作品解説
1995年に公開されたアメリカ映画で、DCコミックスの『バットマン』の実写映画化作品。
1992年公開の映画『バットマンリターンズ』の直接の続編であり物語上の世界観は地続きだが、スタッフ・キャスト共に一新されており、それまでとは大きく方向性を変えた作品である。
配給はワーナー・ブラザース。
ティム・バートン監督の作家性が炸裂した前作は映画作品としての評価こそ高かったものの、誰も報われないビターな結末や少々マニアックで陰鬱な作風、暴力的で性的な要素などに対して「子どもも観るヒーロー作品として相応しくない」との批判も多かったため、本作は打って変わってファミリー向け作品へと方針転換がなされた。
前作まで監督を務めたティム・バートンは製作のみの参加となっており、本作では『評決のとき』等で知られるジョエル・シュマッカーが監督として抜擢された。
また、主演もマイケル・キートンから『トップガン』のアイスマン役で名を上げたヴァル・キルマーに交代した他、ヴィランにトミー・リー・ジョーンズとジム・キャリーを、ヒロインにニコール・キッドマンを配した豪華出演陣となっている。
舞台となるゴッサム・シティの造形も、前作までの1900年代初頭のアメリカを思わせるゴシック・レトロなものから、極彩色のネオンに高層建築と石造建設が立ち並ぶゴシック・パンク調のものへと変更され、バットモービル等のガジェット類もよりわかりやすく近未来的でSF感を強めたデザインとなった。
その結果、本作はトラウマに苦悩するバットマンや狂気を抱えたヴィランとの対決等のダークな要素を含みつつも、ケレン味の効いたアクションやカメラワーク、軽妙な台詞回し、わかりやすい勧善懲悪の構図などを押し出した明るい作風となり、明朗快活な娯楽ヒーロー活劇として完成した。
公開後は前作以上のヒットを記録し、全世界での興行収入は3億5000万ドルを達成。第68回アカデミー賞にて撮影賞、録音賞、音響編集賞にノミネートした他、トミー・リー・ジョーンズとジム・キャリーのヴィラン二人組の終始カッ飛んだ演技も高い評価を得た。
しかし商業的には成功を収め、メインターゲットであったファミリー層からの評価も上々ではあったものの、やはり方向性を大きく変えたことによる戸惑いの声は少なくなく、ファンや批評家からの評価は微妙。
「バットマン特有の重厚なダークさが喪われてしまった」「中身が無い」「そもそも作風が『バットマン』に合ってない」といった批判もあり、賛否両論の一本である。
1997年にシリーズ完結作となる続編『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』の逆襲が公開された。
物語
犯罪都市ゴッサム・シティ。
2つの顔を持つ異常犯トゥーフェイスは、自分の顔を損傷した事件で自分を助けられなかったバットマンを逆恨みし、街中で暴動を起こしていた。
一方、バットマン=ブルース・ウェインの経営する大企業ウェイン・エンタープライズでは、エレクトロニクス部門の研究員エドワード・ニグマが、テレビ信号を直接人間の脳に送る3Dホログラム装置「BOX」の開発を進めていた。
しかし、脳を人工的に操作するマインドコントロールには倫理上問題があると危惧して、ウェインは融資を拒否。失望したニグマは工場長を自作の実験台にして殺害し、会社を退職。自らをなぞなぞ怪人リドラーと名乗り、トゥーフェイスに「BOX」を利用したゴッサム・シティ乗っ取り計画を持ちかける。
幼いころに目の前で両親を殺害されたトラウマによる幻覚に苦しんでいたブルースは、カウンセラーである若き女性精神科医チェイスと共に空中ブランコ乗りのディック・グレイソンが出演するサーカス小屋にデートへと出かけるのだが…。
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