概要
原作は、実在のヤクザである美能幸三が獄中でつづった手記をもとに作家の飯干晃一が書いた同名小説じゃ。団体・人名・地名はすべて実名じゃったが、映画では仮名になっとる。
1973年、東映製作で映画化されたんじゃ。俳優は菅原文太に田中邦衛、監督に深作欣二とどえらい面子が揃っとるけぇ、日本映画の金字塔じゃのう。
まぁ一つ、見たってつかあさいや、の?
映画版解説
終戦直後の広島を舞台に、ヤクザ達が繰り広げる血を血で洗う抗争を群像劇的かつエネルギッシュに描いたヤクザ映画シリーズ。第一作は1973年1月13日に東映配給網により正月映画第2弾として公開された。
菅原文太や渡瀬恒彦、松方弘樹を始めとする若かりし頃の名優たちが演じるギラギラとした無闇矢鱈に濃い登場人物達や、「広島弁のシェイクスピア」とも形容された数々の名台詞の小気味よい応酬、金は無いが生きようとするエネルギーだけは有り余ってる人々、戦後から高度経済成長期にかけて次第に複雑化していく時代の中で仁義や義理人情を貫くことの難しさ、そして権力者達によって使い捨てにされる若者達の悲哀を、笠原和夫の巧みな脚本と深作欣二監督の斬新でダイナミックな演出で纏め上げた本作は予想以上の大ヒットを記録し、日本映画史に残る傑作として日本国内のみならず海外の俳優やクリエイター達にも多大な影響を与えた。
それまでのヤクザ映画といえば暴力団を著しく美化したものがほとんどであり、義理人情に篤く弱きを助け強きを挫くという『体制に立ち向かう反骨のヒーロー』としての侠客を描いた『任侠物』が中心であったが、本作では権力と金にがめつく、弱者をいたぶり、警察や市議会などの公権力と癒着して裏切りに裏切りを重ねる卑劣な『社会悪』としてのヤクザの姿が克明に描れている。
そんな中でも仁義を通そうとするヤクザもわずかに登場するが、そのほとんどが最後は裏切られて無惨な死に方をするのがシリーズのお約束である。
また、実際に起きた抗争を題材にし、様式美を排してリアリティを追求したドキュメンタリー調の演出がなされた本作は『実録物』と呼ばれるジャンルの先駆けともなった。
第一作目あらすじ
敗戦直後の広島県呉市。広能昌三は復員するも、仕事も無く遊び人や愚連隊の群れの中で鬱屈した日々を過ごしていた。
そんなある日、闇市で広能の元に山守組に属する友人が酔ったヤクザ者に襲われて怪我をして駆け込んでくる。広能は山守組の若衆達に加勢、自ら買って出て暴漢を射殺し、逮捕され刑務所に収監された。
そこで土居組若衆頭の若杉寛と知り合い義兄弟になった広能は、その気風と度胸の良さを買われてまもなく保釈され山守組組員になった。
当時の呉には土居組、上田組など四つの主要な組があったが、山守組はまだ微々たる弱小勢力にしかすぎなかった。山守組組長・山守は市議選に絡んで上田組と組み、土居組と敵対するようになる。そして、かねてより土井組組長と対立していた若杉が広能を頼って山守組へと身を寄せたことで、土井組組長暗殺計画の決行が決定され、山守に懇願された広能はこれを自ら引き受け成功させる。だが、山守は突然広能を邪魔者扱いするようになり、致し方なく広能は再び逮捕されて刑務所で服役する。
その間、呉では土居組は壊滅し、朝鮮戦争勃発による特需に乗った山守のビジネスで山守組は大きく勢力を拡大して大組織になるが、組織内部では若衆頭で主流派の坂井鉄也一派と反主流派の幹部・新開宇市一派が対立。
その情勢下、市会議員・金丸と土居組の残党を味方に引き入れ勢いづいた新開一派が坂井の仲間を殺害したことで、ついに両勢力は山守を無視して血を血で洗う『内戦』へと突入していく。
シリーズ一覧
深作オリジナル五部作
『仁義なき戦い』1973年
『仁義なき戦い 広島死闘篇』1973年
『仁義なき戦い 代理戦争』1973年
『仁義なき戦い 頂上作戦』1974年
『仁義なき戦い 完結篇』1974年
深作新シリーズ
『新仁義なき戦い』1974年
『新仁義なき戦い 組長の首』1975年
『新仁義なき戦い 組長最後の日』1976年
他監督作品
『その後の仁義なき戦い』1979年』 ※工藤栄一監督
『新・仁義なき戦い』2000年 ※阪本順治監督
『新・仁義なき戦い/謀殺』2002年 ※橋本一監督
pixivでの扱い
映画とはさらさら関係なく、文字通り仁義の通用せん、壮絶な修羅場にも使われるんじゃあ。
関連動画
「仁義なき戦い」と言えばこの曲。
冒頭部分が特に有名で、昨今のバラエティ番組などでも(主に修羅場なシーンを)面白おかしく盛り上げる際のBGMとしてしばしば使用され続けている。
パロディ
セガがドリームキャストのリリースで湯川専務ネタではっちゃけた広告展開をしていた時期にその一環として仁義なき戦いにゲーム業界のモチーフを取り入れたパロディ作品『仁義ある戦い ドリキャス頂上決戦』なるものを制作した。ちなみに当時のセガ社長から有名なスタッフ(勿論、湯川氏含む)が出演する本格派。
完成はしたものの、内容が暴力団抗争をネタにしていた為かイロイロとやばいと判断され最終的には公開はせずお蔵入りに終わった。
存在自体はファンの間でもまことしやかに語られ、どういった経路で入手したのかは不明だがゲームラボの特集でスクリーンショットと大まかなあらすじと内容が紹介された事もある。
ちなみにごく小さな集まりの場で公開されたという話や、セガが記者限定の一度限りの公開を行った事もある。
現在でもセガが厳重に保管しているのか、作品そのものが動画サイト等で流出したケースは今のところは皆無である。