概要
初出は第11巻。
突如謎の敵に包囲されたジョニィとジャイロ。彼らの近くには、武器である鉄球も無ければ馬もおらず、まさに絶体絶命の状況。
そんな中、ジャイロは一族の秘伝の奥義である回転の技術に関する秘密をジョニィに伝授しようとする。
その際にジャイロは
「お前はこれから「できるわけがない」という台詞を4回だけ言っていい」とジョニィに語る。
そして、その場で即4回言う等の屁理屈を色々とこねたり力づくでバックルを奪おうとして逆に殴られるジョニィ。その後、一つ一つ黄金の回転について説明される度にジョニィは「できるわけがないッ!」と発し、4回目を叫んだ辺りで「回転の秘密」である黄金長方形の生み出す黄金の回転を見つけ出し、危機を脱する事に成功するのであった。
余談
この「できるわけがない」にはそれぞれ重要な意味が存在する。
まず、ジョニィの言った「できるわけがない」の(ジャイロにカウントされたモノ)の内訳は
説明中の
- 「("黄金長方形通りに回せ"に対し)出来るわけがない!!い いや…仮に黄金長方形の回転の力になんてものがあるとしてそんなもの僕にできるわけがない」
- 「そんなことすぐにできるわけがないッ!こんな状況でなんなんだッ!出来るわけがない!さぁ4回言ったぞ!」
- そして黄金の回転をやってみてから「だ 駄目だ!こんな力(パワー)じゃない!僕にできるわけがないッ!」
- ジャイロがやられて「バックルをさっさと使わせてくれてればこんなことにはならなかったんだ!いきなり説明だけされたってできるわけがない!」
の四種であり、そして四度目の後絶望の底で「ツェペリ家は何が言いたい(伝えたい)のか?」を思案し黄金の回転の秘密に辿り着くこととなる。
この四度の「出来るわけがない」は「自分には黄金の回転は作れない」「説明なんかされたっていきなりそんなもん出来るわけがない」「がむしゃらにやってみたけど違う、これじゃない」「見本さえさっさと見せてくれればもっと早くできたはずなのに」という意味が込められている。
そう、黄金の回転の秘密「自然界に存在する黄金長方形を見つけ出し、その通りに回すことで黄金の回転が生まれ、その回転には無限のパワーが備わっている」を導き出すために必要な要素の全てが揃っているのである
つまり
- 「ジョニィには黄金の回転は作れない」=黄金の回転に力量云々は関係がない
- 「説明なんかされたっていきなりそんなもん出来るわけがない」=詳しく理論立てて説明されたって理解できない
- 「がむしゃらにやってみたけど違う、これじゃない」=ましてやぶれかぶれの偶然では絶対不可能
- 「見本さえさっさと見せてくれればもっと早くできたはずなのに」=なので、"どこかにある見本"を見つけろ
となり、「出来りゃやってるよ」というポイントに対し「その通り、じゃあどうする?」と全てが謎かけになるという綿密な計算が仕込まれている。
特に四度目の「出来るわけがない」は、ジャイロがダウンしてしまっているためバックルを勝手に拝借しているが、本来一度目と二度目の出来るわけがないの間に「俺のバックルの通りに回せば黄金長方形の回転になる」と言った上で4回言うまで見せないと言っているため、正しい手順を踏んだ場合四度目を言う頃には「あのバックルさえあれば、あのバックルの通りに回せればできるのに」と見本を探し始めているはずなのである。
結果としてジョニィは模造品(人工物や、定規で測ったコピー=理屈としての黄金長方形)ではない、何処かにあるはずの本物の黄金長方形の見本「自然界に潜む本物の黄金長方形」を見つけ出し、黄金の回転エネルギーを生み出すことになる。
つまり「出来るわけがないッ!」からなる一連の出来事とは実力を鍛え上げた先にある才能の開花でもなければ、逆境において発生した都合のいい覚醒でもない
(一度目の出来るわけがない)自己の力量への過信を消し、
(二度目の出来るわけがない)理屈で凝り固まった思考を解きほぐし、
(三度目の出来る訳がない)やぶれかぶれでも無理である事を知り自分で作り出す事を諦め、
(四度目の出来るわけがない)既に存在する本物を見つけ出し、
(Lesson4、敬意を払え)それに対する敬意を払う(=正確に模倣する)事で発生した必然なのである。