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UH-60の編集履歴

2013-09-04 21:14:05 バージョン

UH-60

ゆーえいちしっくすてぃ

アメリカの中型多目的ヘリコプター。アメリカ陸軍ではUH-1の後継として採用され、他にも多くの国が同様に採用している。UH-1よりも搭載力にすぐれており、機材を追加して改造すれば救難機として使うこともできる。通称は「ブラックホーク」だが、他にもさまざまな名前で呼ばれている。

アメリカ陸軍UH-1の代替として要求し、1970年代より開発された中型多目的ヘリコプターである。


ベトナムの戦訓

UH-1ベトナム戦争ではじめて実戦投入され、非常に多くの実績をあげてヘリコプターの有効性を世界に知らしめた傑作機である。だが、

・高温多湿な環境、とくに熱帯でのパワー不足

・被弾に弱く、場合によってはマシンガンの一連射でも致命的な損傷に繋がる

・ドアに機銃手を配置(「ドアガナー」とも)すると乗降の邪魔になる。しかし居ないと乗降時に敵を制圧できず、危険になる(これはUH-1Dである程度解決されたが、根本的にはまだ不足だった)

といった改善点も多く寄せられた。


そこでアメリカ陸軍は、これらの戦訓を取り入れた、まったくの新型ヘリコプター開発を要求する。

時は1972年。さしものアメリカも戦争に疲れ果て、翌年にはベトナムから完全に撤退するという年である。


UH-1の後継機

もちろん、こういった改善点(要求仕様)をすべて満たすためには従来機からの改良型では追いつかない。

新型機はまったくの新型エンジンを備え、さらに被弾に備えて双発とされていたからである。当然ながら主要な動力・操縦系統には防弾措置がとられ、さらにドアガナーには乗降の邪魔にならないよう、専用席が設けられた。

他にも輸送機で空輸する事も想定されており、C-130の貨物室にあわせて胴体サイズも決められた。


こうして完成したUH-60はさっそくライバル機であるYUH-61を打ち負かし、制式採用が決定した。1976年のことだった。


「黒い鷹」

なお、アメリカではヘリコプターの愛称に先住民族の部族名を使う事としている。

UH-60はやや例外とも言える命名で、これはソーク族酋長につけられたあだ名から取られた。

(かなり手強かったようである)


輸送能力

兵員

採用されたUH-60は、乗員以外にも歩兵11名(アメリカでの1個分隊)が無理なく搭乗できる輸送力を持っている。これはUH-1と同等だが、機体は格段に大きくなっているため、必要ならもっと搭乗させる事もできる。


貨物

他にも機外吊り下げなら105mm榴弾砲M102(現在は105mm榴弾砲M119に更新。もちろんこれも空輸可能)を運搬でき、現在では約4tまでの貨物が輸送可能となっている。


武装

本機は本格的な戦闘ヘリではないため、武装はすべて後付け・外付けである。

戦闘が想定されないときは何も搭載せず、(武装の重量分を輸送力などに振り分ける)

想定される時には下のような武装を搭載する。


ドアガンナー(乗降時の制圧火力)

当初、武装にはドアガンナー用の7.62mm機銃M240が2門搭載されていた。

この機銃は信頼性が高くて軽かったが、実戦では火力に不満があったらしく、のちに7.62mmガトリング砲M134や12.7mmガトリング砲GAU-19も搭載されている。


わが日本のUH-60JAではドアガンナー席に軽量なMINIMIを備えるほか、必要ならば乗降ドアをつぶして12.7mm機銃M2の銃座を設けることができる。

(日本ではM240を採用していないため)


ESSS(External Stores Support System:外部搭載支援システム)

機外に兵器搭載用のスタブウィング(小翼)を追加し、戦闘任務の補助に使う事もできる。

その際は

・AGM-114「ヘルファイア」対戦車ミサイル

・70mmロケット弾ポッド・ハイドラ70

・各種ガンポッド

といった兵器を搭載でき、他にも増槽(増加燃料タンク)を搭載して飛行距離を増やす使い方もできる。


なお、UH-60はミサイル照準能力を持たないため、セミアクティブレーザー誘導型のAGM-114を運用する際には

・別途、AH-64OH-58より照準レーザーを照射し、誘導してもらう

・地上の観測班より照準レーザーを照射し、誘導してもらう

等の工夫が必要。


(対戦車戦闘において)本来戦闘用でないUH-60まで出張ることはまず無いので、これはあくまで「あったら楽だろうな」という要求だったのだろう。


派生型

UH-60シリーズは現在も発展の最中にあり、各種改良型や特化型が開発されている。

下の一例を紹介する。


UH-60L/M

UH-60の改良型。どちらもエンジンを換装し、飛行制御技術を発展させている。

L型はA型の、M型はL型の改良型。


CH-60E

アメリカ海兵隊に提案された艦上型。

だが海兵隊は小型で小回りのきくUH-1を気に入っていたらしく、結局はUH-1(エンジンを2基に増やしてパワーアップしたN型)やCH-46「シーナイト」の改良型(E型)などを採用してしまった。


なお、これらの後継として現在はV-22への入れ替えが進んでいる。


HH-60E/G「ペイブホーク」

UH-60を基にした救難機

ただの救難任務だけでなく、戦闘中の救難(戦闘救難任務)にも対応するため、プローブ&ドローグ式空中給油受油装置のような、特に目立った改修が行われている。

のちに特殊作戦用輸送機MH-60にも発展しており、シリーズ中でも特に危険な任務を行っている。


MH-60A/L/K/M

暗視装置を備えてドアガンをM134に強化。

夜間低空侵入のために電子機器が改良され、L型の一部からは空中給油装置が取り付けられるようになった。中には支援用に武装を強化した機もある。(ESSS仕様)


これらはすべて陸軍の第160特殊作戦航空連隊(通称「ナイトストーカーズ」)で運用され、その実態は謎のベールで覆われている.


SH-60B「シーホーク」

駆逐艦巡洋艦に搭載するための「軽空中多目的システム(LAMPS) 」。

艦隊の戦闘力を補助するため、対潜水艦任務以外にも多くの役割を担っている。


例えば水上艦に対艦ミサイルを発射することもあるし、他に救難や輸送のためにも使われる。

要は「艦隊の便利屋」であり、そのために機材には場所をとらないソノブイが採用されている。

現在では無人ヘリコプター(MQ-8)への転換が構想されているが、まだ暫くはSH-60Bが利用され続けることだろう。


SH-60F「オーシャンホーク」

SH-60Bが「便利屋」だったのに対し、こちらは空母艦隊内周の水中警戒を担う対潜水艦捜索・攻撃機。

そのために対水上捜索レーダーなどは撤去されており、かわりに探知精度に優れる吊り下げ式ソナー(ディッピングソナー)を搭載している。敵潜水艦を発見したら即攻撃し、空母を脅威から守るのが主任務。


HH-60H「レスキューホーク」

海軍のSH-60を基にした戦闘救難機。

SEALsを敵地に侵入させる任務も担っている。


HH-60F「ジェイホーク」

沿岸警備隊の救難機。こちらはより純粋な救難機となっている。

武装は可能だが、必要になる事はまず無い。


VH-60N「ホワイトホーク」「プレジデントホーク」

アメリカ海兵隊の運用する、政府高官専用輸送機。

旧式化著しいVH-3の後継として採用されたが、乗り心地はVH-3までは及ばない模様。

(おそらく低い天井のせい)

輸送機での空輸も出来るので、外遊などの際にはよく活躍している。


日本において

航空自衛隊海上自衛隊陸上自衛隊すべてが運用している。


UH-60J

航空自衛隊海上自衛隊で運用されている救難機

UH-60Jに限らず、日本ではETS(External Tank System)を使って燃料搭載量を増やしているのが特徴。


SH-60J

SH-60Bを日本向けに発展させた機。

電子機器のほとんどは国内で開発されたもので、さらにディッピングソナーを備えている。


SH-60K

SH-60Jの改良・後継で、搭載電子機器の内容を整理して機内容積をうまく稼いでいる。

用途はさらに広がっているが、予算の関係で配備は中々進んでいない。


UH-60JA

本家のUH-60に相当する、陸上自衛隊むけの汎用ヘリコプター。

ドアガンナー用にMINIMIが装備されており、乗降ドアの機能を殺せば12.7mm機銃M2の銃座を設けることも可能。本来はUH-1の後継となる筈だったが、価格が3倍と高価なので、現在のところは両方が配備されている。


まとめ

現在、UH-60(と派生機)は世界の軍・政府機関において広く用いられている。


殆どの場合は陸軍の兵員輸送機として使われているが、

中には傷病者を後送するために医療設備を設置した機(UH-60Q,S-70A-L1など)、

または捜索救難機(HH-60G,S-70-27など)がある。

コロンビアなどは攻撃装備を追加し、AH-60L「アルファサード」として対地攻撃にも使用しているという。

(この場合、正確には強襲ヘリと言ったほうが正しいだろうか)


UH-60はUH-1よりも数段高価だが、それだけ高まった能力により、世界中で必要とされているのである。

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