解説
「落とし噺(話)」、略して「はなし」とも言い、プロの演者を「落語家」あるいは「噺家」と言う。
江戸時代､都市に人口が集積することによって芸能として成立した。東京や大阪にはプロの落語家を多数擁する協会が存在し、それぞれ江戸落語、上方落語と呼び分けられる。また、汎用的に落語といい、その中で大阪弁を用いるものを上方落語と呼び分けている場合も少なくない。
江戸落語は芸事の感が強い話芸である。用いる道具は扇子と手拭いだけ、衣装や音曲に頼ることは基本的になく、身振りと語りのみで物語を進めてゆく独特の演芸で、これは芝居小屋の座敷芸として広まったためである。本来「落語」とは落語家が行う演目（ネタ）のなかでも滑稽を中心とし、落ち（サゲ）を持つ「落とし噺」のことを指したが、笑いのない人情噺・芝居噺・怪談噺落語の範疇に含まれ、雑俳、やかんなど明確なストーリーがないものも存在する。昔は大人向けの艶笑噺も多かったという。
上方落語は元々は屋台での見世物興行から始まったため、客寄せの名残として見台と拍子木と膝隠を用い、「はめもの」というお囃子を演出として積極的に使う。また、明治から昭和初期にかけて漫才人気に圧されながらも、必死に生き残ろうとした結果、笑い噺に特化した話芸となり、昭和初期にはラジオ番組によって人気を復活させていった経緯があるため。また、枕にて延々と話題に即した雑談を語り演芸場に人を呼び集めるというスタイルも、元々は上方から始まった。
近年は落語界の東高西低が顕著になってきている（上方落語四天王が全員この世を去り、その継承者となっていた人気噺家も高齢化や死去が起きているのと、将来有望の若手が上京して活動しているケースも増えているため）。
高度な技芸を要する伝統芸能であるが、素人芸としても比較的ポピュラーな存在であるなど敷居は決して高いものではない。このため歌舞伎といったかつての大衆娯楽が、その敷居の高さゆえに変質した今も江戸時代・明治時代の古典落語が定番として広く演じられている（そのほとんどは上方から移入されたものをアレンジしたもの）一方､現代を舞台とする新作落語も作られつづけている。
