「どうしたのよ?そんな感情的になるなんて、父さんらしくないわ!」
「本当はキオのことが心配でしょうがないだけなんでしょう?」
「理屈でごまかさないで!みんな父さんの気持ちはわかってる。もっと素直になってよ!」
人物像
第2部から登場。
フリット・アスノとエミリー・アスノ夫妻の娘であり、アセム・アスノの妹で、キオ・アスノの叔母。
彼女はアセム編開始まで全く存在が公開されていなかったため、視聴者を驚かせた。
第2部では学生であったため出番も少なく物語的にも裏方に徹していたが、医療ボランティアに関わってロマリー・ストーンと出会い、彼女に影響を与えた事が会話で語られる。
第3部においては軍に志願し、戦艦・ディーヴァの医療班長となっている。アスノ姓を名乗っている為、おそらくは未婚と思われる。
キオがヴェイガンの捕虜になってしまった時、フリットは冷静さを見失って完全に取り乱し、大破したガンダムの前で大騒ぎしていたが、彼女が前述の言葉で一喝して辞めさせる。最愛の孫が悪漢に拉致されて慌ている爺ちゃんを叱って黙らせるなんて、実の娘以外には誰も出来なかったかもしれない。
実際にこの時のフリットは後先も考えずに、艦長のナトーラ・エイナスに無理難題な指示を出した事で、危うくユノアやウェンディを始めとするクルー達全員を危険に晒しかけており(少年時代のアセムもまた彼と同じ失態を2度も犯し、フリットやミレースから𠮟責されている)、しかも謝罪するどころかそれを棚に上げて、命令に従わなかったナトーラを(「艦長たるものクルー全員の命を預かる責任がある」と説いておきながら)一方的に叱責し、更にはクルー達にまで当たり散らすという、元司令とは思えない身勝手ぶり。
こんな父親を見たら、ユノアがキレるのも当然である(しかも劇中における彼女とフリットの会話シーンは何とここだけ。「同じアスノ家の血を引く人間」だというのに、何とも空虚な親子関係である)。
小説版
「さて、父さんはどうするのかしらね。アスノ家の血がどうとか言うのに、私をガンダムに乗せるなんてことを全く考えない、あの男権主義者は」
フリットのせいで両親を憎むようになる上に、実兄であるアセムに対して禁断の想いを抱いていたという、とんでもない設定が追加。しかも喫煙者。
キオをはじめ家族を戦争に巻き込み、一斉検挙によって多くの人間をギロチンにかけて人生を狂わせるというフリットの独裁ぶりによって完全に親子関係が決裂してしまっており、成人後は医師になるという理由から実家を出ている。にもかかわらずアスノ姓を捨てていないのは、ボランティアの資金を集めやすいためらしい。
これにより、「シャナルア・マレンの裏切りに気付いていながらそれを無視する」「アセムを通じてビシディアンと密かに結託し、ディーヴァの情報を流す」など裏で暗躍。フリットが死ぬときは「息絶える間際にどれだけの人間がアスノ家のせいで不幸になったか朗読してやる」つもりだったという。
しかし、ユノアがフリットを嫌う最大の理由は、自分を蔑ろにしたコンプレックスである。実際にアセム編でも「兄には期待を寄せているのに対し、自分は期待などされていないのではないか」と呟くシーンがあり、これが伏線になったともいえる。
キオに対しては「瞳の色がアセムに似ている」だけの理由で可愛がっており、海賊となったアセムとのすれ違いに悩む彼に対し、「大事なのは話し合うこと」「あなたは子供なんだから傷ついたりしてもいい」と諭すなど、完全に善良さが失せたわけではないようだ。
その後、アセムと結託していた事がフリットにバレたにもかかわらず罪に問われる事はなかったが、そのせいで「自分はその程度の価値しかないのか」と逆に失望してしまい、完全に家族愛が失せてしまう(その際、ディーヴァを降りる形で戦線離脱している)。だが、そんな彼女を奮い立たせたのは、あれほど自分が憎んでいた母親の言葉だった。彼女と義理の姉であるロマリーから、「キオの為に自分達が作ったガンダムを正しい使い道に導く」ために再び戦地へと立つ決意を目のあたりにしたことで立ち直り、共に再びバロノークへ搭乗する。
最後は罪を背負って自殺しようとするフリットを「安易な道を進むのではなく、自分や兄と共に屈辱の生を選べ」と言って止め、キオを始めとする若い世代の為に世界の再建を促した。
評価
本作の小説版において、アニメ版から設定が大きく変わったキャラクターは多いが、中でもこのユノアの変貌ぶりに驚いた人も多く、読者からは賛否両論となっている。
確かにアニメ版を称賛するファンなら「どうしてこうなった」と言いたくはなるが、一方で逆に不満を抱く視聴者からは「これでいい」「寧ろアニメ版よりもキャラが生かされている」「フリットの行動を考えたらこうなるのも当然」という声もある。
実際、小説版に限らず、アニメ版の劇中においても前述の失態に加え、フリットはキオに「生きる術を身に着ける為」としてガンダムに乗せた一方でユノアには全くそれを身に付けさせないばかりか、海賊行為を行ったアセムを散々非難しておきながら、そんな彼に加担したユノアを一切咎めないなど、明らかに彼女を蔑ろにしている様な描写が見られる。
そして何より、小説版のフリットはその冷徹非情ぶりにより、多くの人々を一斉検挙でギロチン処刑を下したせいで、ユノアを含むアスノ家は犯罪一家同然の扱いを受けてしまっており(実際、劇中のキオもウットビットを始めとしたディーヴァクルーからフリットに対する八つ当たり同然の仕打ちを受けてしまっている)、こう考えるとフリットを恨まない方がおかしいだろう。
また、アニメ版のユノアにおいても身内の誰よりもキオの傍にいたのにもかかわらず、キオを戦争に駆り出すフリットを止めないばかりか、逆にキオを叱ってフリットを庇うという、余りにもキオに対する配慮が欠けている部分が多く、こちらのユノアに至っても全く問題点がないとは言い切れず、「寧ろ小説版の方がまだキオの事を考えてくれているのではないか」という声もある。最も前述の通り、ユノアがキオを嫌わないのは「瞳の色がアセムに似ている」という理由なだけなので、そうでなければキオの事も嫌いになっていた可能性はあっただろう(因みにキオはⅩラウンダーの特性故なのか、少なくともバロノークでユノアと再会した時点ですでに彼女の本質に気付いていた模様)。
いずれにせよ、兄のアセムや甥っ子のキオとは違ってフリットからは見向きもされず、それ故に父にかまって欲しいあまり身内やヴェイガンとはまた異なる罪を犯してしまったユノア。
ある意味、彼女の行動は父・フリットへの愛情の裏返しだったのかもしれない。
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