概要
殷の太師(中国王朝における三大幹部の一角で、天子の師となり導く役目)を仰せつかった三つ目の巨漢で、黒麒麟を駆る。
金鰲島の金霊聖母の弟子であり、金鞭(禁鞭は漫画版)を使い敵を打ち倒す。
祖国・殷に対しては絶対的な忠誠心を持つ。紂王の武術は彼に育てられたため苦手意識があり、唯一恐れて言うことを聞く存在となっている。
しかし自らが北海に遠征に行っている間に妲己が現れ紂王は錯乱。帰任した時には祖国は荒廃し、宰相の商容は死亡して武成王黄飛虎は亡命していた。聞仲は紂王の監督と内政、軍事の全てを切り回すことになり忙殺され、さらに周との戦いで張桂芳、四聖、魔家四将などを次々と失う。
作品中盤でついに自ら周の討伐に赴くが、崑崙十二仙の布陣に巻き込まれ苦戦。自らも金鞭を折られ、金鰲島の道友たち(十天君、趙公明など)に応援を求めるものの次々と殺されていき、ついには非業の死をとげる。
再編レベルでオリジナリティの強い安能版では、かつて崑崙山で修業したが仙骨がないため下山させられ、のちに金鰲島で修業したとされる。
終盤の紂王(作者)の分析ではその忠誠心は称えられつつも、時に王の権威を否定し、王を王として認めない聞仲は、(無自覚とはいえ)王の臣下としてはあるまじき存在であったと指摘されている。
しかしそれは、王と軍師がともに一流であったからこそ起こる悲劇でもあった。
後に姜子牙が周の中枢から遠方の斉に送られたのは、根本的には同じ理由である(軍功を立てた姜子牙が王都にいては武王が「大きい顔」をできないから)。
また中盤では黄花山四天王との会話で、きらびやかな王権にこだわる士大夫らしい頑迷な人物としても描かれた。
藤崎竜版
「理想を語るには……それに見合う力が必要だ!! おまえ達にはそれが無い!!!」
宝貝:禁鞭(きんべん)
金鰲島出身の道士であり殷王朝の太師(軍師)。
金鰲三強の一人。
元は仙人骨を持たないただの人間だったが、自分の体を虐めるほどにとてつもない修行を繰り返し、腐りかけるほど肉体を酷使し続けたところ仙人骨が生まれ、通天教主の目に留まり仙人の修行を積む。
元々数百年前からの殷の兵士であり、殷が勃興して間もない頃から王朝を支え、代々の王の側近として殷の繁栄を見守り続けてきた、まさに殷王朝の守護神ともいうべき存在。
同時にそれは、子供と思い愛してきた歴代の王にことごとく先立たれたことも意味する。
何事においても「殷の繁栄と安寧」を第一とする、殷へのゆるぎない忠誠心を持つ。
執政・軍事共に有能な一方、非常に頑固で融通が利かない。そのため、豪快で大雑把な黄飛虎とは親友でありながら公私でよくぶつかっていた。
自分の目的のためならば、たとえ味方や故郷といえども一個の駒とみなす冷徹さを持つ一方、本質的には誰よりも人間を愛し、人間の行く末を思う不器用な優しさを持つ。
たった一人で二つの仙界を滅亡寸前に追い込んだほどの作中屈指の強敵として登場し、申公豹とともに実質的な太公望のライバル的存在。
同時にその無骨な生き様ゆえに、多くの読者を虜にした。
彼自身は物語の途中で退場するが、その圧倒的な実力のインパクトは物語終盤になっても陰りを見せず、能力インフレの著しいジャンプ作品の中で「最後まで株を下げなかった中ボスキャラ」としても評価が高い。
ただ、作中でも一度はっきり指摘されているが、基本的に仙道の力をもって特定国家に肩入れしたいという彼の願望は仙人の倫理観からいえば受け入れられるものではない。
妲己などの周りがより酷いだけであって彼の干渉も肯定されるべきものとして書かれてはいない。
聞仲からしてみれば仙人としての力もあくまで殷のためのものであり、仙人の倫理感、価値観などといったものは一顧だにする価値のないものでしかないのである。殷のことで思い悩み修業をし、殷のことを考え仙人となり、殷の力となるために仙人としての力を奮うのが聞仲のあり方であり、俗世を離れ自己を昇華させていくといった仙人の価値観とは異なり、あくまで一個人としての殷とのつながりを大切にしていた。