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概要編集

luz奏音69RAHWIAによるサークル、Royal_Scandalの9章となる楽曲。

Royal_Scandalの4章、ビーストインザビューティとの関連が強い楽曲となっており、ファンの間で様々な考察が行われている。


関連動画編集

マジックリングナイト / 巡音ルカ


【MV】Royal Scandal 「マジックリングナイト」


Royal Scandal 「マジックリングナイト」/feat.弱酸性


関連タグ編集

チェリーハント クイーンオブハート REVOLVER ビーストインザビューティ ビタースウィート ファントムペイン チェルシー アンチ・クイーンオブハート マーメイドシアター


ストーリー編集

ネタバレ注意MV視聴後推奨


































































むかしむかし、あるところに、アラムという商人の青年がおりました。

あまり裕福とはいえない親のもとで生まれたアラムは、何事も謙虚で堅実で、そして誠実な心をもっていました。

ですが、アラムの父親は、男としての度胸が足りない息子をいつも心配しておりました。

「いいか。男ってぇのはな、冒険こそが人生なんだ。見つけた財宝は必ず勝ち取る。惚れた女はどこまでも愛する。おめぇも少しくらいは危ねぇ橋でも渡ってみやがれ。おい聞いてんのか、アラム」

わかってるよ、父さん。アラムの返事は、いつもこれだけ。それでも、そんな父親を尊敬していたのです。

そうして、父のキャラバンと共に世界中を旅し、ありとあらゆるものを見てまわるうち、アラムは一人前の行商人として立派に成長したのです。


そんなアラムが、相棒のラクダと共に交易路を渡っていた、ある夜のこと。

陽が落ちた砂漠は凍えるほどに冷たく、何かを知らせるようにざわめいていました。どうにも不思議なことが起きそうだ。そんな予感のする夜でした。

アラムが岩陰に立ち寄ると、ふと人影が目に映りました。こんな場所にいるなんて只者ではない……アラムはとっさにナイフを構え、様子を伺います。

しかしそこにいたのは、ひとりの女性でした。それも何の武装もなく、何をするわけでもなく、ただじっと岩陰に佇んでおりました。

「驚いたな……君、こんなところで何をしているんだい?」

アラムがそう声をかけたとたん、異国の黒服を纏った者たちが、遠くで何かを探し回っている姿が見えたのです。

アラムはとっさに彼女の手を引き、近くの町まで案内しました。黒服の者たちは、この女性を探していたようです。

彼女はほっと息をつき、深く被ったフードをはらりと捲ると、純粋無垢な笑顔でアラムに向き直りました。

「まぁ、本当に助かりましたわ……なんとお礼を申しましたらよいか」

それはそれは、なんとも眉目麗しい美女ではありませんか。

世界中の美品を見てきたアラムでさえ、こんなにも穢れのない美しさを見たことがありません。

アラムは、一目で恋に堕ちたのです。


彼女の名はオリヴィア。隣国アモルから来た貴族の令嬢です。

父の外遊に伴ってこの国ポデルまで来たものの、社交界の息苦しさに嫌気がさして、思わず逃げ出してしまったというのです。

オリヴィアは、町にあるものすべてに目を輝かせていました。

ひび割れた土壁の家も、薄汚れた路地裏も、アラムには見慣れた光景です。しかしオリヴィアにとってはすべてが、初めてのことでした。

アラムは露天商にうまく話をつけ、彼女に美しいドレスを買ってあげました。

オリヴィアがまるで子どものようにはしゃいで喜ぶので、アラムもつい笑顔がこぼれます。

そしてアラムは彼女の手を取ると、道の演奏家たちにあわせて踊りだしました。

「そんな、無理ですわ……! わたくし、舞踏は苦手で」

「大丈夫、楽しく踊ればステップなんて関係ないさ」

はじめは戸惑うオリヴィアでしたが、次第に慣れてきたのか、楽しそうにアラムに身を委ねます。

ふたりが愛しあうまで、そう長くはかかりませんでした。

気づけばすっかり寝静まった町で、月だけがふたりを照らし、ひとつに重なる影を描いていました。


「見つけたぞ、お嬢さまだ!」

そこへ駆け込んできたのは、オリヴィアの家の使用人たちでした。

黒服の者たちはアラムを突き飛ばし、強引にオリヴィアを連れ去ってしまいました。アラムは、追いかけることすらできませんでした。

彼女は異国の令嬢。何の権力もない自分とは、あまりに身分が違いすぎる。所詮は、千夜に一夜かぎりの夢だったのです。

僕にもっと、誰もが認める権力があれば……そう考えたところで、世界は何も変わってはくれません。魔法でも使わないかぎりは。

「おおやおや、お困りごとですか?」

そこへ話しかけてきたのは、帽子を被った怪しい男と、兎の仮面をつけたこれまた怪しい男でした。

アラムはため息混じりに経緯をこぼし、その場を立ち去ろうとしましたが、帽子の男マットが声をあげます。

「そりゃあ大変! ではこれはご存知です? ……どんな権力も手に入る、”魔法の指輪”の物語を」


アラムが彼らのテントに招き入れられると、さっそく仮面の男ハーヴィが古びた本をひろげ、黒い指輪が描かれたページを指さしました。

なんでもこの国には隠された遺跡があり、莫大な権力を得られる"魔法の指輪"が眠っているというのです。

「遺跡さえ見つけてくれたら、俺たちはそれでいいんだ。その"魔法の指輪"は君にあげよう。どうだ、いい話だと思わないか?」

……嘘だな。

いつもの堅実なアラムなら、すぐにそう一蹴したでしょう。

アラムは商人です。そんなうまい儲け話は、世界中のどこを探したって存在しないことくらい、百も千も承知しております。

しかし、ああなんということでしょう。今の彼は、もう……。

「……わかった。君たちの言葉を信じよう」

ハーヴィは、仮面の裏でにやりと笑いました。

人を騙す時に使える、もっとも迅速で残酷な手段。それが恋なのです。


その夜も明けぬうちに、アラムは冒険へ出発しました。

獣すら寄りつかない不気味な渓谷を、どこまでもどこまでも、ただひとり歩いていきます。

そして月がひとりぼっちの影を落とす時、寂しそうに夜空を見上げました。

「会いたいよ……オリヴィア」

荒れ狂う砂塵を抜けると、アラムはその遺跡を発見しました。

慎重に足を踏み入れます。そして、確かにそこにあったのです。光り輝く、その指輪が。

アラムは息を呑み、指輪を手に取りました。これが罠であってもいい。オリヴィアに会えるのなら、それで。

指輪がアラムの人差し指にはめ込まれた、その時。

「…………!!」

なんということでしょう。指輪から白く美しい薔薇が咲いたのです。

その薔薇は根本からアラムの"罪"を吸い上げ、赤く染まっていきます。まるで、不都合な白い薔薇を赤いペンキで塗りつぶすように。

アラムは激痛に悶え苦しみました。そこへ現れたのは、あの怪しい男たち。ハーヴィとマットです。

「アラム、ひとつ言い忘れた。その指輪は確かに"権力"をくれるが、その代償にとあるものを失うんだ。お前がもっとも大切にしている……そう、"愛"だよ」

「……だ、騙したのか!」

アラムは激しく怒り、ハーヴィの仮面を力付くで剥ぎ取りました。しかし、その素顔には♠♥♣♦♠♥♣♦、♠♥♣♦♠♥♣♦♠♥でした。

青ざめたアラムをハーヴィが蹴り倒すと、彼は嬉々として声をあげます。

「さぁ見ろ、"アルカナの薔薇"が咲くぞ!」

薄れゆく意識の中で、アラムは確かに、オリヴィアへの愛が消えゆくのを感じました。彼にとって、こんなに恐ろしいことはありません。

アラムは必死に手を伸ばします。そして、その先に見えたのは……愛するオリヴィアの笑顔でした。

あぁ、この愛は永遠だ。魔法だろうと呪いだろうと、誰にだって消せはしない。アラムはそう確信すると、穏やかに微笑んだまま、指輪に意識を飲み込まれていきました。


いつものようにBarマスカレイドのカウンターに座るオリヴィアでしたが、どこか浮かない表情です。

バーテンダーのルイスも心配して、彼女に声をかけました。

「オリヴィア様……今夜はどうもご気分がすぐれないようですが、いかがいたしましたか?」

彼女は何事もないように振る舞いましたが、気も漫ろに店を去ってしまいました。

そして月がひとりぼっちの影を落とす時、寂しそうに夜空を見上げました。

「会いたいですわ……アラム」

オリヴィアが窓の外を眺めていると、ふと人影が目に映りました。

そこに立っていたのは……なんと、愛するアラムだったのです。

身なりを整えたその風格は、まるで莫大な権力をもつ王侯貴族のようです。

オリヴィアは窓を開け放ち、愛する人の胸に飛び込みました。

アラムもそれを受け止めるように、彼女を抱きしめました。そして。


「愛しているよ、オリヴィア」


その言葉に、愛などかけらもありませんでした。

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