説明
一般的に煉獄とは、天国と地獄の中間にある贖罪の場のことで、生前犯した罪を炎で浄化させられる場である。
煉獄の名を冠するこの技は、一度受けたが最後、逃げることはもちろん己の意思で倒れることも許されず、打ち手の体力が尽きるまでひたすら連打を叩き込まれ続けることとなる。
罪を浄化する煉獄の炎の如く、泣いて懺悔しようとも、決して逃れる術はない。
言うなれば「一撃必殺」の対極、「連撃必殺」とでも呼ぶべき大技である。
作中に登場する大手空手団体「進道塾」の創始者である山本陸が開発し、一部の高弟にしかその要穴を伝えていない秘伝。
「回避も反撃も許さず一方的に攻撃し続ける」という絵空事めいたその技の正体は、主人公・佐藤十兵衛をして「格闘技のちょっとした革命」と称された。
その正体
秘伝とされたのには、大きな理由があった。
ただ素早く連打するのではなく、「一定のパターンに従って決められた手順の打撃を放つ」というのが煉獄の正体だったのだ。
対戦相手にはただの連続攻撃にしか見えないが、第三者が客観的に観察した場合その法則性に気付かれる可能性があることから、進道塾では第三者のいない1対1の状況以外での使用を禁じていた。
実際、裏格闘を観戦する目の肥えた客とはいえ、格闘家ではないにもかかわらず技の仕組みを見抜いた者が作中に登場している。
※誤解されがちであるが、本来武道における「秘伝」とは決してその流派最強の必殺技や、難解な教えを理解して得られる悟りなどではなく、「仕組みさえ理解すれば容易に会得できて、しかも非常に効果的な技術」全般を指す。即ち、簡単に模倣されるが故に秘匿するのである。
具体的な手順は以下の通り。
- A/片手型
- 裏拳(鳩尾)→裏打ち(顔面)→鉄鎚(金的)→肘打ち(側頭部)→手刀(顔面)
- B/両手型
- 鉤突き(脇腹)→肘打ち(側頭部)→両手突き(顔面+金的)→手刀(首)→貫手(鳩尾)
- C/片足型
- 下段回し蹴り(膝関節)→中段回し蹴り(脇腹)→下段足刀(膝)→踏み砕き(足甲)→上段足刀(顎)
- D/両足型
- 左下段前蹴り(膝)→右背足蹴り上げ(金的)→左中段前蹴り(下腹)→左中段膝蹴り(鳩尾)→右上段膝蹴り(顔面)
- E/片手片足型
- 振り上げ(顎)→手刀(側頭部)→鉄槌(脳天)→中段膝蹴り(鳩尾)→背足蹴り上げ(金的)
- F/両手両足型
- 左上段順突き(顔面)→右中段掌底(鳩尾)→右上段孤拳(顎)→右下段回し蹴り(膝関節)→左中段膝蹴り(脇腹)
- G/両手両足頭型
- 右中段回し蹴り(脇腹)→左上段後ろ回し蹴り(側頭部)→左中段猿臂(胸部)→右下段熊手(金的)→上段頭突き(顎)
このようにそれぞれ5つの急所への連続技からなる7種類(左右14種類)の型で構成され、形稽古によって習得する。
使い方
まずA~Gのうち1種から開始。1つのパターンが終わったら相手との距離・体勢といった細かい状況に応じて新たなパターンに即座に切り替え、以降これを絶え間なく繰り返す。
反撃しようにも割り込む隙がなく、無理に反撃しようとすると逆に深く打撃をもらってしまい、倒れようにも鉤突きや肘振り上げなどによって無理矢理体を起こされてしまうため、この技を喰らった場合、使用者が止めるまで相手は逃れることができない。
弱点
高速の打撃を絶え間なく繰り返すという性質上、使用者の体力を大幅に消費する。
そのため、相手のタフネスが異常に高かったり、疲労・ダメージを回復するような薬物を使用するなどして一度の連撃で仕留めきれなかった場合、体力切れで逆にピンチに陥ってしまう可能性が生じる。
また、一撃一撃の威力は軽いため、必殺を期すなら使用者側にも「骨折箇所を狙う」「途中で投げにスイッチする」などの工夫が要求されることがある。
なお、煉獄をどの型からでも繰り出せるほどの実力者ならば大抵は最初の数発で決着がついてしまう。
そのため、十兵衛のような「特定のパターンからしか発動できない未熟な者」にとってこそ必殺技として大きな意味合いを持つ(十兵衛は現時点で、左脇腹への鉤突きからでしか煉獄を始動できない)。
この技を編み出した山本陸自身、煉獄を勝つための技ではなく「進藤塾を貶めた者を煉獄に突き落とすための技」、すなわち制裁用の技として位置付けていた。