黒部ダム
くろべだむ
富山県立山町の黒部川上流にある水力発電を目的としたダム。通称「くろよん」。アーチ式が採用され、その高さは日本一。長い歳月と莫大な費用を掛け建造された。また、その裏で過酷な労働環境により多くの犠牲を出した。
巨大なアーチ式ダムで知られる黒部ダムの堤は、高さ185m、長さ492mに及ぶ。そこから毎秒10トンのも大量の放水が行われる。
戦後、日本は急激な経済復興を迎え、高度経済成長に入りつつあった。
しかし、電力が追い付かず、停電が頻発した。これを解決するために立案されたのが、黒部川上流の水力発電所建設だった。
1956年、このダム建設資材を運ぶため、大町トンネル(関電トンネル、長野県大町市)の建設が開始された。しかし、破砕帯と呼ばれる軟弱地層にぶつかり、流出する大量の地下水や土砂で、工事は難航した。
8ヶ月かけてこれを突破、この大町トンネルを通して、多くの建設資材が運ばれた。
その後始まった本体工事は、険しい谷にあることから、資材のカットや工期短縮を鑑みてアーチ式が採用された。工事は急ピッチで進められ、建設年数7年、総工費513億円、総人員延べ1000万人をかけ、1963年に完成した。
一方で、第4ダムの建設では、転落やトラック、トロッコなどによる労働災害、上記の無謀な工事による、劣悪な労働環境により、延べ171人が犠牲になった。
また、第3ダムの建設でも過酷な労働環境で、多くの労働者が死亡した。犠牲者の中には日本の植民地政策で土地を追われ、出稼ぎなどに来ていた朝鮮人も少なくなかった。
黒部ダムへは一般の人も立ち入りが可能で、観光スポットも整備されている。周辺交通もかなり整備されており、観光しやすい。ダムの堰堤や展望台からダムを望むことが出来、放水された水にかかる虹は有名。黒部湖では遊覧船も運行されている。
黒部ダムレストハウスでは、ダム湖をモチーフにした「黒部ダムカレー」が名物。ルーにほうれん草ペーストを入れることで、エメラルドグリーンの黒部湖を再現している。
かつて、黒部ダムの建設作業員が食していたカレーがルーツとされ、それが扇沢レストハウスに受け継がれた。それをもとに黒部ダムレストハウスで考案されたのがこのカレーである。
外階段のゴール地点にあるレインボーテラスには、黒部ダム建設の歴史を知るための特設会場があり、難工事やそれにかかわった人々の苦労や困難を知ることが出来る。
かつてはトロリーバスがあり、1964年から2018年まで運行されていた。現在は電気バスが大町市方面の交通を担っている。