「それは世界の未来も過去も、希望も絶望も、勝利も敗北も、すべてを制覇する者の名───」
作品概要
連載期間と書籍展開
本作は「電撃文庫MAGAZINE Vol.24」(2012年)から「電撃文庫MAGAZINE Vol.52」(2016年)までに掲載されていた。Vol30,31,38,46には掲載されていない。
また、2013年から2017年の間に電撃文庫から文庫版が発行されており、一巻から三巻まではプロローグにあたる『Introduction』、次巻予告にあたる『turn to the next』を、四巻は『Introduction』のみをそれぞれ上遠野浩平が書き下ろしている。
作風
本作のジャンルはSFである。例に漏れず他の上遠野作品と世界観を共有しており、時系列で言えば、氏の作品『ヴァルプルギスの後悔』の後の話となる。
舞台は特殊能力者を集めた学校(正確には塾だが)「NPスクール」であり、異質な形態ではあるが、基本設定は標準的な学園ものや、能力バトルものを踏襲したものとなっている。しかし、世界を裏から牛耳る統和機構の存在や「エンペロイダー」、「MPLS」、「奇蹟使い」などの特殊な造語・概念を基盤とした展開はありふれた学園ものの枠に収まらない作品性を際立たせている。
また、「可能性」や「未来」といった、多くの上遠野作品に共通したテーマも根底にあり、霧間誠一の引用やお馴染みのキャラクター、知る人ぞ知るマイナーなガジェットの登場など、氏のファンへのサービス要素も多く含まれていた。
ストーリー
世界を裏から牛耳るシステム「統和機構」は、これまでの人類に害を及ぼすという、より進化した新人類、MPLSを狩りたてていた。そんな活動の中で、彼らは、新人類の要素を持つ特殊能力者でこそあるが、しかし人類に害があるかは分からない者たちを監視・育成する施設を作りあげた。それが「NPスクール」と呼ばれる小規模な学校である。
そこに一人の生徒が居た。彼の名は才牙虚宇介。つかみ所のない、無気力で、しかし変に頑なな生徒である。
彼と、彼の妹が「エンペロイダー」なる謎の噂と出会う時、血塗られた宿命と、人類の未来についての物語が幕を上げる──。
主な登場人物
才牙虚宇介
NPスクールに通う学生。つかみ所がなく、無気力だが、変に頑ななところがある。能力名は〈ヴィオランツァ・ドメスティカ〉
才牙そら
虚宇介の妹。NPスクールには通っていないが、〈ナイトフォール〉と呼ばれる特殊能力を持っており、統和機構からマークされている。
日高迅八郎
NPスクールに通う学生。タレ目であり、そのことでよくからわかれている。裏表のない性格である。能力名は〈サルタン・オブ・スイング〉
御堂璃央
NPスクールに通う学生。クールな少女だが、統和機構上層部と繋がりがあるため、周囲からは疎んじられることもある。余談だが、彼女は『ヴァルプルギスの後悔』にも登場する。能力名は〈ホワイター・シェイド〉
志邑咲桜
NPスクールに通う学生。比較的普通の少女だが、統和機構上層部から呼び出されたことがある。その際、とある研究者から「自分の殻を破りたくてしょうがない。限界があるなんてことを認めたくないって思っている」という自身の本質を看過された。能力名は〈ティピカル・コルプス〉
志邑詩歌
志邑咲桜の妹。内気な少女だが、決して弱いわけではない。才牙そらとは友人関係にある。
箕山晶子
NPスクールに通う学生。好戦的であり、その態度は虚宇介から「どこか憂さを晴らしているようだ」と評されていた。能力名は〈クェーサースフィア〉
室井梢
NPスクールに通う学生。自分に圧倒的な自信がある。能力名は〈アロガンス・アロー〉
風洞楓
NPスクールに通う学生。上遠野作品に登場する標準的な能力者であり、様々なものに翻弄される。能力名は〈ウィンド・チャイム〉
反町碧
NPスクールに通う学生。強力な能力を持ち、性格は他のスクール生同様強気である。能力名は〈ストレート・ノー・チェイサー〉
フォルテッシモ
統和機構に属する男。世界最強と目されており、才牙兄妹に興味を示している。唯我独尊的な考えを持っており、「強さ」を絶対的な基準ととらえている。
誤植
文庫版第三巻274ページにて、次のページである275ページと同じ記述が繰り返されている部分がある。
また、見開きの挿絵を挟んで続く278ページの一行目は『んだ。』から始まっているが、その前の展開が載っている275ページの最後の行は『「───」』という台詞で終わっており、話がつながらなくなっている。
関連項目
※以下ネタバレ有り