概要
自動車・工作機械・建物などといった固定資産は企業に利益をもたらすが、処分した際に購入額分の損失が生じてしまい、業績が悪いわけでもないのにこれらを行なった年度のみ、貸借対照表を見ると大赤字になってしまうこともありうる。経年劣化するので売却した場合も購入時より大きく価格が下がってしまう。
そこで、減価償却費という仮想の費用を計上することで損失が特定の年度に偏らないようにし、利益を分かりやすくする手法をとる。
この手法を減価償却と呼ぶ。
何年にもわたって企業に利益をもたらし、経年劣化するものに減価償却が適用される。
自社で販売する商品(棚卸資産)、短期間所有するもの(消耗品など)、経年劣化しないもの(土地など)は適用されない。
減価償却費は当然ながら正確な額を出すのは不可能なので耐用年数などから大まかに見積もられる。毎年一定の額を計上する定額法や、毎年一定の割合を計上する定率法が代表的。
ただし、火災等の偶発的事情により固定資産の実体が滅失したときは例外であり、このような場合は滅失部分の金額だけ簿価を切り下げ、特別損失として処理することとなる。
なお、「購入額の元を取る」という意味でこの用語を用いる人がいるが、誤用である。
あくまで固定資産の費用計上の手法に過ぎず、規定の耐用年数や使用状況を使い続ければ減価償却費は無くなるためである。
例
例えば期首に1億円の工作機械を現金で購入したとする。
この時点では現金という資産が機械という資産に変わっただけなので損失は全く発生していない。
仕訳:
機械装置100,000,000/現金100,000,000
期末に毎年500万円ずつを減価償却費として計上する方法(定額法)をとると、理論上は機械の価値が毎年500万円ずつ下がっていくことになる。
仕訳:
減価償却費5,000,000/減価償却累計額5,000,000
12年後には減価償却累計額が6,000万円となり、この機械を期末に100万円で処分した場合、4,100万円の損失が発生する。
仕訳:
減価償却累計額40,000,000/機械装置41,000,000
固定資産廃棄損 1,000,000
しかし、処分しなかったとして、「この機械が欲しい」という人が現れて期末に5,000万円で売り代金を現金で受け取った場合、1,500万円の売却益が発生する。
仕訳:
減価償却累計額60,000,000/機械装置100,000,000
減価償却費 5,000,000 /固定資産売却益15,000,000
現金 50,000,000
ただし金額だけを見れば、1億円で買ったものを5,000万円で売っているため、5,000万円の損失となる。