アリス・サマーウッド
ありすさまーうっど
CV:水樹奈々
アリス・サマーウッドとは、「ハイスピードエトワール」の登場人物である。
所属はアリアンロッド・グランプリで、スポンサー企業はヤマト運輸、グッドスマイルカンパニー、serendix。
スポンサーの中でもクロネコヤマトのアピールが特に顕著で、レーシングスーツの上半身はヤマトの配送業者を連想させる緑の縦縞、アニメ作中では一番目立つバストの上に大きく「YAMATO」のロゴが描かれている。
黒を基調としているレーシングカーの車体には、クロネコヤマトの宅急便を連想させる黄色と緑の差し色が追加され(初期に描かれたコラボイラストでは、まだ差し色はなくほぼ黒一色のカラーリングで描かれている。これを実際のモータースポーツに照らし合わせるなら「シーズン開幕前の暫定カラーリング」だった、と解釈出来る)各所の目立つ位置にヤマトのロゴマークが貼られまくり、まるでヤマト運輸専用車のようなカラーリングになっている。
※もっとも実際のモータースポーツの世界において、「マシンがスポンサーにちなんだカラーリングになる」というのは決して珍しい話ではない。
アニメ第3話のエンドカードには、放送当時の2024年4月に運航を開始したばかりの専用空輸機が描かれた(下の画像)。
pixivにおいても「実在するヤマト運輸の飛行機」が描かれたイラストはこれが初となる。
圧倒的な勝率を誇る女性ドライバーである事から『クイーン』という愛称を持つ。
『キング』ことロレンツォとは対照的に、ノリと勢いの走りでファンを魅了している(ちなみに、武戦レーシングの監督である高瀬川芳樹も、彼女のファンを公言している)。
物語開始時点では2年前にデビュー、女王の盾と称されるリチャードの堅実なサポートもあって、凛のデビューシーズンでは、早くも第2戦(サーキット・ウル・エティハド)と、第3戦(サザンベイストリート・サーキット)で優勝している。
その走りの本質を簡単に言えば「野性的」又は「感覚的」であり、第9話で描かれた第10戦(白玉蘭サーキット)の決勝レースでは、バトルの最中に悠然から「毎回毎回ラインが違う!?そのくせタイムが上がってる、どんだけデタラメなの!?ビーストに名前変えなさいよ!」とまで言われる程である。
更に、第11、12話で描かれた最終戦(大阪関西万博コース)では、他車がタイヤ交換でピットインする中、彼女は消耗したタイヤのままコース上にとどまり続け、しかもその状態でも速いラップタイムを刻む事が出来るなど、相棒のリチャードのように緻密な計算によるタイヤマネジメントでタイヤを温存するのではなく、たとえタイヤが消耗した状態でも、感覚的に新品タイヤ時と同様に乗りこなしてしまえるだけのテクニックを持ちあわせている。
故に、現状では周囲からは唯一キングに対抗出来るドライバーと目されているのだが、それでもキングからすれば「いいね、あと二年もすれば隣に並ぶだろうさ」と評される程度のものであり、彼の走りのレベルには今一歩及んでいないようである。
しかし、「キングと走った者は一年目に憧れ、二年目に絶望する。絶対一位になれない」とまで称される彼を前にしても決して絶望する事なく二年目以降も果敢に挑み続け、リチャードのアシストも込みではあるが勝利をもぎ取る所まで来ているのは紛れもない事実である。
その走りのスタイルは、彼女を目標とする浅河カナタにも多大な影響を与えているが、後天的に獲得したカナタの走りとは違い、アリスのそれは天性の物であり、カナタ以上の勇猛果敢さを見せつつ、それをさも当たり前のように自然体でやってのけているのが大きな違いであり、現状における両者の決定的な差ともなっている。
そして、強く速い者と戦う程に彼女の感情は昂ぶり、走りは更に過激に、更に情熱的になっていくのである。
ちなみに、好奇心と探究心が非常に旺盛で、面白い事や興味を惹かれた事には首を突っ込まないと気が済まないタチらしく、公式サイト及び公式Xで配信されるスピンオフミニマンガでは、
- 「ブルーカレーパフェ」なる珍妙な食べ物を「WOW!アメイジング!」と喜び勇んで食す
- ストリートダンスに飛び入り参加して共に踊りまくる
- 街の精肉屋から流れる「♬安いよ~寄ってらっしゃい見てらっしゃい~♪」の声(呼び込み君のような機械の音声)につられてコロッケをしこたま買い込んで頬張る
など、その行動は奔放そのものであり、更に同スピンオフマンガでは、リチャードからのレース関係のアドバイスまでもブルーカレーを食べながら聞き流してしまうなど、その奔放さに周囲の者はみな振り回される事になる。
それ故に周りからは(上記の第10戦時の悠然や、スピンオフマンガではキングからも)「『クイーン』というより『ビースト』では?」と評されてしまっている。
アニメ1話のプロローグでは、子供時代のアリスと思わしき少女が大阪万博でのど自慢大会らしきイベントに参加しており(これは、アリスを演じる水樹氏が子供の時に地元では「のど自慢大会荒らし」として知られていた、というエピソードをモチーフとしていると思われる)、好奇心旺盛な彼女らしいシーンとなっている。
第2話で描かれた、凛の初陣となった中東でのレース(シャングリラ・オブ・デザートサーキット)にて、一度は周回遅れにした凛に抜き返された事から彼女に興味を持ち、第3話では直接凛の元を訪れる(凛はレースにも世事にも疎く、この時はアリスが自己紹介までしているにもかかわらず、彼女がNEX Raceのトップレーサーだと気付かず、自分のファンだと勘違いしていた)。
そこで彼女の人柄に触れるなどして(その際、凛の実家のもんじゃ焼き屋に招待され、見るも食べるも初めてのもんじゃ焼きに舌鼓を打っていた。しかし、支払いが現金のみで電子マネーが使えず、その場は凛に立て替えてもらう代わりに自身の名と「1000円ツケ」と書かれたサイン色紙を店に贈っている)、有意義な時を過ごす。
その後はアリスの提案で武戦レーシングのファクトリーでシミュレーターを用いたマッチレースを行い(ここでは、同チームの監督代行である神楽千登世と親しげに会話している事から、どうやら二人は顔なじみのようである)、凛を完膚なきまでに圧倒したものの、凛がデビュー戦で自身を抜いた走りを再現しようとしていた事を知ってますます彼女を気に入り、千登世に無断で凛をスカウトしようとした後に改めて自己紹介をし、そこで彼女に「よろしく、私のライバルさん」と告げるのだった。
第9話で描かれた第10戦(白玉蘭サーキット)の決勝レースでは、序盤にキングが謎の途中リタイヤで脱落してからは終始トップを快走し、終盤には自身に憧れを抱くカナタとの初対決が実現。
永遠との連携でリチャードを下したカナタに「私はリチャードほど優しくないわよ!」と勇ましく告げ、その挑戦を真正面から受けて立つ。
そこから懸命にクイーンに喰らいつくカナタを、周回ごとに走行ラインを変えてなおラップタイムを上げていくという常識外れの走りで圧倒し、最後はコース外に押し出してリタイヤ(ただし、実際はカナタ自身がこらえきれずに単独でコース外に飛び出した結果であり、アリスここまでの間、カナタのためにギリギリ一車線分の走行ラインを外側に残しており、悪質な押し出しは一切していない)に追い込む。
だが、その際にカナタのマシンがコース上に巻き上げた砂煙で一瞬視界が遮られた事と、カナタと共にコース外側にマシンを寄せていた事でイン側がガラ空きとなってしまい、その隙を突かれて悠然にオーバーテイクされてそのまま振り切られてしまい、2位でレースを終える事となった。
そして、第11、12話で描かれた最終戦(大阪関西万博コース)では、リチャードの援護もあって序盤から上位を快走し、第9戦同様にスタート直後のリボルバーストでトップに立っていたソフィアを僅か1周のうちに抜き去りトップに躍り出る。その後はソフィアだけでなく徐々に追いついてきていた悠然との三つ巴のバトルに突入するかと思われた。が、
後方から凄まじい勢いで追いついてきた一台のマシンが、ソフィアと悠然を瞬時に抜き去り、更にそのマシンが予選でマークしたトップタイムを、自らファステストラップの形で更新してみせる事で、クイーンへの挑戦状代わりとして叩きつけてきたのである。
ここに、デビュー初年度の新人でありながら、(ルール違反だったとはいえ)アリス自身だけでなくキングまでも抜いてみせて以来、アリスがずっと興味を持ち続け、そして今しがたソフィアと悠然を苦も無く抜き去ったピンク色のマシンを駆る若きドライバー「輪堂凛」との待ちに待った直接対決が遂に実現する。
それは後に『女王決戦』と称される程の壮絶な死闘となった。
まずは、双方ピットインでタイヤを新品(ミディアムタイヤ)に交換して勝負の身支度を整え直し、闘いの幕は切って落とされた。
交換後は凛が猛然とクイーンに追いすがっていくが、クイーンをよく知る監督代行の千登世曰く「彼女はここから」であり、「温まったわ。ついて来なさい!」と発した直後、まさに本領発揮といわんばかりに猛然とペースを上げていく。それは、「コース内側の縁石ギリギリ、否、タイヤが縁石を激しく踏み超える事すらも恐れぬ程に攻め込んでいく」という凄まじいものであり、解説者曰く「何者も恐れないこの走り、まさにクイーンの呼び名にふさわしい走り」そのものであった。
だが、凛も負けじとペースを上げ、その走りはクイーンとは対照的な「まるで踊るかのような走り(解説者談)」を見せて、二台は右へ左へとマシンを振りながらサーキットを駆け抜けていく。その光景はまるで「二羽の白鳥と黒鳥が激しく羽をはばたかせて舞い踊る」かのようであり、この対決を見守っていたプリマステラのHikariは、凛とクイーンの対決をバレエ作品である「白鳥の湖」の登場人物になぞらえ、「オデットとオディール」と評するのだった。
そして対決の最中、彼女の心は更に熱く昂ぶり、
『これよ、これ!あの時からずっと待っていたわ。もっと熱くさせて!もっと刺激をちょうだい!もっと…もっと…もっと!私を速くしなさい!キングよりも!!』
と、歓喜と渇望の雄叫びをあげる。
それは、「自身を熱くさせる新たなる挑戦者と全力全開で戦える喜びと、戦いに勝った暁には、更に先に待つ最強の敵をも倒せる領域に自身が到達したい、いや、到達出来るという渇望と確信」がもたらした魂の雄叫びであった。
そして、その雄叫びを引き連れたまま、勝負は海上に掛かる橋を超えた最終セクションへともつれ込んでゆく。
そして、永遠に続くかと思われた勝負は一瞬、かつ、あっけなく決する。
ここで、海からの横風を受けたクイーンのマシンが一瞬アウト側にぐらつく。その一瞬の隙を見逃さず凛がリボルバーストを発動して遂にクイーンをイン側から抜き去ってメインスタンド前を駆け抜け、この女王決戦は凛に軍配が上がったのである。
負けはしたものの、彼女はさっぱりとした表情を浮かべ「私が食べられちゃうなんて。でも、喜んでいる暇はないわよ。彼が来るわ」と告げ、いよいよ戦いはキングとの最終決戦へと突入していく事になるのである。
凛とキングがタイヤ交換のためピットインする中、クイーンは「コンマ1秒だって惜しいの!」と、そのままタイヤ交換をせずにコース上にとどまる選択をし、それに悠然、ソフィア、カナタ、永遠までもが追随してコース上に留まっていく。それはひとえにコース上にいる誰しもが心に抱く「キングに勝ちたい」という意志がそうさせたのである。
だが、その思いに水を差すかのごとく、レースは「落雷による停電」という想定外のアクシデントで一時中断に追い込まれてしまう。しかし、もはやそのような事でクイーン達の闘志が失せるなどという事はなかった。
そしてレース再開。直後に凛とキングが最後のピットインを選択し、万全の状態でコースに戻る中、それでもなおクイーンはピットインを選択せずコースにとどまり続けてトップをひた走る(傷んだタイヤでも平然と乗りこなせるクイーンだからこそ採れる戦術である)。
いよいよ後方から凛とキングが異次元のペースで追いついてくるものの「あなた達だけで決めないで!」と、彼らだけの勝負にはさせじとばかりに、限界まで消耗したタイヤをギリギリの所でコントロールしつつ二台を懸命に抑え込むが、遂に左後輪が耐えきれずにバースト(パンク)し、マシンはコース外に飛び出していくものの、なんとかクラッシュ自体は免れる。
そのままマシンを低速でピットまで走らせてタイヤ交換を行い、レースを続行する事も出来たものの、彼女は「邪魔したくないじゃない、こんな素敵なレース」と語り、そのまま潔くリタイヤを選択したのだった。
それは、「自身がコース上にとどまり続ける事で、追い越し禁止を意味するイエローフラッグが掲示されたり、安全確認のためのセーフティーカーが投入される事で凛とキングのレースに水を差してしまう」事を良しとしなかったためであった。
だが、上記の選択は「クイーン」としては、納得のいく振る舞いではあったものの、「アリス・サマーウッド」としては到底納得のいく結末のはずがなく、上記の潔い言葉を放った直後に、
『ま、それはそれとして……あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ん゙、も゙ぅ゙!!!』
と、拳でコンソールを思いっきり叩きつけ、怒りと悔しさの入り混じった雄叫びをあげるのであった(このシーンの水樹氏の怒りっぷりは、他作品で氏の演じる役ではあまり見られない程の激しさであり、必見&必聴である)。
最終戦はリタイアに終わったものの、リタイアはその一回だけであり、それ以外は(リチャードのアシストもありはしたが)年間3勝をあげ、更に2位表彰台が七回と3位表彰台が一回と安定して好成績を収めていた事もあり、シリーズランキングは堂々の2位で今シーズンを終えたのである。