほどのレベル。
正直言ってしまうと、ここまで魅力に欠け、なおかつ物語本筋に必然性のないキャラクターは書(描)く人間も全然楽しくないので、短期間でフェードアウトする事になったのも無理のないことと言えるかもしれない。
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劇場版メタルメナの目的と結末
メタルメナの欲した「この世で一番素晴らしいもの」とは、ずばりメーテルの身体(つまり、星野加奈江の容姿)である。そのため、メーテルが乗り込むだろう999に乗り込んだということになる。
一度、メーテルがコントロールセンターの自壊に巻き込まれて倒れ、列車内救護室で安静にしていた時、その目的を達成しようとした(が、不意に鉄郎が現れたことで未遂に終わる)。
一方、機械化世界に対する礼賛は本心からのものらしく、終着駅・惑星大アンドロメダに到着したときも、一般人が生活している光景、そしてその様子を「死の恐怖もない、飢えの恐れもないユートピア」「(機械化)人間は無限の可能性を持ち続ける」と表現する黒騎士ファウストの言葉にも、「素晴らしい」と礼賛の言葉で応えている。
この時点の銀河鉄道(大銀河本線)がファウストの制御下にあったことを考えても、999への配置はファウストの思惑があったのかもしれない(詳細は本人の項目にて)。
メーテルによって機械化世界の本性(機械化人の食料は生身の人間の命である)を暴かれても、最初はそっけない態度をとっており、鉄郎の戦友・ミャウダーがその犠牲になったことが明らかになっても、悲しむ鉄郎や車掌に対して「人が死んだぐらいで泣くなんて」と蔑むような発言をしていた。だが、実際にはこれらの言動は、精神に異常を来すほど惨たらしい事実を知った時の防御行動であったようにも見える。
実際、メーテルに「あなたが死んだ時、あなたの為に泣いてくれる人はいるの」と言われ、さらに鉄郎に「これを見てもここが楽園だって言えるのか!?」「(生産されたばかりのエネルギーカプセルを鉄郎に突きつけられ)食え! 食ってみろ! 命の火だぞ、食わないのか!?」と迫られるが、彼女がそれを口に運ぶことはなかった。
この事実は機械化人が生身の人間を見下す傾向の根幹を成している(そうでなければ自身の命を繋ぐことができない)。だが、彼女に限らず、機械化人であっても一般人には秘匿されているのである。
そして、「機械化世界の裏切り」を目の当たりにした結果、コスモドラグーンで「命の火を抜き取る工場」を破壊しようとする鉄郎の背後に武装隊が迫った際、半ば逆上して隊長を射殺する。その代わり自身も身動きができなくなってしまい、その場に伏してしまう。
駆け寄った鉄郎が泣いているのを、指先でその涙を感じ、始めて鉄郎に「私の負け」と自分の弱さを晒した。
しかし、その時点では瀕死ながらも絶命に至っておらず、「サイレンの魔女」の襲来で崩壊する惑星大アンドロメダから、鉄郎達が工場から救い出した人間とともに脱出する999の、C62 48号のテンダーに転げ落ち、一度は助かったかに見える。
だが、「サイレンの魔女」が機械化エネルギー(機械化人の生命活動一切に相当するもの)を吸い上げており、999がそのために「サイレンの魔女」に引き寄せられているのではないかという、キャブのメーテルと車掌の会話を聞き、自らテンダー後方から身を投げ「サイレンの魔女」へと吸い上げられるという最期に至った。その最後の台詞が「さようなら鉄郎さん…」だったので結局彼女も鉄郎に惚れたと言える。
登場時はクレアと対照的な存在だったメタルメナだが、最後はクレアと同じく自己犠牲の為に一度は助かった命を自ら棄てるという結果になった。
一方で、クレアが鉄郎を庇って倒れたことを鉄郎やメーテル・車掌が認識しているのに対し、メタルメナはその「本当の」最期は誰にも知られず(この時、機関車の知力燃焼制御やアルカディア号のメインコンピューター(大山トチロー)も「サイレンの魔女」の吸引対象になっていたため、停止状態になっていた。クイーン・エメラルダス号はどうしていたのかとか聞くな)に遂げたという点では、最後までクレアと対照的だったとも言える。
『さよなら銀河鉄道999』の観客動員数が第1作より少なく、またリピート上映やテレビ放送も第1作ほどされなかったため、「旧劇場版2作のイメージが強い」とされる『999』にあって、メタルメナの存在は長く「知る人ぞ知る」存在だった。エターナル編で主要キャラクターとして復活させてもらったクレアとは雲泥の扱いの差である。
しかし、原作エターナル編を旧劇場版2作前提の世界でリブートした『銀河鉄道999 Another Story アルティメットジャーニー』(作画:島崎譲)では、鉄郎が「機械化人も人の心を持った人間」と回想するワンシーンではあるが、第1作のリューズを差し置いてアップで描かれている。