ボルボのB10M型シャーシに富士重工業が製造した車体を架装したもの。エンジンがホイールベース間にあるセンターアンダーフロア構造のため、リアオーバーハング部分の空間にゆとりがある。このゆとりを活かしてリアオーバーハング部分を2階建てにし、トランクや吹き抜け構造にすることが可能である。ただし多くのユーザーはこの空間をサロンとしていた。ちなみに車名の「アステローペ」は富士重工業が商標を持っている。
日本の観光バスとしては珍しくミッションがオートマチックである。(ドイツZF社製)。またエンジンはこの時期の国産観光バスが排気量17リットル-20リットル級のV型8気筒エンジンが主流だったのに対し、排気量約10リットルの直列6気筒ターボ付きエンジン・THD102KE型(320馬力)を搭載しており、静粛性・燃費に優れ高速道路を長時間走る用途に向いていたため、1990年代に入ると高速バスで使用される例が増えた。
1997年からのKC-代規制車は従来と同排気量で出力を向上したDH10型(344馬力)を搭載する。しかし平成11年排ガス規制に適合できないため、2001年にシャーシ輸入が打ち切られ、製造も終了した。
シリーズ一覧
P-B10M
1987年発売。ボディは富士重工15型HD-2をベースとした専用のものを架装しており、フロントが角張っていた。ただしボルボ車のアイデンティティである斜線の入ったラジエターグリルも組み込まれている。
1990年、車体に小さく変更が加えられ、前面のラジエターグリルの大型化、側面窓のラインが直線になった。またスーパーハイデッカー仕様も登場。
U-B10MC
1990年発売。平成元年排ガス規制適合車となり、車体も7Sにモデルチェンジし、若干丸くなった。「アステローペ・スペリオール」とも呼ばれる。U-代規制より従前の5速AT車に加えて7速MT車が追加された。
1996年、車体に小さな変更が加えられ、前面のラジエターグリルが運転席側側面に移り、前面行先表示機を装備した。ただしこの変更により、斜線の入ったフロントグリルは小型化された。
KC-B10MD
1997年発売。平成6年排ガス規制適合車となった。この代で製造終了。
アステローペ復活の可能性
排ガス浄化装置に尿素を用いたエンジンがヨーロッパの排ガス規制基準である「ユーロ5」に適合するため、シャーシの輸入再開に向けた動きが一部で見られた。しかし国内に独立系コーチビルダーが存在しない今、仮に再開したとして車体をどこが製造するのかは不透明である。