雷公鞭
らいこうべん
雷公鞭とは、安能務訳の『封神演義』に登場する宝貝であり、原作となる封神演义には一切登場しない。
安能版
「二人とも、そこから離れろ!」
太上老君が用意して、申公豹に与えた宝貝。
一振りで四方八方に稲妻を走らせ、魂をも消し飛ばすことのできる強力な硬鞭であり、その破壊力があまりに高いため仙人たちは申公豹に手が出せないでいる。
普段は申公豹が手に持つ払子の中に仕込まれており、手榴弾のように投擲して使用するようになっている。
作中では「四象陣」に外側から攻撃して風穴を開けた。符陣を外側から力ずくで壊したのは雷公鞭が唯一である(内側から爆破したり焼き払った宝貝は他にもある)。
ただし、雲中子は「いかな雷公鞭と言えど、太極図の前には無力」と評している。
また抑止力として使う分ならまだしも、本気で戦闘に使えば相手は老君に訴えて、始末をつける意味でも老君は太極図を出さざるを得まいと指摘しており「使わないことこそが護身術」と説いている。
なお、作中ではもう一つの理由として「五百年ほど前からインド妖怪・夜叉(のちの馬元)が中国に流れてきたが、崑崙の宝貝で夜叉に通用するのは雷公鞭だけで、申公豹があれを持ったままうろうろしているのは夜叉を探しているからではないか」という推測が加わっている。
藤崎版
「素晴らしい……これでも手加減したのですよ」
これを原作とした藤崎竜の漫画版ではスーパー宝貝の一つとして数えられ、山々を粉砕しながら中国全土の空全てを覆い尽くすほどの超範囲と破壊を引きおこししたり数キロの山も丸々消滅させる通天砲の倍以上の威力を出しても全力にはまったく程遠い状態であった。
最低出力でありながら空間さえ破壊しており、最終盤でも猛威をふるっていた。
第一話に登場した宝貝が最終話まで一度もパワーアップしないまま最強であり続けたという、漫画史上でも稀有なアイテム。
ちなみにこのマンガでは二段重ねのサーティーワンアイスから三本の鞭が伸びている形状をしている。
それ以外にも、「最初の人」の一人である女媧が所持する「四宝剣」でもダメージを通せなかった怠惰スーツを着て眠る太上老君すらも、雷公鞭をスタンガンとして使うことで電気ショックで叩き起こせたり、地球に満ち大地の中を流れる「龍脈」と呼ばれるエネルギーラインの噴出点である霊穴を、ある天然道士を除けば唯一、破壊(未開通霊穴の場合は開通)することが可能であったりと、当作品中の全宝貝の中でも、破壊力だけでなく特異性でも極太の一線を画している。
加えて、伏羲は「四宝剣の威力は雷公鞭をもしのぐ」と発言しているが、申公豹本人は伏羲と女媧の決戦中にさらりと「彼らの一撃一撃には雷公鞭ほどの威力が込められています」と発言している。
このことから申公豹がフルで雷公鞭を使った場合、伏羲の想像以上の破壊力を叩き出せたと思われる。