セル画
せるが
概要
薄く透明な板状のプラスチック板にキャラクター等が描かれたもの。通称「セル」(これは過去にはこの板にセルロイドが用いられたためである)。30分のアニメでさえ数千枚のセルが必要な事もあった。
なお、セルが使用されていた頃のアニメは、フィルム撮影だったという事もあり、完成後には大抵、全ての場面が、僅かながらにぶれている(いわゆる、「画面ブレ」である)。これは、デジタル画に変更された後も、一部のアニメ映画(例:『ONEPIECE FILM STRONG WORLD(2009)』以前の『ONEPIECE』の映画(第1作はセル製作のため例外)や『ドラえもん のび太とふしぎ風使い(2003)』、『ポケットモンスター アドバンスジェネレーション』の劇場版シリーズや「ジブリ」製作のほとんどの作品など)においても、その頃の名残として存在する。
なお、『あらしのよるに(2005)』では、約15万枚のセルを使用しているというが、「画面ブレ」は、全く確認出来ない。
システム
かつて一般的なアニメは紙に手描きされた「背景などの動かなくてよいもの」とセルに描かれた「キャラクターなどの動かす必要があるもの」によって構成されていた。
セルは複数枚重ねることが可能(もっともあまり重ねすぎると問題が生じるが)である。
キャラクターなどの動くものをスムーズに動かすためには、フィルムのコマ数と同じく一秒あたり24枚(デジタル作品だと1秒間に30枚)が必要となる(ただし、1秒当たり8枚でもある程度は動かすことは可能)。そのため作業の簡素化と多人数での分担作業時の整合性を高めるためにグラデーションやエアブラシを使わず色をきっちりと塗り分ける独特な技法として進化した。
作業の歴史
当初は動画用紙に鉛筆で描かれた原画から、特殊なインクと付けペンで線画をトレースするところからの作業であった。後に動画用紙から直接セルに転写する技術が登場した。
とは言え、数百枚から数千枚ものセルを人力で彩色するのは大変な労力を要した。そのためセルの使いまわしや動きの省略、セルではなく撮影のカメラを動かすなどの「セルを省略する手法」が発達した。一例を挙げると魔法少女ものなどによくある変身シーンなどはセルを新規に起こす作業を節約するためのものであった。
注意していると分かるのだが、大きくパースやカメラアングルが変化するシーンにおいては単色や単純な繰り返しパターンで背景が描かれていることが多い。
このようなシーンにおいては、背景を数枚で済ませることが困難であり、かといってすべてのコマで正確なパースの背景用のセルを描き起こすのは莫大な労力が発生するからで、後述する「CG」は当初はこのような三次元的な背景の製作に使用されることから始まっている。
(テレビアニメで始めてCGが使用されたのはドラえもんのタイムマシンの背景である)
セルアニメの場合、他のアニメーションでは不可能、あるいは難しいとされるいくつもの特殊な技法が開発された。一例を挙げるとセルにカッターで浅い傷を何本も刻み雨の表現としたり、意図的に折り目をつけて撮影光を反射させ逆光を現すという表現も可能である。また、現在では「どのようにそれを行ったのか」がまったくわかっていない技術も存在するといわれる。
もちろん、セルを用いずにアニメーションを作成することも可能である(粘土を使ったクレイアニメや、パラパラ漫画の手法を用いる方法)が、セルを用いるよりはるかに手間がかかるため、あまり行われない。
撮影後
撮影後のセルは会社により異なる。セル画が保管されることは(場所の関係上)まれであり、関係者などに配布したり、一定期間保管の後そのまま処分されたりする。このようなセル画はまれに市場に流れることがあり、有名アニメ、かつ人気キャラクターおよび有名シーンのセル(たとえばディズニーの初期作品)は高値で取引されることもあった。
そして現在
しかし、この手法はコンピュータの進化に伴いCG(コンピュータグラフィック)によるアニメーションに置き換えられるようになり、現在では趣味用や芸術表現、設備の制限でCGが使えない環境の場合など、一部の利用者に使われるのみとなっている。特にアメリカ合衆国をはじめとした海外では従来のアニメ表現は衰退してしまい、3DCGのアニメが主流となっている。
日本国内でも、2013年に最後までセル画にこだわっていた『サザエさん』がフルCGに移行したことで「セル画」は商業的にその役目を終えた。
ただし、セル画が過去のものになった現在もなお、日本国内ではセル画時代の表現手法を継承したアニメ塗りのアニメが主流となっている。また、アニメ塗りから脱却して水彩画調の塗り(これはアナログでは上述の「パラパラ漫画」の手法になってしまうため非常に手間がかかる)を採用した『かぐや姫の物語』などのCGアニメもあるが、これも主流ではない。