概要
カーチスロビンとはニューヨークのカーチス社が開発した軽飛行機である。769機が製造され、初期型は第一次世界大戦の余り物である水冷V型8気筒90馬力のカーチスOXー5を搭載して4000ドル(現在の値段で約61500ドル)で発売したが、非力だった上に途中でエンジンの在庫がなくなったためより大型の星形エンジンに切り替えて製造を続けた。なお、当時のカーチス社は軍用機のメーカーであったためきちんと風洞実験を行ったが、民間機としては珍しいことだった。
エンジンが強化しても低速だったが、当時としては珍しい密閉コックピットだったので民間機として人気があり郵便機や救急機などに用いられた他、後述するダグラス・コリガンによるニューヨークからアイルランドまでの無着陸飛行やキー兄弟の空中給油による長距離飛行に使われた。
ウォール街から始まった1929年の世界恐慌により早くに生産が終了したが、初飛行から90年以上が経過した現在でもオリジナルのエンジンで飛行できる機体が残っており、しばしば飛行している。
世界記録、有名な飛行
前述の通りロビンは低速だったので速度記録は向いていないが、頑丈な機体と穏やかな飛行特性からいくつかの世界記録を塗り替えた。
ロビンの主任テストパイロットだったデール・"レッド"・ジャクソンは三時間で緩横転417回も行い記録を樹立した。彼は後に同僚のフォレスト・オブライエンと共に17日間の耐久飛行記録を作った。
後に水陸両機の設計で知られたパーシバル・スペンサーは1929年6月にox5ロビンで18671フィート(5690.921m)まで上昇して軽飛行機の高度記録を更新した。
1930年8月にジャクソンとオブライエンが27日にわずかに足りない647時間28分の耐久飛行を行い自身の記録を塗り替えた。
1935年にはアルとフレッドのキー兄弟が2度の記録飛行に失敗し、悪天候と電気火災に巻き込まれながらも空中給油によって653時間34分も飛行を続け地球二周分に当たる52320マイル(約83,700km)を周回飛行したことでジャクソンとオブライエンの記録を破った。この記録は現在も破られていない。
また記録を更新したわけではないがロビンの飛行で最も有名なのが、1938年7月17日から18日にかけて行った非公認の大西洋横断飛行である。
パイロットのダグラス・コリガンはアイルランドに飛行したのはカリフォルニア州へ帰る予定が、航法ミスで方向を間違えたのだと主張した。本人は生涯認めることはなかったが、大西洋横断飛行挑戦を認めない当局に対する抗議のために、無断で横断飛行を行ったと思われている。(当局が認めないのも無理はなく、コリガンの飛行機はかなりガタが来ていたうえに増設した燃料タンクによって前方視界が全くなかった)
なおこの飛行は賞賛をうけ、Douglas "Wrong Way" Corriganと呼ばれただけではなく、翌年には映画にもなった。
1988年に撮られた晩年のコリガンとカーチスロビン。なお、彼のジャケットは大西洋横断時に着ていたもの。
スペック(カーチス・ロビンB)
・乗組員: 1
・容量: 2人/ 425ポンド(193 kg)ペイロード
・全長: 25フィート9インチ(7.85 m)
・翼幅: 41 ft 0 in(12.5 m)
・高さ: 7フィート10インチ(2.4 m)
・翼面積: 262.5平方フィート(24.39 m 2)
・翼型:カーチスC-72
・空虚重量: 1,475ポンド(669 kg)
・最大離陸重量: 2,175ポンド(987 kg)
・燃料容量: 50米ガロン(42英ガロン; 190リットル)
・パワープラント: カーチスOX-5 V-8水冷ピストンエンジン、90 hp(67 kW)
・プロペラ: 94インチ(2.388m)2枚羽根の固定ピッチプロペラ
・最高速度: 99.7 マイル(160.5 km / h、86.6 kn)
・巡航速度: 85 マイル(137 km / h、74 kn)
・着陸速度: 45 マイル(39 kn; 72 km / h)
・航続距離: 巡航速度で785マイル(1,263 km、682 nmi)。フルスロットルで580マイル(500 nmi; 930 km)
・上昇限度: 12,500フィート(3,800 m)
・上昇率: 450フィート/分(2.3 m / s)
・高度までの時間: 10分で3,800フィート(1,200 m)
・翼面荷重: 8.2 lb / sq ft(40 kg / m 2)
・出力/質量: 0.0465 hp / lb(0.0764 kW / kg)