概要
周の文王、武王を支えた世界最古の軍師。武王の弟・周公旦からは「大公(文王)の望んでいた人物」すなわち『太公望』と呼ばれ、今なおこの名で親しまれている。中国最古の兵法書「六韜三略」を残したとされ、この書はかの源義経も愛読していたという(真偽不明)。
周王朝が開かれた後は斉に封ぜられ、開祖となった。春秋時代においても斉は姜家が治めていた(後に田氏に滅ぼされる)。
子牙はいわゆる字(「孔明」など)であり、姓は姜で名は尚、呂氏の一族出身のなため「呂尚」と書かれることも多い。
しかし子牙が実在の人物であることはほぼ間違いないものの、周王朝に仕えるまでは何をやっていたかはいまだに謎に包まれている。ある程度土地の顔役として知られていた(単なる一般ピープルがいきなり文王に逢えるとも思えないので)のは確かなようであり、後述する藤崎竜の漫画版『封神演義』ではチベット系遊牧民の族長の息子という設定になっている。
なお、軍師にしては大柄な体格だったらしい。
創作における扱い
小説『封神演義』では崑崙山の道士(仙人のようなもの)として描かれており、同作の主人公も務める。
仙人としては若すぎる七十二歳(初登場時)で能力もあまり高い方ではないが、崑崙山の教主である元始天尊の直弟子であるため仙界の序列は高い。
師匠から『封神計画』を託され、殷周の易姓革命により死亡する仙人や英傑を神々に封じるという使命を授かり下山。紆余曲折を経て西伯・姫昌(周の文王)の軍師となり、殷王朝と妲己などの妖怪、弟弟子でありながら姜子牙を憎み妨害する申公豹、引いては崑崙山に対するもう一つの仙界・金鰲島の仙人たちとの戦いに身を投じていく。
軍師・将軍としての能力は高いものの、仙人としての能力は低い。やたら強力な宝貝「打神鞭」と霊獣「四不象」に乗るが、作中ではしばしば敵の仙人に敗れて命の危機に陥っている。
最後は仙界に戻らず、史実通り人間の宰相・政治家として斉国に封じられてその国を統治した。
なお再編レベルでオリジナリティの強いことで知られる安能務の封神演義では、ライバル・申公豹ほどではないにせよある程度の改変がなされている。
申公豹の分析では崑崙はもともと仙人に仕込むつもりはなく、仙界が商周の易姓革命に合法的に介入するための駒に過ぎなかったとのことで、元始天尊以下が着実に準備を進めていたのに本人は何も知らされていなかった。
頭の回転は速いのですぐ仙界・天界の魂胆を読み取ることはできたが、しょせんこの世のことは理不尽なことばかりと割り切ったまでで、権謀渦巻く周国や崑崙への忠誠心などは無く、悪辣な妲己を自分と同じ駒として利用する天界・仙界や都合よく善人ヅラをする武王に対しては内心で嫌悪感を抱いている。女が嫌い。
最後は斉国に封じられるが、これも功を立てた姜子牙が武王や周公旦の邪魔になったのと、協力者だがもはや無用になった東伯公を始末するための策略であるとされている。
これらの設定は少年誌向きではなかったためか、前述した漫画版では原作とミックスした「武王とは対等な関係で殷討伐を目指す」という扱いになっており、崑崙に入ったのも「幼少期に殷王家が一族を滅ぼした事件を受けてから」ということで、20代くらいの美男子の姿で描かれている。