潜水艇タイタン
せんすいていたいたん
アメリカ合衆国の観光会社オーシャンゲート社が、沈没したタイタニック号の探索、見学ツアーの為に運航していた小型潜水艇。
5人乗りで、全長6.7メートル、重量10,432キログラム。
小型潜水艇の上に深海の水圧に耐えられるほど外壁の強度は高く無くその事を忠告し改善をCEOに直訴した社員らは解雇されていた。
最後は 2023年6月18日、北大西洋で遂に船体が限界を迎えCEOと客合わせて5人を乗せたまま爆縮し沈没した。
船体の残骸が3800メートルもの深海に散乱しているため原因究明は事実上不可能と言われれているが沈没原因としては専門家によっていくつかの問題点が指摘がされている
1 円筒形の耐圧殻
通常深深海を潜行する潜水艇の耐圧殻は強烈な水圧を全体で受け流すため球形を採用するが本船では細長い円筒状のものを採用した。これは採算性を上げるために定員増を狙っての対策であったが
圧力が円筒部側面にのみ集中しやすいため強度不足になりやすく危険であると指摘されていた。
2 カーボンファイバー製の耐圧殻
通常深深海を潜行する潜水艇の耐圧殻は重量はあるが強度及び耐久性の高い鉄製であるが本船では軽量化と低コストを狙ってカーボンファイバーとチタンの複合構造であった。
確かにカーボンは理論上、基本強度は高いものの微細な穴があるため潜水を繰り返す度に海水が徐々に浸透して素材間の接着が剥離し強度が落ちて行くとされているうえ潜水船への採用実績が無いため使用過程でどのような不具合が出るかもわからず商用客船への採用は不適切であると指摘されていた。
また、実際2020年には疲労劣化が原因とおもわる異音が発生。潜航深度が3,000メートルに格下げされており、その後、船体は修理ないし再建されている。
なお、営業運用に入る前に実験船を使って耐久試験を行うことで耐久性をつかみ安全運航の実績を積むべきではないか?という意見もあったがオーシャンゲート社はこれを拒否:耐久試験をしながら営業運行も行う綱渡りな状態だった。
3アクリル製の観測窓
当船は船首に比較的大きな観測窓を持つがこの窓に使われたアクリル素材が1300メートルの深度での耐久保証しかされないものだった。
4 安全装備の不備
オーシャンゲート社は潜水するにつれて増加する圧力の影響を音響センサーとひずみゲージを使って分析し、船体の安全性をリアルタイムで監視する監視システムと7種類のバックアップシステムがあり安全性は確保されていると説明していたが 水圧の高さから
異常発生時は高速かつ急激に破壊が進行するため 専門家からは
「異常を検知してから浮上では間に合わない」他 「潜水開始後からの船体の変化を測定しているだけで潜水前からの亀裂は検知できない」ため実際には役に立たないものであると評価されていた。
5 乗客を乗せて運行するのに必要な公的機関による検査や認定を受けないままでの商業運行。(4000メートル潜れる潜水艇の中で唯一の未認証船)
本船はいかなる規制機関や第三者機関からの認証を受けていなかった。そのため、商業運行時に承認機関による認証を義務付ける
アメリカの規制下では客を乗せることが出来ず港にいる時点では乗客を乗せず、公海上で乗船させる対応をとっていた。そのため実情は違法操業スレスレの状態で 安全性について疑問符をつける意見を多く集めていた。
また、上記のように第三者による安全性へのお墨付きが無いため
オーシャンゲート社の語る安全性は全て自称でしかなく、それを指摘や疑問を呈する意見が続出。そのため当初は丁寧な説明を繰り返していたオーシャンゲート社CEOも次第に批判の多さに辟易し、安全性に関するコメントを徐々に影をひそめ最後には「安全性などイノベーションのためには意味がない」「安全が良いなら自宅にこもっていれば良い」など 安全性を軽視又は否定するようなコメントばかり繰り返すようになっていた。
以上にあげたものはこれでも問題点のほんの一部であり、船体 運営 安全管理と全てにおいて問題だらけであることから 今回の事故の前から業界では「絶対に乗ってはいけない船」「いつ事故を起こしてもおかしくない」とまで評されていた。
上記のようにかなり怪しい本船であったが その怪しい危険性に魅力を感じる一部の富豪がいた反面、逆に一度は申し込んだものの事前確認で危険過ぎることに気づきキャンセルを行なった2人組の親子がいた。
(このキャンセルで空いた枠に申し込んだ別の親子が実際に今回の事故の犠牲者となっている)