狼男の呼び名の一つ。
イタリアのフリウーリやリヴォニアでは収穫の稔りを狙う悪魔や魔術師と戦って豊穣を取り戻す狼男・狼女の伝説が伝わっており、前者の地域でそう呼ばれる。
これは古来の農耕儀礼の伝承という側面と同時に魔女狩りの担い手であるエリート層に対する民衆の文化的抵抗と見ることも可能である。
アジアでの西洋と違った言い伝え
東アジアや南北アメリカにおいては獣人化現象は自身の神聖な血筋と関連付けられることが多く、 ヨーロッパのような恐怖や禁忌の対象ではない。
モンゴル人の狼祖伝説、トルコ人の狼祖伝説(アセナ)、東南アジア諸国に住む苗人(ミャオ族)の犬祖伝説など、 いずれも「狼の血筋」を持つことは彼らの民族的な誇りの源となっている。
アラスカからカナダ、アメリカ合衆国にかけ、インディアン民族には狼の氏族(クラン)を持つ部も多く、 トンカワ族を始め、部族名そのものが 「狼」を意味するものもある。
日本では、狼祖伝説そのものは極めて希少である が、オオカミの日本語による名称そのものが「大神」を意味し、モンゴルにおけるそれと同様に神性と知性の象徴として畏敬され、三峯神社など少なくない神社において祭神とされている。