概要
同人ゲーム。大王ソフトが製作。動作環境はPC98シリーズMS-DOSのみ。windows用リメイク版「究極バカげ~むG1」も公開。コンテストパークHPから無料ダウンロード可能となっている。
略歴
初出は1996年のログインソフコン第7号。その片隅にひっそりと掲載された。
掲載時点での獲得賞金額は1万4円。しかし、その三ヶ月後に発刊された第8号の人気ランキングで6位を獲得。
ソフコンの誌上ルールとして、ランキングでTOP10に入った作品はその号にも収録され、追加賞金2万円が支払われるというものがあった。翌9号ではランキング入りを逃すものの、同誌内で「極めよ!味ゲー道!」なる専用コーナーが作られる。
ゲーム内容
ジャンルはコマンド選択式アドベンチャー。しかしゲームデザインの随所に既存概念へのアンチテーゼが盛り込まれ、戦闘シーンでは三択クイズバトルを採用し、RPGのようにレベルアップする。
まず特筆すべきは、オープニングテーマ曲が存在するということ。これは当時アスキー社が公開していたサンプル曲に、作者が勝手に(!)歌詞をつけるという手法によって作られ、その耳に残る曲の出来と、謎のフィット感に満ちた詞の融合によって、えらく完成度の高いものになってしまっていた。
次にゲームの雰囲気を決定づけたのは、やる気があるのか無いのか良くわからないグラフィックであろう。基本的にはノートの落書きレベルの絵で構成されているのだが、キャラクターの顔グラフィックだけは無闇に巧く、しかもセリフに合わせて口パクするという謎のこだわりまである。
そして何よりストーリーである。ゲームは普通の高校生である「千堂五郎」が遅刻ギリギリで学校に飛び込むシーンから始まるのだが、教室の入口で待ち構えていた不良グループの生徒にいきなり襲われ、危うくなったところを「ヴィナス鉄石」なる人物に助けられるという展開となる。しかしこの「ヴィナス鉄石」のグラフィックは、どこからどう見ても「あしたのジョー」に登場する「力石徹」その人であり、「目が合ったらとりあえず殺せ」というインパクト抜群の発言をしてメインキャラクターの一人かと思わせるのだが、その後のゲーム展開には一切関係がなく、また登場もしない。
このように、シナリオ展開は終始「その場のノリ」と「キャラクターの使い捨て」によって構成される。アドベンチャー部分の謎解き要素も、「無人の教室で焚き火をしてスプリンクラーを作動させる」「警察官の留守中に交番のドアと看板を盗み、それらを組み合わせて橋を作る」など、全くもって意味不明であるが、先の展開が読めないという部分では成功していると言える。
総評としては、受賞時のソフコン編集者のコメントを引用するのが最もわかりやすいだろう。
「世の中の平和をこういった作品からひしひしと感じるよ。タイトルにウソいつわりのない、究極に、おバカなゲームだ。そしてタイトルどおりステキなゲームだ」
「このタイプのゲームのほとんどは、絵のヘタなただのつまらないゲームで終わってしまうことが多い。しかし、この『究極バカげ~む』に関して言えば、バカゲーに必要となる無意味なストーリー、ショボイ絵、不毛な会話がいまく噛み合っていて、合格点をあげられるいいでき栄えになっていたぞ」
本編後のストーリー
のちに作者のHP上で、もともと全7話構成だったことが判明した。
第1話では、主人公「千堂五郎」が無敵の狂戦士「ステキング」に変身する過程が描かれているのだが、エンディングで変身解除が不可能だという事実が明らかになる。
それを受けての第2話で、ステキング姿への羞恥心から五郎は登校拒否になってしまうが、ヒロイン「山本琴音」のピンチを見かねて学園に赴き、そこで宿敵「カゲキング」に出会うとされていた。
第3話では、謎のイケメンヒーロー「サワヤカイザー」が登場。第4話では真ヒロインである鬼娘の「未凪」が登場するとされ、第5話では未凪の犠牲をもとに手に入れた「雷帝剣」によって、ステキングはパワーアップ形態である「ゴージャスステキング」に進化する。第6話では世界の終末が始まり、カゲキングは「グレートカゲキング」、サワヤカイザーも「スッキリサワヤカイザー」へと各々進化し、ともに災厄の元凶である大蛇神と闘うとされていた。
そして最終話「殺し愛」では、ヒロイン「山本琴音」が主人公の実の姉であることが発覚する。さらに大蛇神は実の母であり、五郎の望む世界を作るために一度現世を破壊しようとしていたことが判明。五郎は苦悩しつつも現世を守るために闘い、結果として世界再生の手段を失ったまま、神である母を殺してしまうというバッドエンドに終わる予定だったらしい。
作者はHP上で、モチーフが「たけしの挑戦状」であることを明かしており、そのエンディングに表れる「例のメッセージ」を「究極バカげ~む」のエンディングに使おうとしていたとも告白している。
つまり、「究極バカげ~む」はあくまでも「バカゲー」であり、そこにどんなに熱い展開やダークな設定が盛り込まれていたとしても、決して騙されてはいけないと作者は言いたかったようだ。それを踏まえて「究極バカげ~む」のストーリーを良く観察してみると、なるほど「表面上」「熱い展開のような」「それでいて何も考えていないような」描写が散見されるのがわかる。この作品をプレイしていて、もしほんの少しでも心を動かされてしまうようなことがあれば、あなたはまんまと作者の思惑に乗ってしまったということになるのだろう。
リメイク版
windows対応のリメイク版「究極バカげ~むG1」は、基本的にはMS-DOS版の忠実な移植作となっている。しかしオリジナルから4年の歳月を経て製作されたG1は、確かな技術の進歩を感じさせる。
まず、落書きとしか思えなかったグラフィックは完全に一新。随所に3Dグラフィックが使用され、戦闘シーンのアニメーションもぬるぬる動くものに変更されている。
またサンプル曲ばかりだったBGMも、半数程度は自作のものに変えられており、時代性を感じさせるクイズ問題も開発当時のものに変更された。
このクオリティーアップの理由は、実質一人で製作していたMS-DOS版とは違い、多人数が製作に関わったことが主たるものだろう。
作者の動向
「究極バカげ~む」の魅力は、作者の破天荒な後日談にあると言っても過言ではない。
作者自身のHP上で明らかにされたところによると(現在ではHPは削除されている)、作者は大学進学後、エニックス社の「ドラゴンクエスト フリーシナリオアシスタント募集」の最終面接で、「堀井雄二」氏に直接、自分の代表作として「究極バカげ~む」の名をあげ、会場を沈黙の渦に叩き込んだことがトラウマになっていると告白していた。