「ぼくにはベルトーチカとお腹の赤ちゃんがいる。これは絶対的な力だ」
概要
『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』のシナリオ初期稿をベースに執筆された小説作品。著者は同作の総監督を務めた富野由悠季。
シナリオ自体はサンライズ内部での審査時に「アニメーション映画の主人公が妻子持ちになるのはどうか?」「ロボットアニメの結末がロボットの否定であってはならない」という批判を受けて改訂が行われ、現在知られる「逆襲のシャア」のシナリオに改められている。
ストーリーの大筋は劇場版とほぼ同じ(この段階でストーリーが完成していると言っても過言ではない)であるが、キャラクターの名前や設定の一部などは初期のシナリオに沿った物が採用されている。
特にベルトーチカ・イルマが登場する事が劇場版との大きな違いが挙げられ、本作が機動戦士Ζガンダムの続編であることがより明確に伝わる内容となっている。
逆襲のシャアのノベライズは本作の他、同じく富野による「機動戦士ガンダム ハイ・ストリーマー」があるが、こちらの作中描写は劇場公開された映画のそれに準じており、また作品の前日談も描かれている。同作ではベルトーチカとアムロはグリプス戦役後に分かれている事が語られている。
本作に登場するモビルスーツは、単純に劇場版に登場する機体名と違う程度で性能・デザイン共に大きな違いはないが、小説の口絵は出渕裕によって大幅にアレンジがされており、特にνガンダムは後にHi-νガンダムと呼ばれプラモデルや各種ゲームに登場するほどの人気を誇っている(作中に於いてHi-νガンダムは単にνガンダムと呼ばれており、役割も劇場版のそれと同様である)。
同様にサザビーもナイチンゲールとしてリデザインされ(カラーイラストではサザビーと同じデザインだが、モノクロイラストではそれとは大きく離れたシルエットに改められている)、こちらも人気を博している。
なお、のちに発行されたブライト・ノアの息子ハサウェイ・ノアが主人公として描かれた「閃光のハサウェイ」は本作の続編であり、クェスを誤って殺してしまったという十字架を背負わない限り語られることはなかったであろう物語である。
1988年に角川書店(現KADOKAWA)より発行され、2014年にコミカライズされた。
漫画版の作画はさびしうろあき、柳瀬敬之が担当。
劇場版との差異
- アムロとベルトーチカが順調に交際を進めており、同棲中。懐妊までしている(副題である「ベルトーチカチルドレン」はベルトーチカのお腹の子を指している)。
- チェーン・アギが登場しない(元々ベルトーチカの役割だったものを劇場版にするにあたって彼女が引き継いだ為)。
- 登場人物の名前が違う(人物そのものは同一であり、ただ名前が違うだけ)。
- 登場するMSなどの名前が違う(↑上記に同じく)。
- クェスがハサウェイの誤射により戦死。
- クライマックスシーンでのサイコフレームの共振の動機がベルトーチカのお腹の子。
- チェーンと違い、ベルトーチカは生還している。
などが挙げられる。
もしもベルトーチカが無事出産していたとしたら「閃光のハサウェイ」の時点で約11歳前後になっているはずだが記述が見られない為、不明。またベルトーチカの本作以降の足跡も不明である。
劇場版「逆襲のシャア」を正史とした「機動戦士ガンダムUC」には再登場を果たしている。(詳細はベルトーチカ・イルマの項にて)