概要
ボークスが製造・販売している関節可動ドール。名前の通り「ドルフィー」の一シリーズである。ボークスの登録商標で、略称は「DD」。
女性がメインターゲットの『スーパードルフィー(SD)』に対して男性をターゲットとするドールで、SDと異なり素体仕様やラインアップなどの方向性が別となっている。しかし最近では女性をターゲットにしているDDも発売していることから、男女の区別なくリリースしているのが現状といえる。
歴史
黎明期
2003年にソフトビニールタイプの1/3スケールドールとして発売したが、初期のDD(DD1)はSD同様テンションゴムの関節であり、それに準じて外皮は硬質のソフビとなっている(いわゆるモノコック構造)。ゴム関節のため自立はもちろんのこと、ポーズ保持にも難があった。肌の色も『フレッシュ(当時はノーマル)』しかなかったため、キャラクターによっては違和感を感じるユーザーもいた。さらに、ものによってはSDの服を流用しにくいものもあったため、服装のチョイスにも難色を示すユーザーも多かった。
DDフレーム(D-DIF)の誕生とライバル素体の登場
2005年、第2世代(DD2)にリニューアルした際に可動フレーム内蔵の仕様(D-DIF)に変更、それに応じて外皮もソフトタイプ仕様に変更され、全体の関節強度を図っている。それと同時に若干だがプロポーションの変更がなされており、SD服の流用に違和感がなくなっている。
カラーリングもフレッシュのほかに肌の色が白い『ホワイト』が追加されている(限定モデルのみ)。ほぼ同時期にボディが変更されたDDダイナマイト(DDDy)が、1年ほど後にMSDサイズのDD、ドルフィードリーム(MDD)が誕生している。
しかし肝心のフレーム構造が貧弱で、明らかに大きさに対する関節の保持力が不足していた。特に下半身は自立できないほど貧弱で、保持力のなさに不満を漏らしているユーザーも多くいた。ねじ止めのみの膝関節を改造して保持力を高めるといったカスタマイズを行う人も少なくなく、中には自作フレームを制作するユーザーも存在している。
ちなみにDD2のみの仕様として胸部のみインナーシェルである硬質ソフビを中に入れて型崩れを防止する仕組みとなっている。
そのころからドール・ソフビを扱うライバル各社で1/3スケールドールが開発・発売され、キャラクター系ドールの購入層拡大を進めることとなった。特にオビツから発売した『オビツボディ60』は可動範囲、強度、メンテナンス性にすぐれており、当時DDで行われていなかったパーツ売りも初期段階から実施しているため、様々な点でDDを脅かす存在となった。
中でも球状関節モデルはDD2を意識したデザインになっており、前述のカスタマイズでも保持力を重視すべくそのオビツ60球状関節モデルの内部フレームに置き換えたという事例も少なくない。
オビツ60は社内採用モデルのみならずアゾンやパラボックスなどといった一般流通のドールショップでも採用されていた(DDは他社流通がなく、ボークスモデルのみの採用に留まっている)。しかし外見の美しさはDDが上で、関節強化目的でばら売りしている関節パーツのみ購入してDDに組み込んでいる上記のケースもあったくらいである。
大改良と販売方法の見直し
保持力・メンテナンスに勝るオビツ60に対抗するため、2010年に第3世代(DD3)にリニューアル、胴体のみに採用されていたボルトオン関節を全身に採用、オビツボディに匹敵する保持力を持たせた。各関節の調整も容易になり可動範囲も拡大している(特にヒジは二重関節化された)が、負担のかからない箇所ははめ込み式の関節が採用されている。フレーム素材も従来のABSに加え、ポリアセタール(POM)の採用により関節強度を確保している。およそ1年後に5センチほど低身長のモデル、DDシスター(DDS)も発売された。
一部しか販売していなかったパーツ売りもDD3では実施されたが、リリース当時はパーツ単位での販売のみだったために完成させるためにはそれ相当の価格が必要となり(本体セットだと30000円に収まる価格なのがパーツでそろえると35000円ほどの価格になる)、中には品薄のため特定のパーツが入手できないケースもみられた。ちなみにDDのパーツ売りは外皮とフレームのセットとして販売している。
リリース直後こそ関節強度の不足でヒビが入るケースが起きているが、フレーム肉厚の増加など数回の改良によって十分な強度が確保された。しかしながら構造上、一部の関節強度が不足している箇所があったため、その問題解決は次世代の素体に持ち越されることになる。
カラーリングはフレッシュとホワイトが引き続きリリースされたが、2015年ごろにホワイトと比べて若干赤みの帯びた『セミホワイト』が追加された。それと入れ替わるようにホワイトが終売、以降はフレッシュとセミホワイトの2種の発売となる。
DDとDDS限定だが水着でのプロポーションを重視した胴体が一体成型のボディが発売され、末期には手首関節を追加したフレームも登場、素体の柔軟性と優秀さから足掛け8年と販売期間の長いDD素体となった。
競合会社の増加
DD3リリースと前後してオビツ側も改良素体『オビツ50』を発売、関節範囲拡大とメンテナンス向上を目指した仕様となった。肌の色やハンドパーツもDDを意識したもの(フレッシュ(現在は販売終了)、ホワイティ。のちにスーパーホワイティが追加)となっており、社内外問わずに普及する素体となった。
一方、60センチクラスの素体はDDに押される形で販売終了となったが、オビツ50を基とした60センチクラスの素体がパラボックスなどで開発されている(40センチクラスの素体も同様)。オビツ50は改良を加えながらも2021年現在まで採用され続けているロングセラー素体となっている。
DDf³リリースより後となるが、2019年あたりからカルチャージャパンから『スマートドール』という60センチクラスの1/3ドールが流通限定で発売された。基本的にDDと構造が同じでより複雑な多重構造となっているのが特徴。主に通販での発売となる(一応リアル店舗もあるにはあるが)ため、容易に入手しにくいのが欠点。ただし世界展開を行っている商品のため、普及範囲は他のメーカーとは比べ物にならない規模を持つ。
スマートドールの外皮はソフトビニール素材とプラスティック素材(アサフレックス)のものがあり、後者はプラモデルのような構造となっている。これはソフビ素材では色移りしやすいこともあるため、外皮を柔軟性のあるプラにすることで解決しようとする目論見である。ソフビほどの柔軟性がないため可動範囲は若干低下しているが、自分で組み立てる楽しみをプラスすることでオリジナリティを醸し出すことに成功している。
そして、さらなる進化へ…
2018年、フレームの設計を見直した第4世代(DDf³(エフキューブ))が発売された。各関節の強化やフレームの素材変更に加え、パーツの脱着がしやすく関節のテンション調整が容易な構造となったためメンテナンス性が向上している。また、前世代とのパーツも一部流用可能で、例えばDD3の本体にDDf³の足首パーツを取り付けることが可能となっている。外皮も流用可能だが一部隙間が生じるパーツがあるため、DD3にあった一体成型パーツが使用しにくくなってしまっている(DDf³の一体成型ボディは現在のところ発売されていないが、MDDのみ流通限定ではあるが一体成型のボディが発売されている)。カラーリングも限定ではあるが『褐色(現在のタン)』が追加された。
DDf³から先行する形でプリティ(DDP)が完全新規の素体として発売された。フレームは新規なため各部の仕様が異なっており、ジョイントが返しのあるはめ込みとなっている。径自体はDD系と同じなためDDの手足を取り付けることが可能だが、返しをなめないようにねじで調整する必要があるので注意したい。MDDの外皮に交換することも可能だが、ハンドパーツや胸部パーツなど限られた箇所のみとなっている。
2020年にMDDのバリエーションである『もちあし』が発売されたが、DDDyと同じく外皮のみの変更で、その外皮も脚部の変更のみであるため、ラインのはっきりしている服装では腰回りに違和感が生じるという欠点も発生している。変則的ではあるがDDPの腰パーツ外皮に交換することで解消できるが、暫定的な解決方法であるため本格的な改良を希望しているユーザーも多い。Ver2.0では腰回りのボリュームを見直したものとなるため、それを待ったほうがいいかもしれない。
もちあしは足首も新規であり、足甲の厚さがDD並みでシューズもDDのものを使用せざるを得ないため、MDDのみのユーザーは新たにSD(DD)用のシューズ、もしくはMDD用の足首を別途購入することとなる(MSDのシューズやサンダルなど足甲部分が覆われていない履物は一部履かせることが可能)。ただし最近ではもちあしにも対応するMDDシューズも発売している。
新モデルであるMDDf³Ver2.0が2023年8月にリリースされた。それに先がけて旧MDDf³が生産を終了し、在庫限りの販売となった。外皮は一新しているため形状の合わない箇所が生じているが、フレームそのものの新規パーツは一部にとどまっているため、従来のものとの互換性はある。翌年にはDDとDDSがf³Ver2.0へと変更されているが、これは外皮の互換性および共通化を図ったものである。首や腰回りの関節が改良されている点に関してはMDD同様。
仕様
主に男性向けとしてリリースされているためアニメ・ゲームのキャラクターモデルが多い。内、女性モデルが9割を占めるが、最近になって女性ユーザーが増えたことを受けて男性モデルもリリースされている(現在ではドリームチョイスで購入可能)。サイズもスーパードルフィーと比べると幅が広い。また体格を変えるパーツやヘッド、表情豊かなハンドパーツなど豊富なラインナップとなっている。肌の色はフレッシュ(旧ノーマル)、セミホワイト、タン(旧褐色)。DD3まではホワイトが存在していたが、セミホワイトとの入れ替わりにより現在では廃止となっている。
互換性についてはヘッドパーツのみ全モデルに対応する。DDとDDSは完全互換となり、体格や身長差の調整が可能。ただしDDDy専用の外皮パーツには共通パーツを除き互換性はない。MDDとDDPはジョイントの径が異なるためフレームの互換性は皆無だがハンドパーツと胸パーツの互換性がある(ハンドパーツに関してはDDのものも使用可能)。
服(ドレス)やシューズはDD系がSD(SD17を除く)やスマートドール対応のものを、MDD・DDPはMSDやオビツ50系のものを着せ付け可能だが服装によっては丈が異なるものやサイズが合わないものがある。加えてDDPやもちあしはボトムス関連に制限が出るので服装選びに注意したいところ。
欠点は関節に不都合が生じやすいこととヘッドパーツの交換がしにくく穴が割れやすいこと、外皮が色移りしやすいことである。関節に関してはフルモデルチェンジの際や不都合が出た場合に改良を施す形を取っている。外皮の色移りはソフトビニールを使用している限り避けられないもので、色移りの対策を講じる必要がある(ラップを巻くなど)。ヘッドパーツはジョイント構造上の問題で、差し込む際にヘッドをドライヤーで温めるかサードパーティ製や自作ジョイントに変更するなどして防ぐことが可能。ボークス側もジョイントの改良などで対応している。
各ラインナップ
ドルフィードリーム
全高60センチ(頭部含む)。最初期に発売されたもの(DD1)はスーパードルフィー同様のテンションゴムでの接続。このモデルのみの仕様として手袋着用手首が付属する。
DD2でフレーム内蔵の仕様となり各関節がアクションフィギュア並みの可動範囲となり、関節の取り外しが可能となったためメンテナンスも容易となった。
DD3では関節の保持力強化がなされている。可動範囲も広くなっており、肩部のスイングが可能となり両腕を交差することができるようになった。パーツ売りを本格的に始めたのもDD3以降である。
素材と強度を見直したDDf³では一部の可動範囲が狭まったものの足首のスイング可動など関節が増えた箇所がある。関節強度や保持、メンテナンス性も向上している。f³Ver2.0では首関節の可動範囲及び関節強度の見直しがなされている(DDSも同様)。
ドルフィードリームダイナマイト(DDDy)
大人のモデル体型のDDであり、体格もダイナマイトの名にふさわしいメリハリのあるプロポーションである。
DD2から導入された素体であるがフレーム自体はDDと共通。専用外皮箇所は胸、腰、腿パーツ。専用の外皮パーツ以外はDDと共通のパーツを使用するが、DDSのパーツも使用可能。欠点は脛パーツがDDと共通なため若干足回りに違和感が生じることで、脛パーツも専用にしてほしかったという意見を述べるユーザーも少なからず存在する。
ミニドルフィードリーム(MDD)
全高40センチの幼児体系DD。外皮・フレームともに完全新規であり、DDとの互換性も低い(交換できるのはヘッドのみ)。
MDD1→MDD2(手足の軸の強化と頭部ジョイントの見直し)→MDD3→MDDf³→f³Ver2.0とDD系のモデルチェンジとしては最多となる。
一部の外皮はDDPとの互換があるがDDとDDSほどではなく、加えてフレームの規格自体が異なるためミキシングしての身長差の調節は不可能と言っていい。
2022年11月にMDD関連の生産を終了するというアナウンスがなされた。在庫そのものは十分にあるためしばらくの間は販売は継続されるが、後続のMDDf³Ver2.0がリリースされたため在庫が無くなり次第入れ替わる。外皮とフレームの一部が新規になるため手首以外のパーツが販売終了となり、長年販売されてきた胸部パーツも仕様変更された影響で終売となる。
f³Ver2.0では、足首と胸部回り、首関節周りが改良される。今まで難点とされてきた首関節周りは関節の改良と外皮を一新することで解消される。首の差し替えの問題も補強リングが付属することである程度解消され、首の長さの調整も行えるようになった。各関節も外皮と一部関節フレームの変更により可動範囲が拡大しているが、外皮の隙間が広がっている箇所もあるため、見た目が美しくないという意見も見られている。
ミニドルフィードリームもちあし(MDDm)
MDDより若干全高が低く(約38センチ)下半身がふくよかになっているのが特徴。外皮のみの変更でフレーム自体はMDDと共通である。
両脚外皮が完全新規となっているが、腰の外皮がMDDそのままとなっているため水着などのボディラインを強調する服には違和感を感じてしまう欠点がある。DDPの腰パーツとの互換性も確保しているため(一部加工が必要)それを使用すれば下半身のラインがきれいになる。Ver2.0では腰回りの外皮も専用になる予定とのこと。
専用パーツの単品売りがなされていないことと、靴のサイズがDDサイズのもの(一部はMDDのものが使用可能)を使用する点は注意したい。特にパーツ入手に関しては現時点では素体ごと購入せざるを得ないため、色移りには気を付けたいところである。
MDDm最大の特徴はそのネーミングであり、今までのDDが英語だったのだがここにきて日本語となっている(そのためスペルがMDD-MOCHIASHIとなってしまっている)のである。
ある意味意表をついているといえなくもない…のか。
MDDの生産終了と共にMDDmも生産を終了するため、パーツ売りが実行されないまま終売することとなってしまった。後続のMDDf³Ver2.0でももちあしVer.が発売され、Ver2.0同様パーツ売りもされる予定。
ドルフィードリームシスター(DDS)
DD3登場時にラインナップに追加されたモデル。全高が若干低い55センチとなっている。
フレーム構造自体はDDと変わりないものの、身長差を再現するため一部のフレームが専用となっている。フレーム外皮共にDDとの互換性があり、組み合わせることで身長の調節が可能となった。また体格もDDと若干異なっており、プロポーション変更にも一役買っている。
後に男性体系のDDS(DD)『Boy』がラインナップに追加されたが専用パーツ単品での販売はなされていないため、現時点でパーツ交換が不可能な点に注意したい。
f³Ver2.0では身長差の生じる箇所(腰、腿、脛)以外はDDと共通となった。
ドルフィードリームプリティ(DDP)
DDf³登場時にラインアップに追加された、中学生相当の身長(約50センチ)のモデル。
フレームがDDと同じ太さの軸となっているが、抜け防止の返しが施されているのが特徴。これはDDf³の一部関節にも採用されており、いつの間に腕が抜けてるといったことが起きにくくなった。半面、他のDD系フレームとの互換性が低くなっているがDD側が極小ねじでの接続調整が可能なためDDPの脛にDD(DDS)の足首を取り付けるといった裏技ができる。
ハンドパーツはMDD、DDのものが使用可能で、全種使えるのはDDPだけの仕様であるが、専用のものは付属のハンドのみ(大きさはDDに近いが造形は異なる)。他にもDDP専用の胸部パーツが未だに発売していないため胸部のサイズ変更を行いたい場合は大きさが近いMDDのパーツを使用せざるを得ないなど、オプションに関しては他のDDと比べると不遇と言えなくない(結論から言うと、早くオプションパーツ発売してね、ということ)。サードパーティー製の胸部パーツを使うという手もあるが・・・。
販売スタイル
主に限定モデルで発売されているが、一般販売用のスタンダードモデルや店舗限定モデルと販売方法の幅が広い。限定モデルは受付注文のものもあるが自社イベントでの販売が主となっている(『ドールズパーティー』というボークス主催のイベントなど)。
一部の店舗ではパーツやメイクを選択してオリジナルのドールをオーダーできる「ドリームチョイス」というのもあり、このチョイスしか手に入れることができない素体もある。またそのシステムを利用した店舗限定モデルも発売している。
スタンダードモデルをはじめとする素体やオプションなどはボークス店舗かネット通販での入手が可能。オビツボディと比べると一般流通先が限られるため、店舗が近くにない地方では入手しにくいのが欠点。
関連タグ
スマートドール(カルチャージャパン)
※1/3スケールドールをリリースしている会社。それぞれ体格が似通っていることもあり一部服装の互換性がある。