打神鞭とは、神怪小説『封神演義』(中:封神演义)に登場する宝貝の一つである。
概説
元始天尊が封神計画を姜子牙に命じた際、餞別として彼に授けたものの一つでもある。
「鞭」と表記されるが、「硬鞭(こうべん)」と呼ばれる硬い棒状の打撃武器で、片手で剣のように振るう棍棒のような代物である。(詳細は「鉄鞭」を参照)
原典における「打神鞭」
硬鞭には、接触面を狭めて打撃時の威力を高めるために節がついているものがある。
打神鞭にも21の節が存在し、これら1つずつに神(仙道)を封印するための仙術が4つ施されている。
使い方は簡単。
あとは打神鞭が自動で相手を追尾し、目標の頭蓋骨を破砕して死に至らしめる。
打神鞭の一撃は、不死とされる如何なる仙道であっても必ず殺すことが出来るという。
ただし、これだけ強力な一方で致命的な欠陥も存在する。
まず効果があるのは「封神榜」(封神の対象となる仙道の名簿)に名がある相手のみと、対象の幅が大変狭い。
そして打神鞭の封印は一度限りの使い切りで、封神榜に記された仙道は全員で365位なのに対し、打神鞭の封印は21節×4封印=84位分と、使用回数は対象の4分の1足らず。
よって、どれだけ強力であろうと、使用には慎重にならざるを得ない非常に癖の強い宝貝なのだ。
しかし、原本が翻訳し直され、使い切りはデマ(誤訳)だったことが発覚。
いわゆる安能務版などは日本における独自解釈であることが判り、実は打神鞭の明確な形状さえ原典には示されていないことが判明した。
藤崎竜版における「打神鞭」
原典と同じく、元始天尊から餞別として太公望に授けられた。
伸縮可能な教鞭のような形状で、普段は縮めた状態で懐に仕舞っている。
その能力は「風を生み出し、操作する」というものであり、原典とは全く異なっている。
作中では、主に鎌鼬現象を起こし、真空の刃で相手を切り裂くように用いる。
出力次第では竜巻レベルの旋風も巻き起こすことが可能だが、力を大きく消耗する。
後に殷郊との決戦前に改修され、出力が向上した。
また、崑崙山の核からエネルギーを得る「杏黄旗」も組み込まれ、趙公明戦ではそのパワーで格上の相手である趙公明と渡り合った。
趙公明のスーパー宝貝「金蛟剪」の前に敗れて砕かれるも、「復活の玉」の霊力で再生されて大型化し、「NEW打神鞭」となってさらに出力を上げている。NEW版になるまでは飛び道具は手元で形成してから発射していたが、NEW版からは離れた場所に直接形成できるようになっている。
太上老君との修行を経てスーパー宝貝「太極図」が宿り、鞭の頭に陰陽魚の宝珠が付いた。以降は太極図としての使用や、伏羲としての術で戦うことがほとんどで、打神鞭としての使用がなくなったため、太極図へのアップグレードで打神鞭としての性能がどうなっているのかは不明。
使用技
「打風刃(だふうば)」
鞭先で鎌鼬現象を起こし、相手を切り裂く。
シンプルながら、並の仙道なら一撃で封神できる威力を持つ。
「打神風(だしんぷう)」
打神鞭を振り抜くことで三日月状の真空の刃を発射する、「打風刃」の飛び道具版。
出力を高めれば、大型の妖魔も一刀両断せしめる。
「打風輪(だふうりん)」
「打神風」の風を丸鋸のように形成し、発射する。
一度に複数の風の刃を生成でき、一対多数にも対応できる。
竜巻(旋風)
特に固有名称は無し。
強烈な竜巻状の旋風を巻き起こし、周囲の物体を巻き上げて吹き飛ばす。
攻撃の用途で使用されたことはないが、毒鱗粉等の空間を制圧する宝貝への対抗策として何度か使用された。聞仲との初戦で仲間を守るためにも展開。
Fateシリーズにおける「打神鞭」
「思想鍵紋、励起」
「八十四封印、全機起動。やれやれっと……空よ開け。落ちろ、『打神鞭』!! ……光に消えろ」
太公望の宝具。
主力武器として使用しており、原典同様ホーミング機能を備えている。
漆黒の鉄鞭で、螺旋状に鉄鞭特有の節が施され、下げ緒には緑の短く房のあるものと、赤く長いリボン状のものが付いている。
赤い下げ緒は、宝具演出時に釣り糸のように水面に垂らしてもいる。(「太公望」は釣り人の代名詞)
真名開放時には、上空から巨大化した打神鞭が落ちてきて、敵を押し潰して蒼炎を上げるという豪快な技となる。
上下逆さまにして釣り竿のように持った打神鞭を、方術を用いて水面へ投げ入れると同時に、目標の頭上に巨大化させながら転移させ、敵陣を一網打尽にしてしまう。ただ、稀に本当に手を滑らせてしまい、慌てて術をかけて誤魔化すこともある。
そして、サーヴァント化にあたって回数制限が無くなっており、原典より強化されている。