概要
M113は1950年代後半から設計が開始され、1960年に採用された装甲兵員輸送車である。
アメリカ軍で最初の「戦場のタクシー (Battle Taxi)」の概念のもと、機械化されつつあった戦場に兵員を輸送する近代的な装甲車として設計された。2名(車長と操縦手)で運用でき、加えて11名の兵員を輸送することができる。後部には大型の昇降ランプが設けられ、兵員の迅速な降車展開を可能にしている。主兵装はシンプルで、車長キューポラに搭載されたM2重機関銃である。副兵装は、作戦に応じて柔軟に決定される。
M113の車体は、鉄鋼を使用した時と同じ程度の強度を持つ、航空グレードのアルミニウム(12 ~38mm厚)を使用して製造されており、13トン以下という大幅な軽量化に寄与している。これにより空中投下や水上浮行も可能である。ただしこのアルミニウム合金装甲はRPG-7などの対戦車兵器や地雷に対する脆弱性が明らかになっており、増加装甲などの対策が取られている場合が多い。
当初はガソリンエンジン搭載であったが、A1モデルからはデトロイト・2ストロークV型6気筒ディーゼルエンジンを使用している。同エンジンは既にGM社の民生車輌用に74万台の生産実績があり、M113の高信頼性と低コストに貢献している。燃料タンクは車内後部左側にあり、A2/A3型は後部ランプ左右に外部燃料タンクを装備している。
M113の航続距離は480km、整地での最大速度は64km/h、トーションバー・サスペンションで、ロードホイールは5輪となっている。履帯は中央にゴムパッドの付いたタイプになっており、またドイツ陸軍は独自の形状の履帯を使用している。
派生型も多く存在する。迫撃砲を搭載したものやM61バルカン砲と追尾レーダーを搭載し、自走式対空砲としたもの、軽戦車の砲塔を搭載したものさらには核ミサイルを運搬できるものと非常にバリエーションがおおい。
全ての派生形を含めると、おそらく80,000輌以上が製造され、世界中でもっとも幅広く使用された装甲車の一つである。