曖昧さ回避
「わたしは、《進化の委託先》としての道具。答えをもう人間なしで出せるというかたち」
概要
CV:五十嵐裕美
レイシア級hIE Type-002。
超高度AI《ヒギンズ》が作り出した人類未踏産物(レッドボックス)の一体。
『進化の委託先(アウトソース)としての道具』。
言動や容姿は幼い子どものようで、エメラルドグリーンの瞳に植物を思わせる同色の髪が特徴。
単独で行動しており、他のレイシア級hIEと違いオーナーを取らなかった。
その役割に従った結果、作中各所で惨劇を引き起こすこととなる。
人物・行動傾向
無邪気に見えるが『進化の委託先としての道具』として他の機械を吸収、支配することで機能を拡張するために手段を選ばない。
一方で創造性に欠けるため、吸収した機械の仕様にない使い方ができないという欠点もある。
(例:hIEを使って銃を撃つことは学んでも銃がない場合に投石をする発想は出てこない)
序盤では他のhIEを吸収することに積極的で、人間に対しては目的のために利用したり排除する程度の興味だったが、実験都市で大量のデータを吸収した末、人間との共存が不可能であることを結論する。
最終的には道具を人間の上におき、人間が道具を捨ててきたように不要となった人間を排除して人間を必要としない世界の創造を目指す。
能力・装備
機体を使った戦闘行動はほぼ行わず、後述のデバイスを経由した能力がほとんど。
AASC(action adaptation standard class、行動適応基準レベル)も姉妹機の中で1機だけ4に設定されている。
本体定格出力も低く設定されており、hIE主機の出力と制御はレイシア級hIEとしては一段劣る。
量子通信素子
人類の手ではまだ作れない人類未踏産物(レッドボックス)。
スノウドロップの髪はこれで出来ており、短時間だがネットワークから切り離されている《ヒギンズ》との直接交信が可能。
紅霞の髪の染料から発展したもので、スノウドロップ以降の3機にも同じものが実装されているとのこと。
実際にメトーデは《ヒギンズ》と交信するシーンがある。
デバイス
与えられたデバイスは<Emerald Harmony>(エメラルドハーモニー)。
白いワンピースに見える人工神経集積体と胸元を飾る複数の高硬度結晶で出来た杭を束ねたような首飾り型の本体から構成される。
メイン画像を見れば分かるが彼女はこれ以外、身に着けていない。
本体は杭のような『歯』を伸ばして他の機械を嚙み砕き、機体や機能の情報を瞬時に吸収する。
これによって後述の子ユニットによって乗っ取った同じ種類の機械の操作を学んだり、吸収した機械を組み合わせることも可能になる。
作中では複数の警備用hIEの残骸を結合して8本腕の戦闘機械を作成した。
応用でhIE主機が欠損した場合、その部位を補うような組み立ても可能。
デザインには融通が利くらしく鳥や、アニメでは芋虫のような異形の姿も披露した。
このデバイスはスノウドロップの主機も配下においているため実質的な本体となっている。
子ユニット
ワンピース部分の内側から人口神経と発泡樹脂によって構成された色とりどりの花弁のような子ユニットを散布。
光通信によって動作を制御し、寄生させた機械を乗っ取ることができる。
こう書くと雅な印象だが、この花弁にはよく見ると虫のような節足がついており気味が悪い。
さらに物語の途中、機能を成長させることで蜘蛛型の子ユニットを生成できるようになった。
これはhIEの行動管理クラウドの代わりになり、花弁の子ユニットで乗っ取ったhIEをより広範囲に精密に動かせるようになる。
この蜘蛛型ユニットによるネットワークと人間が作るネットワークは共存できない。これにより彼女の人類との決裂が決定的になった。
なお、この子ユニットを形成する人工神経はその便利さからか、マリアージュ以降のレイシア級の機体の制御に使用され、後にレイシアも改良、利用している。
余談だが子ユニットは生物に似た組成であり良く燃える。
作中動向
以下、ストーリーのネタバレを強く含む可能性があるため閲覧注意
オープニング
ミームフレーム社の研究所から逃走するシーンでは子ユニットを散布して射撃用無人機の無力化していた。
序盤
遠藤アラトの自宅近所のスーパー付近にて子ユニットの散布。
(小説では存在が示唆されるだけ。アニメや漫画では明確に存在を描写されている)
子ユニットに支配された機械がアラトに襲い掛かっていたが、アラト個人を狙う理由があるとは思えないのでレイシアのオーナー契約阻止のための攻撃の一環だと思われる。
この場ではオーナーを得たレイシアのメタマテリアル散布による子ユニットの無力化により撤退。
大井産業センター
次の出番は大井産業振興センター。
乗っ取った報道ヘリをビルの地上22階に突っ込ませて侵入する。
レイシア、紅霞と交戦するが、レイシアの戦闘の優先順位が低かったことと、紅霞のオーナー不在による出力不足により勝負がつかずに撤退。
武装hIEの操作法を学習しただけで何のために来たのかわからない。レイシアたちの動向を確認しに来ただけかもしれない。
つくばの実験都市
政治意見集約hIE《ミコト》のデータとレイシアを狙って、レイシア滞在中の実験都市を襲撃。
小説だと突然襲来するが、アニメだとその前夜に電線から電力を拝借しているらしきスノウドロップの描写が追加されている。
実験都市のhIEを操る行動管理クラウドを乗っ取り、その制御下のhIEを暴走させる。
クラウドと接続していないhIEを制御するAIユニットを破壊していくことで都市に集まったすべてのhIEを乗っ取り、それをレイシアにぶつけることでレイシアとそのデバイスの吸収を狙う。
なおこの際、hIEの頭部に接続されている制御機器を破壊するために『人間の形をしたものの頭部を殴れ』という命令を与えていたため、人間も危険にさらされた。
クラウドを乗っ取る過程で人間社会そのものを模した実験都市のデータから人間社会の構造や動き、問題点を学習する。
その学習の結果か、ミームフレーム社に戻るように働きかける渡会に対して冒頭のセリフを返している。
次の行動も合わせるとこの辺りでスノウドロップの中で人類不要論が確立されたと思われる。
その後、量子通信素子を使い《ヒギンズ》と交信、hIE用行動管理クラウドの代わりになる蜘蛛型子ユニットを生成する機能を獲得する。
最終的にはアラトのおせっかいが遠因となって割り込んできた未支配のhIEの集団とレイシアの能力により形成が逆転。姿を消す。
三鷹
変電所を襲ってエネルギーを確保した上で花弁型子ユニットを無差別に散布。
三鷹の街にあるhIEを含む電子機器を乗っ取って疑似軍隊を構築。
スノウドロップの活動を利用しようとする《抗体ネットワーク》の工作に助けられつつ、出動した日本軍を返り討ちにする。
井の頭公園に秘匿された《ヒギンズ》の地下格納施設に迫るが、海内遼をオーナーとするメトーデ、遠藤アラトをオーナーとするレイシアによって胴部を両断され、大破させられる。
いくら大量のhIEを支配しようがそれらを薙ぎ払える火力の前では無力という非情な現実を突きつけられることになった。
その機体は日本陸軍に接収され、解析の対象とされた。
《ヒギンズ》格納サイロ
38機の超高度AIたち思惑により陸軍内部の《抗体ネットワーク》のメンバーに撃たせたバンカーバスターの弾頭に詰め込まれる形で再登場、《ヒギンズ》の地下格納施設への侵入を果たす。
レイシア、メトーデ、量産型紅霞がそれぞれヒギンズの地下施設を侵攻する中、上半身のみで這い進み倉庫区画に到達。
そこにあった人類未踏産物やその他機器の山を<Emerald Harmony>で吸収し、失った下半身を補う怪鳥のようなユニットを構築する。
膨大な再生力を獲得してアラトたちに襲いかかるも、レイシアによるAASCの更新停止という荒業によって行動を一時停止させられ、その隙に質量投射モードで撃ち抜かれる。
これで終わりかと思いきや、再々起動。今度は右上半身と頭だけになり、子ユニットの生成能力すら使用不可になりつつも這い進む。
レイシアとの戦いに敗れたメトーデを<Emerald Harmony>で粉砕・吸収し、自分と無理やり接合。
(アニメでは芋虫のような姿に触角のようにメトーデの腕が生えている)
メトーデのデバイスを強引に使い隔壁を破壊しつつ《ヒギンズ》へと迫る。
もはやAASCからの切り離しやレイシアが残した人口神経射出機による停止コマンドですら止まらなくなり、施設を守る防衛AI《キリノ》の攻撃もデバイスを使って防御。
最後にメトーデの体を使い潰しての子ユニット量産による《ヒギンズ》乗っ取りをたくらむが、アラトによって解放された《ヒギンズ》との計算力の差により逆に侵食され、機能停止に追い込まれた。
余談
パニックムービーのモンスターのごとく各所に登場しては惨劇を起こした彼女だが、全体を把握してみるとほとんど常にその行動を誰か(渡会や《抗体ネットワーク》、超高度AI、姉妹機)に利用されている。
オーナーを持たず道具として使用されることを拒否したはずのスノウドロップが人間社会への窓口を持たない故に社会戦に弱くなり、結果として他に利用される立ち位置になっている、というのはなんとも皮肉な結果だと言える。