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申公豹

しんこうひょう

中国の小説『封神演義』の登場人物。並びに派生作品に登場するキャラクター。
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原作編集

元始天尊の弟子で、太公望にとっての弟弟子にあたる闡教の道士。宝貝「開天珠」を持ち、宝剣を武器にする剣術使いでもある。白額虎にまたがって空を飛ぶ。

仙術の腕前に自信があり、首だけでも生きることが可能だが、精神面の修行は怠っていたため、才能はあっても性格は傲慢。師から『封神計画』という大任を言い渡された太公望に嫉妬し、商(殷)に味方しようと太公望を誘導するも失敗。その様子に気づいた闡教の南極仙翁に殺されかけるが、太公望の取りなしでその場は助かる。

しかし、この一件以降は太公望を強く逆恨みし、竜鬚虎十天君殷郊殷洪兄弟、土行孫呂岳、三仙姑(趙公明の妹たち)など、多くの仙人・道士を周と敵対するように仕向け、ことごとく太公望を妨害する。一度は闡教十二仙の衢留孫に捕らえられ、「今度やったら北海眼に封印されても文句を言いません」と泣き落としを行い、二度と妨害しないことを誓うも、その後あっさり反故にして再度敵対。


『万仙陣』で再登場し、『八虎車』に乗って截教軍に寝返って戦うが、通天教主がその恩師(上司)でもある鴻鈞道人に説得されて降参し、負けを悟って逃亡。敗北後は誓い通り北海眼に押し込まれるが、それでも死なないなど、かなりのしぶとさを発揮した。最後は生きた肉体を保ったまま『分水将軍』に封じられた唯一の存在として物語から姿を消す。これは冬は海水を凍らせ夏は氷を溶かす、四季の巡りを司る神格とされる。


封神演義の登場人物は、実在の中国の神格からとったものが多いが、申公豹はこの小説『封神演義』が初出である。彼が封じられた『分水将軍』も架空の神格だが、『封神演義』の流行に伴って実際に廟が建てられている。


安能版編集

「条理が曲げられたのを見て閑人騒ぎ出す――。おれはその閑人じゃよ」


「この世界に、辻褄の合う話など、どこにもありやしない」


安能務編訳による講談社文庫版では、原作版と比べて大分異なる人物像となっている(訳、とはなっているものの、大幅な改変が加えられている)。


もともとは千年前、堯帝から帝位を譲られながらも拒絶した、人間の賢者・許由。黒点虎との出会いを面白いと感じた仙人・雲中子に案内されて崑崙山に入り、その思想を称賛した太上老君の口添えで元始天尊の直弟子になった。「申公豹」は道号・通称である。

そして頭角を現し、老君から「雷公鞭」を受け取り使いこなすなど道士ながらも仙人以上の力を持つようになった。

しかし申公豹本人は人間主義・組織主義的な闡教に嫌悪感を抱いており、崑崙の掟に背を向け、截教(仙骨のない人間や妖怪も弟子に迎えたことで闡教から「異端」「左道邪術」と差別されてきた)とも付き合っていた。


また「下界・天界・仙界にはそれぞれ固有の縄張りがあり、それを超えて干渉してはならない」という思想(漫画版の太公望の思想にかなり近い)を持っており、『天数』にかこつけて天界や仙界が下界に干渉するのに反対していた。

そして闡教が、妖怪出身の仙人の多い截教を仙界から駆逐しようと考えて、天界と結託して『天数』を持ち出したのを聞いて、その計画に公然と異を唱え、妨害を開始した。

その過程で『封神計画』を授けられた太公望こと姜子牙とも対立することになる。


結果として対立しただけで太公望を別段恨んではおらず、むしろ尖兵として利用されているに過ぎない彼に同情しているところもあった。

また闡教が勝つために相当の準備をしていることも理解しており、自棄を起こした截教側を諌止しようとしたこともある。


世話好きで理不尽なことを見過ごせない性分だが、シニカルな一面も併せ持つという、原作よりもかなり理性的かつ大人物として描かれている。

闡教側・天界側に非人道的とも取れる設定が追加されていることもあり(姜子牙や妲己すらも嫌悪感を抱いたほど)、彼自身が一種のダークヒーローとして、物語の解説役兼もう一人の主人公という立ち位置になっている。

上述の漫画版で猛威を振るった『雷公鞭』を持ち最速の霊獣『黒点虎』に乗るようになったのも、この安能版からである。



光栄によるシミュレーションゲーム編集

光栄封神演義には青髪で中性的な顔の少年として登場し、ちょっかいを出すトリックスターである。性格は原作と安能版を足したような雰囲気で、実力派の気まぐれ者。主人公・太公望をライバル視した設定からか愛蔵版ではお手合わせ可能。彼が属する五行は金であり、太公望の属性である木属性の天敵である。



藤崎竜の漫画(及びそれを原作としたアニメ)編集

CV:石田彰 / 鳥海浩輔(覇穹 封神演義)


「私の美学に反します」


最強の宝貝・雷公鞭を持ち、最強の霊獣・黒点虎に乗る最強の道士。常に飄々としており神出鬼没、三大仙人や崑崙山金鰲島の有力者とも繋がりがある。三大仙人の一人である太上老君の一番弟子であり、最初の話し相手であるという。

本人曰く5000年生きているらしく、物語の根幹に関わる重大な秘密にも自力で辿り着いている。


物語の序盤に太公望と戦うことになり、圧倒的実力差で太公望を撃破する。その際太公望が放った攻撃が掠り流血。生まれて初めて自分にを流させた太公望を「のあるいい道士」とライバル認定し、以降何かと太公望の前に姿を現すようになる。

他人に束縛されるのを嫌う自由人だが、同時にかまってちゃん気質なので

自分が絡もうとした相手に無視されると慌てて追いかけてくる一面も。


自分の美学というものを非常に重視しており、ピエロのような奇抜な格好もその美学から来ている。美学に反するものには容赦なく、特に服装を馬鹿にする者にはもれなく雷公鞭による電撃をお見舞いする(実際太公望もお見舞いされた)。

常に敬語で話すつかみどころのない物越しの人物(安能版ではもっと砕けた口調だった)。柱や壁に半身を隠して「フフフ」と笑うことが多い。


なお、連載当時は性格や立ち位置などから某キャラクターとの類似性がよくネタにされていたが、アニメ化の際は中の人が同じとなり話題になった。


宝貝・雷公鞭編集

ジャンプ漫画版封神演義の仙人界において仙人が作る全ての宝貝技術の元になった、最初の人と呼ばれる地球人類の始祖たる宇宙人たちが作り遺した原初の7つの宝貝、通称「スーパー宝貝」のひとつであり、質・量ともにケタ外れかつ常識外れのを発生させる宝貝。アイスクリームを合体させたような形状をしている。

仙人界の宝貝の中でも最高の威力を誇り、後述の特性もあってスーパー宝貝の中でも筆頭格の存在である。

その威力は同じく「雷を発生させる」力のある雷震子の翼の宝貝「騒天翼」などとは比べ物にならず、手加減した一撃でも中国全土の空を覆うほどの雷を発生させた。


それ以外にも、上述の「最初の人」の一人である女媧が所持し、破壊力及び破壊性質では雷公鞭すら上回る「四宝剣」でもダメージを通せなかった怠惰スーツを着て眠る太上老君にも、雷公鞭をスタンガンとして使うことで通電させて叩き起こせたり、地球に満ち大地の中を流れる「龍脈」と呼ばれるエネルギーラインの噴出点である霊穴を、ある天然道士を除けば唯一、破壊(未開通霊穴の場合は開通)することが可能であったりと、作中の全宝貝の中でも、破壊力だけでなく特異性でも極太の一線を画している。



関連イラスト編集

悪趣味なあのひと色々なアングルで最強道士私の美学に反します!封神演義4


注意編集

上記のように、原作における申公豹と安能版や漫画版の申公豹は別人レベルで性格が違う。原作の彼は断じて最強キャラではなく、『雷公鞭』という宝貝も一切登場しない。『訳』と銘打っている安能版が普及したことや、なんだかんだで人気が出たこと、それを下敷きとした藤崎竜の漫画版がヒットしたことで、最もキャラ造形の誤解を受けやすいキャラクターとなってしまっている。

漫画における申公豹は安能務による独自解釈を受けた小説『封神演義』に登場するダークヒーロー」としての申公豹を更にリ・イマジネーションした者であり、原作とは完全に別のキャラであることに注意してほしい。


編集

  • 申公豹祠

中国河南省最北部の安陽市龍安区龍泉鎮白龍廟村にある。村民はみな申姓であり、現地では帝辛(紂王)に宰相として仕え多大な功績をあげた史実の人物として語られている。

祠堂内に掲げられた解説によると生没年は約元前1112年-1045年、中国の旧暦(農暦)での誕生日は2月2日。

  • 金嶺廟

マレーシアマラッカ州ジャシン地区の町アサハンにある。この寺院では「申公豹伯公」とも呼ばれる。祀られる二つの申公豹像は周倉めいた幅広の豊かなひげをたくわえている。大型の立像と小型の倚像があり、いずれも右手に三叉槍を持つ。立像のほうは甲冑をまとった将軍のような出で立ちで、左手に鐘を持つ。


関連タグ編集

封神演義

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