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概要編集

通常、上、中、下の3部に分けて演じられ、上に「強飯の女郎買い」、中と下で「子は鎹」の題がつけられる。

あらすじ編集

『強飯の女郎買い』編集

熊五郎は腕のいい大工であったが、大酒飲みで遊び人であった。

ある日、山谷の隠居のお葬式ですっかりいい気分になり、「このまま吉原へ繰り込んで精進落としだ」とナゾの気炎を吐いていると、お葬式に参列していた大家が、「そんなお金があるなら奥さんや坊っちゃんに着物の一つも買っておやんなさいよ」と意見するも完全に無視し、吉原へ直行。

途中で会った紙屑屋の長さんが、三銭しか持っていないと渋るのを、「今日は俺がおごるから」と無理やり誘い、「葬式で出された強飯と煮しめの煮汁が褌に染み込んだ」とこれまたわけのわからん理屈をこねて大騒ぎした挙げ句に三日も居座った。

『子は鎹』編集

四日目の朝。

神田堅大工町の長屋にご機嫌で帰ってくると、奥さんがむっつりと黙って働いている。

さすがに決まりが悪く、あれこれ言い訳をしているうちに、かみさんが黙って聞いているものだからだんだん調子に乗って、こともあろうに女郎の惚気話まで始める始末。

「いやあ俺もさ、なるべく早く帰ろう帰ろうと思ってたんだけどよ、あいつが『旦那さん、もっともっと』って、なかなか帰らしてくんなくて…痛え!」

これで奥さんも堪忍袋の緒が切れ、熊五郎の頬を平手打ちし「遊んだ他所の女の惚気話を自分のカカアに聞かせる男がどこにいるってのよ!もうあんたにゃ愛想が尽きたわ。亀坊と一緒に出て行かしてもらいます」とせがれの亀坊を引っ張って出ていこうとし、引っ込みのつかなくなった熊五郎も「ああそうかい、出ていけ!」と怒鳴り、亀坊が「父ちゃん、おいら詳しいことはわかんないけどさ、とにかく母ちゃんに謝んなよ」とたしなめるが「ガキのくせに。黙ってろ!」と八つ当たりする。

うるさいのがいなくなって清々したとばかり、なじみの遊女が年季が明けると家に引っ張り込むが、やっぱり前の奥さんとは大違いで、飯も炊かなければ仕事もせず、むしろ「あんたがあたしに何でもしてくれるっていうから、あんたのカカアになったってのに」と屁理屈をこねる。

挙げ句に「こんな貧乏臭いところはイヤだ」と他所に男をつくってさっさと出ていってしまった。

一方、夫婦別れした奥さん。

女の身とて決まった仕事もなく、炭屋の二階に間借りして、近所の仕立て物をしながら亀坊を育てる日々を送っていた。

ある日、亀坊が近所の悪ガキにいじめられて泣いていると、後ろから声を掛けた男がいる。

「よう、大きくなったな」

振り返ると、なんと父親。

身なりもすっかり立派になって、新しい半纏を着込んでいて、どうやら仕事の帰りらしい。

あれから一人になった熊五郎、今までの自分が情けなくなり、心機一転、好きな酒もすっかり絶って仕事に励み出したので、もともと腕はいい男ということもあって仕事を頼まれることが増え、すっかり暮らし向きは良くなったが、思い出すのは女房や亀坊のことばかりであった。

偶然に親子の再会となり、熊はせがれに五十銭の小遣いをやってようすを聞いた。

「最近、母ちゃんはどうしてる?」

「寂しがってため息ばっかついてる。母ちゃんが言ってたよ、『あの人は腕の良い大工で、優しいから大好きだった。別れたのだって、あの人そのものが悪いんじゃない。お酒があの人を駄目にしたんだ』って泣いてた」

これを聞いた熊五郎が内心喜ぶが、まだ面目なくて会えない。

その代わり、「明日の昼飯に鰻を一緒に食べよう。だけどな、今日ここで父ちゃんとおめえが会ったことは、母ちゃんに黙ってるんだぞ」と亀坊に約束し、その日は別れる。

一方、家に帰った亀坊は母親の仕事を手伝う最中にもらった五十銭を母親に見つかり、なぜ五十銭を持っているかを問いただされるも、先程父親に口止めされたことでしどろもどろになり「知らないおじさんにもらった」とごまかすが、もの堅い母親は聞き入れず詰問する。

「貧乏はしていても、お母ちゃんはおまえにひもじい思いはさせちゃあいないはずだよ。人さまのお金をとるなんて、ほんとに情けない。さあ、どこの誰からお金をとったか早くお言い!言わないと、この金槌でぶつよ!この金槌で殴るのは、お父ちゃんがお前をお仕置きするのとおんなじだよ」と叱るものだから、亀坊は隠しきれずに父親に会ったことを白状してしまう。

聞いた母親は、かつてのぐうたら亭主が真面目になり、吉原の女ともとうに縁が切れたことを知って、こちらもうれしさを隠しきれないが、亀坊と違って実際に会ったわけでは無いので、まだよりを戻すのははばかられる。

その代わり、翌日亀坊に精一杯の晴れ着を着せて送り出してやるが、自分もいても立ってもいられず、そっと後から鰻屋の店先に立って様子をうかがうが、店主にみつかり、店内に呼び入れられて三年ぶりに熊五郎と再会する。はじめはふたりとも固まってしまい、なかなかお互いの本心を打ち明けられないでいたが、亀坊が「父ちゃん、お願いだから昔のように一緒に暮らそうよ。母ちゃん、そう頼んでおくれよ」と口火を切る。

 熊五郎が手をつき「いまさら俺の口から言えたことじゃあねえが、亀坊の言うとおりだ。親子3人で暮らす、それが一番良いと思う。お前がいままで一人で居てくれたのが幸いだ。どうだ、もういっぺん俺と夫婦になってくれねえか。・・・この通りだ」と深く頭を下げた。

 「あんた、ありがとう。亀坊、良かったね。夫婦がこうやって元の鞘に収まるのも、この子が有ったからこそ。子は夫婦の鎹だね」

しみじみする夫婦に、横から亀坊が「子は鎹か。道理で母ちゃん、昨日おいらのこと金槌でぶつって言ったんだ」と言ってオチがつく。

解説編集

明治時代には落語家の三遊亭円朝が原作を改変して、母親が家を出ていき、父親と子供の二人暮らしをするという内容を演じたことがあった。これは明治時代の民法で「夫婦が離婚する場合、親権は父親にわたる」という制度が定められていたからである。明治民法がすでに廃止された現代では、このパターンで演じられることはなくなっている。

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