昏き底より出でる者
くらきそこよりいでるもの
「侵されて、破滅して、地の底へぬるりと墜つ。見渡せば暗黒、漆黒。
人よ、識りて畏れよ。其処に息衝く者、罪の肉喰らい咎の骨喰らう絶望」
―『奈落の底』、第二章、第四小節
『破滅の果てに汝が罰有り……。』
『無情の暗黒、汝の罰!!』
Cygames制作の対戦型カードゲーム『Shadowverse』におけるカードの一枚。
第5弾カードパック『ワンダーランド・ドリームズ』にて登場したヴァンパイアクラスのレジェンドカード。
英語名では、より明確にクトゥルフ神話における海底生物達を指す名称をイメージさせるSpawn of the Abyssという名前になっている。
「運営の頭がワンダーランド」などと揶揄されるほどにバランスが悪かった同カードパックの対戦環境において、前半期におけるヴァンパイア一強環境を作り出した元凶といわれているカードである。
カード名 | 昏き底より出でる者 |
---|---|
種類 | フォロワー |
クラス | ヴァンパイア |
レアリティ | レジェンド |
コスト | 8 |
進化前 | 攻撃力:6 体力:7 |
能力 | 潜伏 |
攻撃時 潜伏 状態で攻撃したなら、相手のリーダーに6ダメージ。 | |
ラストワード このフォロワーが潜伏 状態で破壊されたなら、相手のリーダーに6ダメージ。 | |
進化後 | 攻撃力:8 体力:9 |
能力 | 潜伏 |
このフォロワーが潜伏 状態で攻撃したなら、相手のリーダーに8ダメージ。 | |
ラストワード このフォロワーが潜伏 状態で破壊されたなら、相手のリーダーに8ダメージ。 | |
CV | 立木文彦 |
収録セット | ワンダーランド・ドリームズ |
※潜伏…自身が攻撃するまで相手カードの能力や攻撃の選択対象にならなくなる能力。
※ラストワード…場から破壊されたときに発動する能力。
2017/7/31~2019/3/28
進化前 | 攻撃力:6 体力:7 |
---|---|
能力 | 潜伏 |
このフォロワーが潜伏 状態で攻撃したなら、相手のリーダーに5ダメージ。 | |
ラストワード このフォロワーが潜伏 状態で破壊されたなら、相手のリーダーに5ダメージ。 | |
進化後 | 攻撃力:8 体力:9 |
能力 | 潜伏 |
このフォロワーが潜伏 状態で攻撃したなら、相手のリーダーに5ダメージ。 | |
ラストワード このフォロワーが潜伏 状態で破壊されたなら、相手のリーダーに5ダメージ。 |
潜伏状態で攻撃または破壊された際に最大で8ダメージという特大のバーンダメージを与える能力を持っている。Shadowverseのリーダーの初期体力は20であるため、8ダメージという値は非常に脅威的。
この能力はリーダーに攻撃した時にも働くため、直接攻撃を許した場合には最大16ダメージ(体力最大値の5分の4)もの壊滅的な被害を受けることになる強烈なフィニッシャー。
潜伏であるがゆえにロクな対策方法もなく、登場当初のカードプールではせいぜいランダム除去などでバーンダメージだけに抑えることくらいしかできなかった。
さらに同弾収録のアリスを中心とした序盤の動きの強さに加えて…
- ニュートラルデッキならデメリット無しの2コスト3/3として扱えるトーヴ
- 4コスト3/4で体力3以下の除去能力を持った豪拳の用心棒
- 5コスト2/4で必殺(戦闘を行った相手フォロワーを破壊)を持つ上に2点のバーンと回復を持った緋色の剣士
- 2コス2/1で攻撃力5以上のヴァンパイア・フォロワー(つまり昏き底より出でる者)をデッキから加えられる能力を持ち、エンハンス5でその後コストを下げる能力を持ったバフォメット
上記の強力なフォロワーが一堂に集まった結果、終盤に出されても十分苦しい『昏き底より出でる者』が中盤あたりに安定して出せるという頭のおかしい状況に陥ってしまった。
エモノハッケンイクゾー キュウーーン オレニシタガエー! デテコーイ エモノハッケンイクゾー 不思議な世界!素敵な世界! 目覚めなさい… 破滅の果に汝が罰有り…。(ここまで6ターン) |
「お前に負けるなら悔いはないさ…(ドカーン」 |
その結果、この「昏き底より出でる者」を軸にした【ニュートラルヴァンパイア】が大流行。
7つのクラスに2~3つのデッキタイプが存在するゲームにもかかわらずニュートラルヴァンパイアだけで使用率の3割を占め、勝率に至っては56%と地獄のような環境を生み出していた。
※…56%と書くと低く見えるが、同じデッキの勝率が50%になることを考えると、50%を大きく超えているのはかなり危険な状態。
以上のような惨状を生んだ結果、当ゲームを見限って引退してしまったユーザーが大量に発生。運営からまともな対策が来なければゲーム自体の雲行きすら怪しい状態となっていた。
そして、7/31のアップデートを期に大規模な下方修正(ナーフ)が行われた。トーヴはただの2/2となり、バフォメットもヴァンパイアフォロワーをただ手札に加えるだけのカードへとナーフ。
肝心の昏きもバーンダメージが5ダメージに固定され、フィニッシュ能力も多少強い程度に抑えられた。
また、これをきっかけに今まで周辺カードだけナーフして見逃されていたカード類も続々と下方修正が加えられ、運営のカード調整の方針に少なくない影響を及ぼすこととなった。
そのような下方修正や、以降登場するカードパックに収録されるカードの全体的なバランスの見直しによって、しばらく後にはそういった多くのユーザーから批判の声が出る環境というものは滅多に発生しなくなっている。
しかし「昏き底より出でる者」を中心としたカード群が抉った爪痕は深く、かつて遊んでいた人の中で「昔はシャドバをプレイしていたが、ワンダーランド・ドリームズを期に辞めた」というユーザーはかなり多い。
そういった大量のユーザー離れを起こした原因の一つとして、当カードは現在に至るまで話のネタとして語り継がれている。
2019年3月16日のゲーム内グランプリにて、歴代の環境デッキを当時の性能のままで使える「Legacy Decks Cup」が開催。
当然、過去に猛威を振るったニュートラルヴァンパイアも含まれており、当時の悪夢を知らないプレイヤーでもそのヤバさを知ることとなった。
そしてその後、ローテーション落ちからしばらくの月日が経った2019年3月28日にまさかのナーフ解除。元のヤバすぎる火力を取り戻したが、上述したサポートカード類は長いナーフされたままだった上に魔境とされるアンリミテッドではあまりにも遅すぎるのが現状。
2023年3月8日には、新フォーマット「マイローテーション」の開催に伴い、上記したカードの内トーヴを除いた面子がカード能力の変更を受け元の能力へと戻ったが、それでも現在のアンリミテッドのデッキと比べるにはカードパワーが低すぎるため、余程の事が無い限りこのカードが再び暴れる機会は無いと思われたが……。
だが、その「マイローテーション」フォーマットにて、昏き底より出でる者のヤバさが再び知れ渡ることになる。
マイローテーションとは、1~6弾カードパックまたは3弾から26弾の中から連続した5つのカードパックを選択し、選択した好きな時期のローテーションのカードが使用できるという内容の新フォーマット。
また、マイローテーションではカードパックの選択に応じて、バトル中リーダーが特殊能力を持つようになる。「昏き」が使用できる1~10弾における特殊能力は、
- 進化可能ターン開始時、PP最大値を+1、リーダーを2回復(3回)
- 進化可能ターン開始時、EPが0なら、EPを2回復(1回)
- 1ターン目の開始時、カードを2枚引く
となっている。
この中でも、とりわけ1つ目のPPブースト能力が特に強力。昏きは「デカくて強い」といったタイプのフォロワーであるゆえにPPブーストの恩恵を受けやすい。
このPPブーストはターン開始時に既に反映される仕様であるため、先攻の6ターン目には最大8PPとなり、8コストである昏きの素出しも考慮できるラインとなる。
また、昏きは強力な攻撃時能力を持っているため、2つ目のEP回復も心強い存在である。
このように、昏き底より出でる者はマイローテーション特有の仕様との噛み合いがかなり良く、昏きを中心としたニュートラルヴァンパイアは、10弾までのカードプールの中で組まれたデッキの中でも強力な部類に入ることとなった。
ニュートラルヴァンパイアはトーヴのみナーフ解除の機会を逃したものの、元の力を取り戻した当時の相棒のバフォメットやアリスなどと共に、昏き底より出でる者が同フォーマットにて暴れまわると予想されている。
歴代カードのリメイクがテーマとなる第13弾カードパック『リバース・オブ・グローリー』のアディショナルカード(追加カード)では、昏き底より出でる者がリメイク収録された。
名前 | 天閉ざす昏き者 |
---|---|
種類 | フォロワー |
クラス | ヴァンパイア |
レアリティ | レジェンド |
コスト | 8 |
進化前 | 攻撃力:6 体力:7 |
能力 | アクセラレート 2; 囁く昏き者1体を出す。 |
---------- | |
潜伏 | |
攻撃時 潜伏 状態で攻撃したなら、囁く昏き者3体を出す。 | |
進化後 | 攻撃力:8 体力:9 |
能力 | 潜伏 |
攻撃時 潜伏 状態で攻撃したなら、囁く昏き者4体を出す。 | |
CV | 立木文彦 |
収録セット | リバース・オブ・グローリー |
※アクセラレート…プレイするのに十分なPPがなく、自分の残りのPPがアクセラレートの値以上なら、アクセラレート能力のみを持つスペルとしてプレイできる能力。
※潜伏…自身が攻撃するまで相手カードの能力や攻撃の選択対象にならなくなる能力。
アクセラレートによって小回りの利く性能となった反面、ラストワードが消えていることや能力が横展開に変わっているため、フィニッシュ力は控えめとなっている。どちらかというとアクセラレートをメインに起用して、試合が長引いた場合のフィニッシュ手段として使うのが良いと思われる。
事前に横展開の準備をできるという点で言えば、自分の場に居るフォロワーを全て破壊してデッキのフォロワーと入れ替える能力を持つプルソンとは良相性。
第11弾カードパック『次元歪曲』に収録されている昏く淀む者・タルタロスはネクロマンサークラスのフォロワーだが、名前に『昏く』を冠し、潜伏と「攻撃時 潜伏 状態で攻撃したなら、」で始まる能力を持っている事から、昏き底より出でる者のオマージュの可能性がある。
第14弾カードパック『森羅咆哮』に収録されている魔神の使役者はファンファーレでランダムに異なるカードを加えるという能力を持っているが、その中の候補の一つに昏き底より出でる者が含まれている。
だがこのカードはヴァンパイアではなく、ウィッチクラスのカードであるためウィッチ限定で再びローテーションにて使えるようになったという不思議な現象が発生してしまった。
ちなみに能力で加わるカードの候補の他は、エルフのカシオペア、ロイヤルのジライヤ、ドラゴンのアドラメレク、ネクロマンサーの魔将軍・ヘクター、ビショップのダークジャンヌ、ネメシスの断罪者・シルヴィアである。
Shadowverse Shadowverseの登場人物一覧 ヴァンパイア(シャドウバース)
「濡れよ、果てよ、嗚呼、嘆く声よ。遍くは飲み込まれ、暗闇の最奥へ流れていく。
さぁ、永久より長く、瞬きより短き、汝の日が始まる。」
―『奈落の底』、終章、第一小節